記事のポイント
・トランプ氏が勝利し、共和党が上院多数派を奪還へ、トリプルレッドとなるか下院の結果が焦点に
・減税や財政支出の政策実現度は、トリプルレッドなら大幅に高まる一方、ねじれ議会なら低下へ
・この先は財政・外交・金融の各政策の見極めが大切、トランプ政権も2回目で市場には免疫あり

トランプ氏が勝利し、共和党が上院多数派を奪還へ、トリプルレッドとなるか下院の結果が焦点に

米大統領選挙は日本時間11月5日~6日に投開票が行われ、共和党候補のトランプ前大統領が激戦州とされる7州のうち、東部ペンシルベニアなど4州を制し、勝利を確実にしました。米大統領が再選失敗後に返り咲くのは、実に132年ぶりのこととなります。なお、米大統領選と同時に投開票が行われた米連邦議会選では、共和党が4年ぶりに上院の多数派奪還が確実な情勢となりました。

下院については、引き続き共和党が多数派を維持できるかが焦点となりますが、大勢の判明にはまだ時間がかかる見通しです。共和党が下院で多数派を維持できれば、「トリプルレッド」となり、トランプ氏の政策の実現度は大幅に高まることになります。一方、民主党が下院で多数派となれば、「ねじれ議会」となり、予算が必要な政策には民主党の協力を要するため、トランプ氏の政策の実現度は低下します。

減税や財政支出の政策実現度は、トリプルレッドなら大幅に高まる一方、ねじれ議会なら低下へ

つまり、下院の選挙結果次第で、政策の実現度が異なり、金融市場への影響も変わってくることになります。そこで、①大統領令でできる政策と、②議会の協力が必要な政策をまとめてみます。①について、大統領令は通商政策や移民政策、規制の改廃など幅広い分野に権限がおよび、トランプ氏の政策では、関税引き上げや不法移民規制の強化、金融・環境規制緩和が該当し、停戦交渉や軍事支援削減は、ウクライナ情勢や中東情勢にも影響します。

②は、税制改正や予算が必要な政策などであり、トランプ氏の場合、税制改革に関連するものとして、トランプ減税の延長や恒久化、法人税減税などがあり、予算を要するものとして、軍事費拡大、エネルギー産業や製造業支援、インフラ整備、メキシコ国境での壁の建設などがあります。そのため、ねじれ議会となれば、これらの政策を実行するためには、民主党の協力が欠かせないことになります。

この先は財政・外交・金融の各政策の見極めが大切、トランプ政権も2回目で市場には免疫あり

米大統領選の投開票が進み、トランプ氏勝利の流れが強まるなか、11月6日の日本と米国市場では、株高、長期金利上昇、ドル高・円安の動きがみられました。背景には、トランプ氏の景気刺激的な政策への期待があり、トリプルレッドをほぼ織り込んだと推測されます。そのため、仮にねじれ議会となった場合は、株高、長期金利上昇、ドル高・円安の動きが反転することも想定され、目先は下院の結果の確認が必要です。

トランプ氏の勝利により、今後の金融市場への影響を考える場合、前回のトランプ政権時が参考になります。詳細は図表の通りで、減税政策は株高要因、米中対立は株安要因となり、米金融政策の舵取りも重要で、ハイテク株の成長が顕著だったといえます。つまり、今回も財政・外交・金融の各政策の見極めが大切で、特に米中対立は要注意です。ただ、トランプ政権も2回目ということで、市場にも免疫ができており、冷静な対処が可能と思われます。

(※情報提供、記事執筆:三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト 市川雅浩)

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