2024年4月1日にアデコ株式会社の代表取締役社長に就任した平野健二氏
<人手不足時代のいま、生産性向上や持続的な事業の成長を果たすために需要が高まっているアウトソーシングと外国籍人材。過去に大型のアウトソーシング案件をいくつも手掛け、外国籍人材の雇用支援においても業界をリードするアデコ株式会社の平野健二代表取締役社長に「市場拡大の背景」と「今後の展望」を聞いた>
人手不足のなかで持続的な成長やサービス品質の向上を実現するため、ノンコア業務を外部企業に委託する「アウトソーシング」を活用する企業や自治体が増えている。株式会社矢野経済研究所の調査によると、2022年度の国内BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場は4兆7021億円。今後も発展すると見られ、27年には5兆3160憶円にのぼると予測されている。
アウトソーシングの導入によって企業や自治体はコア業務に注力できるようになり、業務の効率化や生産性向上だけでなく、従業員・職員の負担軽減による職場環境改善といった効果が期待できる。また、外部リソースの活用はスピード感を持って業務を推進することができるのも大きな魅力だ。
例えば、新型コロナウイルス感染拡大により早期かつ大規模な対応が必要となった各自治体は、休業支援金・給付金の支給やワクチンのコールセンターの設置などを速やかに行う必要性に迫られた。ただし業務を執り行う期間は限定的なため、自治体内でリソースを割くことには困難が伴った。
「緊急時でも、知見とノウハウを持った外部企業が代わりに業務を請け負うことで柔軟な対応が可能になる」
そう語るのは、総合人材サービス大手であるアデコ株式会社の平野健二代表取締役社長だ。事実、同社にはコロナ禍に自治体の要請を受けてからわずか1カ月足らずでコールセンターの拠点を立ち上げた実績がある。
企業や自治体にとって、アウトソーシングの導入には大きく3つの課題があるという。委託すべき業務の洗い出し、社内におけるノウハウの蓄積、そして委託先企業での情報漏洩や倒産といったリスクの回避および管理だ。
アデコではオペレーションを実行・管理する経験豊富なスーパーバイザーが中心となってチームの拠点をつくり、顧客企業において業務効率化と生産性向上を実現できる領域を分析するところから関与する。代表的な業務領域は窓口対応、経理・会計、営業事務などだ。委託元に対して定期的にノウハウを共有する体制を構築し、作成した業務マニュアルの提供なども行っている。
アウトソーシングに適している業務領域同社はスイスに本社を置き、世界60の国と地域に展開するグローバル企業であり、国内でも官民を問わず大規模なアウトソーシング案件を多数手掛けた実績を持つことが、日系・外資双方の大企業や様々な自治体からの信頼獲得につながっているという。
政府の大型案件を手掛け、アウトソーシング事業の礎を築く
2018年から23年の5年間で、売上高が倍増したアデコのアウトソーシング事業。飛躍を支えたのは、平野氏自身のとある経歴だ。2007年、持ち主不明の年金記録5095万件の存在がわかり、報道でも大きく取り上げられた。
この社会問題を解決するため、2010年から13年にかけて厚生労働省による記録確認のための国家プロジェクトが立ち上がった。このプロジェクトをチームリーダーとして牽引したのが平野氏であった。
「紙台帳等とコンピュータ記録の突合せや、全国の作業拠点で記録の確認業務を行った。これほど大規模なプロジェクトに取り組んだ経験は後にも先にもない。この経験によりアウトソーシング事業における業務のマネジメントや人材の採用・配置に関するノウハウが蓄積され、その後の自治体案件の獲得につながった」と振り返る。自治体案件は公共事業に近い側面を持つため、予算管理も重要なノウハウだ。
アデコは経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」、東京都の「雇用創出・安定化支援事業」など、官公庁や自治体が実施する就労支援事業を多数受託している。
行政機関の場合、民間企業に比べてDX推進にかなり差が見られることが課題だと平野氏は言う。そのためアウトソーシングの需要は今後さらに高まることが予想される。
「自治体の業務では生成AIなどの先進技術を効果的に取り入れる必要がある一方、市民の快適な暮らしを支えるためには『人の力』や『ホスピタリティ』が不可欠。ヒューマンスキルとテクノロジーをうまくハイブリッドで運用するために、我々が持つノウハウが大きく役立つはず」
人材派遣・アウトソーシング事業のブランド「Adecco」が提供する課題解決型アウトソーシングの特徴今年4月には、官公庁・自治体向けのアウトソーシング事業を専門に手掛ける新たな事業本部として「パブリックソリューション事業本部」を設立。2026年末までに同事業本部単独での売上高300億円を目指している。平野氏は「アデコは地方創生にも取り組んでおり、数多くの自治体に我々のアウトソーシングサービスを提供することで、人手不足にあえぐ地方の活性化に貢献したい」と展望を語る。
一定の専門性・技能を有する特定技能外国人の人材紹介
「『人財躍動化』を通じて、社会を変える。」をビジョンに掲げる同社は、仕事を通じて躍動する人材の輩出と、人材が躍動できる環境の創出により、社会へ変革をもたらすことを目指している。
アウトソーシング案件で働くスタッフのキャリア開発や、自治体案件の場合はプロジェクトが修了した後も含めた継続的なキャリアサポートも重要な役割だという。
そして、アデコの「人財」に含まれるのは日本人労働者だけではない。2022年10月、特定技能外国人の人材紹介サービスを開始。日本語教育や特定技能の「技能試験」合格向けプログラムの提供、就労者の住居確保といったサポートを提供し、企業による外国籍人材の受け入れ拡大と定着および雇用の安定化を支援している。
「これまで外国籍人材は『安価な労働力』として求められる傾向にあったが、すでにそうした時代ではなくなっている。人手不足の深刻化により企業の考えも大きく変わった。今後5年間、テクノロジーの進化と外国人労働者の増加は大きなトレンドになる。そうした時代において、グローバルレベルで人材サービスを提供していることは我々の大きな強み。これまでの実績を生かすだけでなく、他国の拠点との連携を強化することで、社会に付加価値を提供したい」(平野氏)
人材派遣・人材紹介、アウトソーシングサービス、外国籍人材就労支援により、企業や自治体が目指す人手不足解消と生産性向上、そしてさらなる成長に貢献するアデコ。組織と人材双方の「躍動」を支援し、社会へ変革をもたらすことができるよう事業に邁進している。
アデコ株式会社 代表取締役社長
平野 健二(ひらの・けんじ)
2004年に入社。人材派遣事業の営業職として実績を残し、支社長・エリア長・事業本部長を経験。18年から人材派遣事業およびアウトソーシング事業のブランド「Adecco」の日本における責任者を務め、22年10月に取締役に就任。24年4月より現職
■お問い合わせ先はこちら
https://www.adecco.co.jp/client
■Adeccoのアウトソーシング・BPO
https://www.adecco.co.jp/client/service/outsourcing
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