幼い頃からの夢をかなえました。
葦北郡芦北町にある食堂の店主が、あきらめていた『パティシエになりたい』という夢にレモンケーキを作りながら向き合っています。
芦北町にある『味乃(あじの)なじみ』です。道の駅や近くの会社に届けるため、朝は日替わり弁当を作ります。
お昼の時間帯になると店を開けて、ランチを提供。50年以上にわたって地域の人たちに『なじみ食堂』の愛称で親しまれています。
【来店客】
「めちゃめちゃおいしいです」
店主の濱口 かつよさん、54歳です。
昼の営業を終えたら、一人で厨房に立ちます。幼い頃からの夢に向き合うひとときです。その夢とは。
【濱口 かつよさん】
「パティシエ。皆さんを笑顔にできるパティシエになりたかった」
濱口さんは三姉妹の長女。両親はこの食堂を営んでいたため、とても忙しく、一家団らんの時間は、決して多くはなかったといいます。
【濱口 かつよ さん】
「ご飯を一緒に食べる時間や一緒に過ごす時間が少なかった。妹たちと寂しく過ごしていた」
寂しい思いをしていた妹たちのために、お菓子を作っていました。それがきっかけで、大きくなってからも〈パティシエになりたい〉と思っていました。
しかし、24歳のとき、濱口さんは実家の店で働くことを決めました。
【濱口 かつよ さん】
「後継ぎしなきゃいけないんだと。父たちの期待に応えなきゃと思っていた」
長女であることがきっかけでパティシエを目指し、長女だからとパティシエを諦めました。
店を継ぎ、忙しい日々に追われ、抱いていた夢を忘れかけていた頃に、転機が訪れました。
新型コロナウイルスの感染拡大と近くを流れる川が氾濫し、店舗も被災した2020年7月豪雨です。
【濱口 かつよ さん】
「コロナの件もあったし、その後、水害とかもあって<人生一度きりだな>と思って。後悔しないためにもやろうと思って」
一念発起して、4年前から食堂をやりながら、レモンケーキを作っています。
地元の物とコラボしたいと考え、芦北産のグリーンレモンピールを使っています。
ケーキを作る濱口さんは、とても楽しそうです。
【濱口 かつよ さん】
「ワクワクしますね、楽しくて。これを買いたくて買いたくて。でも、高くてなかなか買えなくて。一生懸命、自分のお小遣いをためながら買った思い出の型」
グリーンレモンピールを混ぜ合わせた生地を、思い出深い〈型〉に流し込みます。
150度のオーブンで23分、焼きます。
最後にチョコレートで仕上げると完成です。
【久保田 優果記 者】
「いただきます。食べると口の中いっぱいに甘さが広がって、グリーンレモンピールのおかげで、さわやかさも相まって、とてもおいしいです」
【濱口 かつよ さん】
「地域の皆さまに愛される商品になってほしい。つらいときや悲しいとき、楽しいとき、いつでも手にすぐ取って食べる、庶民的なお菓子に育ってほしい」
一度きりの人生を楽しみながら、思いの詰まったレモンケーキを作り続けます。
濱口さんが作る『グリーンレモンケーキ』は、熊本県内の隠れた逸品を発掘する『くまもとグッドプロダクト賞』の候補に選ばれ、審査が行われています。
10月26日(土)と27日(日)にアミュひろば(熊本駅前)で開催される『くまもと物産フェア』で2次審査があり、一般来場客100人が試食して、審査することになっています。
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