2024年9月30日、石破茂自民党総裁は「10月9日に衆議院を解散、27日投開票」としたい旨を明言した。解散総選挙に絡むアノマリー(経験則)に「選挙は買い」があり、「解散から投票日までは株価が上昇しやすい」とされる。背景には選挙戦で各党が大型の経済対策や社会保障制度の充実など“明るい未来”を掲げることがあるようだ。
実際、2000年以降8回の衆院選について、解散日の前営業日から投票日の前営業日の日経平均の騰落率を調べると、上昇率こそ開きがあるものの、全てのケースで上昇した(図表1)。石破氏が示したとおりの日程なら、今回は10月8日と10月25日が該当する。今回も日経平均が上昇したのであれば、「選挙は買い」のアノマリーがより確実性を高めたことになる。
では、投票日以降はどうか。同じく2000年以降8回の衆院選について、投票日直前の日経平均を100とし、その後の騰落を示したものが図表2だ。投票から12週後(約3か月後)まで株価が投票直前よりも高い状態を維持し続けたのは8回のうち3回のみだ。この結果を見る限り、総選挙後に株価が上昇し続けるとは言い切れない。
より詳しく見ると、1週後や2週後の株価が高い場合は12週後にかけてさらに上昇する傾向があった(2012年、2005年、2017年)。2012年はアベノミクス始動、2005年は郵政解散で「日本が変わる」と強く印象付けられた海外投資家の資金が流れ込んだ。
一方、総選挙の直後に株価が下落した場合は、12週後まで軟調な展開が続いたり(2009年)、投票前の水準程度までしか株価が戻らなかったりした様子も見られる(2003年)。
2000年と2014年は総選挙後の株価が安定しなかった。因果関係ははっきりしないが、与党第一党の議席数の減少が4議席にとどまった2014年は4週後に一旦下落した株価が再び上昇したのに対して、38議席減となった2000年は1週後こそ上昇したものの12週後にかけて株価下落が続いた。今回の議席数の増減と併せて、今後の株価動向に注目したい。
ところで、「ハロウィーン効果」というアノマリーも有名だ。これは各月から6か月後の株価騰落率が、1年のなかで10月がもっとも高い傾向があることを指す。実際、日経平均について各月末から6か月後の騰落率を調べると、図表3のように10月が最も高かった。過去23回(2000年~2023年)のうち17回上昇は10月だけで、勝率でも単独トップだ。
今回は総選挙とハロウィーンの日程がほぼ重なる。前回2021年の衆院選(10月31日投開票)後のように株価が軟調となるか、ハロウィーン効果が勝るかは、石破政権が経済政策をどれだけ具体的に示せるかにかかっている。
(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 金融研究部 主席研究員 チーフ株式ストラテジスト 井出真吾)
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