近年、日本企業は海外経済の成長を十分に取り込めていない。わが国製造業の海外への売り上げ(輸出と現地法人売上の合計)は、2020年代に入ってから世界GDPの伸びを下回る傾向にある。これは、生産拠点を海外にシフトさせつつ、海外売り上げを世界経済の成長に合わせて伸ばしてきた2010年代までとは異なる動きだ。なかでも中国法人の売り上げが中国GDPの拡大に比べても大きく落ち込んでいる。その背景として次の2点を指摘できる。
第1に、中国企業の競争力向上。貿易データを用いた分析によると、中国の比較優位分野は機械産業の中間財(加工品・部品)や資本財に及んでおり、日本が強みを持つ分野と競合する。こうした日本と中国が競合する分野の割合は2022年に7割超と、5割に過ぎなかった2015年から大きく上昇している。主要先進国のなかでも日本は中国と正面から競合する。最近でも自動車産業で中国の競争力が急速に高まっており、中国との競合分野は一段と拡大した。
第2に、日本企業が中国事業を縮小させる動きがある。経済産業省「海外事業活動基本調査」によると、中国法人の数はピーク時の2015年から1割以上減少。日本貿易振興機構の調査によると、中国ビジネスを縮小・撤退させる理由として、コストの上昇や現地の需要減少に加え、地政学的リスクの高まりや日中両国の規制といった政治的な要因を挙げる企業が多数だ。
上記の環境・諸条件を勘案すると、日本企業は中国に過度に依存しない供給網・販売網を構築する必要がある。インドや東南アジアなど将来有望な新興国への積極進出が検討課題とされる。
(※情報提供、記事執筆:日本総合研究所 調査部 研究員 藤本一輝)
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