価格の高騰が続いている卵に“危機”です。
先週、ことし初めての「鳥インフルエンザ」が確認されました。
今後の感染拡大の見通しと卵価格への影響を探りました。
■物価の優等生「卵」価格が右肩上がり
【記者リポート】「東大阪市のスーパーに来ています。こちらでは卵の価格が先月あたりから上昇していて、高止まりの状態が続いているということです」
こちらのスーパーでは、月間特売品として卵を販売していますが、仕入れ値が高騰しているため、価格を抑えるのが、かなり厳しい状況だということです。
【スーパーことぶき小阪店 中瀬肇店長】「うちも頑張って、使ってもらえるように、値段もだいぶ抑えて抑えてで」
ことしに入ってからの価格の推移をみても、例年とは違い価格が落ちる時期はあまりなく、6月からは右肩上がりです。
この状況に…。
【買い物客】「安い方がいいけれど、何もかも上がってるからね」
【買い物客】「買わないわけにはいかないので、200円ぐらいで収まってくれると助かります」
一体なぜ今、卵の価格は高騰しているのか。
【スーパーことぶき小阪店 中瀬肇店長】「きょうちょっと寒くなってきましたけど、ずっと暑さが続いていて、ニワトリが疲れている状態。大きい卵を産まない、ニワトリが」
さらに、この時期特有の意外な理由も…。
【スーパーことぶき小阪店 中瀬肇店長】「ことし外食産業で『月見』とか、卵を使った商品が好調で、小さい卵はそっちへ行ってる感じで、小さい卵も値段高いまま」
■北海道で鳥インフルエンザが発生 鶏約1万9800羽が殺処分
去年は鳥インフルエンザが大流行。「エッグショック」と呼ばれ、過去最高の価格高騰に見舞われた卵。
そして先週、再びそういった事態が頭をよぎる出来事が起きました。
「過去最も早い、鳥インフルエンザ発生」
先週、北海道厚真町の養鶏場で、食肉用のニワトリおよそ120羽が死んでいるのが見つかりました。
その後の検査で高病原性鳥インフルエンザに感染していることを確認。
これは史上最も早い養鶏場での発生で、ニワトリおよそ1万9800羽が殺処分されました。
■「ことしなぜ早いのか」専門家でも原因特定は難しい
今後の感染拡大は?そして高騰の続く“卵の価格”にも影響があるのか?
国内でも珍しい実験施設などを有する、鳥インフル研究の最前線で、先週発生した北海道のケースについて話を聞きました。
【京都産業大学 生命科学部 高桑弘樹教授】「基本的にはやっぱり寒い方から発生することが多くて。だから、北海道の方で今回発生したけども、(ことしは)あったかいので逆にもっと遅くなるかなというイメージだったんですけど。早く来た理由はちょっと分からない。単純に渡り鳥がウイルスを持ってやってくるので、寒くなったら下がってくると、暖かかったら下がってこないという」
専門家でも、ことしなぜ早いのか、特定するのは難しいようです。
■2年前に4万4000羽のニワトリを殺処分した養鶏場の対策
関西でも警戒感が高まっています。
おととし、鳥インフルエンザが発生し、4万4000羽のニワトリを殺処分した養鶏場が取材に応じました。
【竜野養鶏センター 中山晋吾代表取締役】「売り上げがゼロだから、5000万ぐらいは損害に」
発生から2年、ようやく安定した生産体制が整い始めたこの養鶏場。
つい先週、保健所の調査があったといいます。
【竜野養鶏センター 中山晋吾代表取締役】「きのう姫路の家畜保険衛生士が来て、チェックシートで。去年は入っていなかった項目が、ことしは新たに増えたりしているんです」
しかし、どれだけ警戒しても安心できないこの場所特有の事情もあるようで…。
【記者リポート】「野鳥が集まりやすい川や池の近くでは、鳥インフルエンザのリスクが高くなるということですが、こちらの鶏舎のすぐ近くには川があります」
鳥インフルエンザのウイルスの多くは、海外からの渡り鳥を介して運ばれます。そして川などに生息する野鳥に感染し、ネズミや小鳥などを介して、養鶏場の中へ持ち込まれるのです。
2度と発生させないため、警戒感をもって業務に当たっています。
養鶏場には、いつ誰が訪れたか分かるよう入場者の名前などを必ず記入。
小さな鳥などが入らないよう、金網は二重にして、網目も小さくしました。
従業員が「鶏舎」に入る際は…。
【竜野養鶏センター 中山晋吾代表取締】「鳥インフルエンザになる前はここから出入りしてたけど、今はここは出入りしてなくて、ここにもう1つ部屋を作って、入る時は(靴を)履き替えて、足の消毒をして、手の消毒してから中へ入っていくと」
さらに…
【竜野養鶏センター 中山晋吾代表取締】「ここまでということで、ここから先は勘弁してもらいたい」
(Q.対策の一環?)「対策の一環で、なるべく外来者は入れない」
ことしの鳥インフルエンザ、史上最速の発生は会社にとって死活問題です。
【竜野養鶏センター 中山晋吾代表取締】「早く出たということは危険率がずっと(続く)。来年の4月、5月、ゴールデンウィーク明けぐらい。ことしのシーズン、冬にかかったら、もうお手上げ状態というかね、大変な事になってしまう…」
■鳥インフルエンザの今後の感染状況は? 「去年よりも広がる、発生が多くなる可能性ある」と専門家
今後の感染状況はどうなっていくのか。
京都産業大学の高桑教授の研究所では、野鳥のふんを採取し、その中に鳥インフルエンザウイルスが存在するかを調べています。
【京都産業大学 生命科学部 高桑弘樹教授】「ここにニワトリの子供がいて、生きた状態でいるので…」
ふんから採取した液体を「ニワトリの卵」に注入。
異変が出た場合は、鳥インフルエンザウイルスに感染した疑いがあることを示します。
今のところ関西の野鳥からはまだ確認はされていないということですが、ここ数年の鳥インフルエンザを取り巻く状況は変化しているといいます。
【京都産業大学 生命科学部 高桑弘樹教授】「(鳥インフルエンザが)毎年来るようになったんですよね。それまではだいたい2、3年おきくらいで、『ことし発生したら次の年はないよね』って感じだったけど、ずっと発生が続いているので。(鳥インフルの発生が)去年よりちょっと早いから、もしかしたら去年よりも広がる、発生が多くなる可能性はあるかもしれません」
「エッグショック」と呼ばれた、去年のような卵の価格高騰につながるのか。今後の状況を注視していく必要があります。
■「農家にとって逆風、国を挙げて支援を」
1羽でも鳥インフルエンザが出てしまうと、全て殺処分をしなければならないという、生産者の方にとっては死活問題です。
【共同通信社 太田昌克編集員】「鳥インフルエンザがなくとも、最近逆風なんです。農家の方には。農水省の資料を調べましたら、まず飼料、餌代がコロナのあと1.5倍に急騰しています。非常に高い。さらに農家の数自体がこの10年間で1000減っています。2500あったものが、いま1640しかないという状況で、やはり国をあげて、行政もしっかりとまず予防体制をとる。それから早期の探知、そして出た場合は被害を食い止める。そして中長期的にこの業界を支援して行く体制。これをやっぱり抜本的に考えなきゃいかんということです」
気になるのは価格への影響。卵は物価の優等生と言われていますけれども、消費者の方々にとっても影響大きいです。
【関西テレビ 神崎博報道デスク】「卵は30年ぐらいずっと値段が上がらなくて、200円以下で買えてきました。去年のショックを受けて、200円台の半ばから後半300円台になってきました。餌代も上がっています。なので、実はもう安い卵はもう出てこないかもしれないと、心の準備をしながら、鳥インフルエンザが流行して卵の価格が高騰したら、消費者の防衛策としては、今までいっぱい使っていた卵の量をちょっと減らそうかとか、そういう形で料理を見直すなどの工夫も必要なのかなと思います」
(関西テレビ「newsランナー」2024年10月21日放送)
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