日本を代表する化粧品メーカーを支える、五感のプロフェッショナル。
これまでメディア未公開だったその現場を初めて取材しました。
神奈川・横浜市みなとみらいにある資生堂の研究開発施設には“ある力”で資生堂の品質を支えている森下薫研究員がいます。
森下さんの案内で、メディア未公開エリアに初潜入しました。
資生堂 官能パネラー・調香師 森下薫研究員:
(Q.普段はどんなお仕事を?)私「官能パネラー」をやっておりまして、製品の検査をやっています。
資生堂では、工場で製造した製品が正しい香りや色、質感であるかなどを確認する「官能検査」を実施。
それを行うのが社員の5%以下しかいないという“五感のプロフェッショナル”、官能パネラーです。
中でも森下さんは、30年以上のキャリアを持つ嗅覚のスペシャリストで、これまで多くの製品開発に携わってきました。
普段どのような検査をしているのか。
正常な乳液と、特別な機械で経年劣化させた乳液の香りを嗅ぎ分ける検査を体験しました。
嗅覚には自信があるという海老原キャスターですが、「かなり古い」ものと「通常品」は、「よく比べて嗅いだら分かるぐらい」の違いだと言います。
続いて、2番目に古く経年劣化させた乳液で挑戦。
すると、「『順応』が一番怖い」と話す森下さんが、「自分のにおい」を嗅いでリセットします。
海老原キャスターも自分のにおいを嗅いでみますが、「リセットしたとて、そんなに変わりません!」とのことで、素人にはなかなか判断が付かないようです。
また、「ハーモナージュ体験」という、香りの不思議を体験できる実験も。
ハーモナージュとは、不快な香りにただ良い香りを入れてごまかすのではなく、不快な香りそのものを材料の1つとして使い、良い香りを完成させるというもの。
まずは、汗の臭いを再現したものをチェック。
海老原キャスターは「運動着を洗濯し忘れて、ランドセルに2日ぐらい入れたときの臭い」と表現します。
汗臭に「ハーモナージュしない」香料を入れて嗅いでみると、「汗の臭いと、強い良い香りがケンカしている感じのにおい」がすると言います。
続いて、実際に製品に応用して使われている「ハーモナージュする」香料を入れてみると、汗臭さがなくなり、フローラルの香りだけが残ります。
森下さんによると、汗の臭いが入ることを想定して作っているのだといいます。
官能パネラーとしてだけでなく香りを作る調香師としての顔も持ち、100種類以上の香りを嗅ぎ分けることができるという森下さん。
その繊細な嗅覚を保つため、努力を欠かしません。
においの強い食べ物を控える他、平日はお酒を飲まない、香りの弱いシャンプーを使うなど、普段から嗅覚に影響を与えない生活を心掛けています。
そんなプロフェッショナルな仕事に支えられている資生堂ですが、課題もあります。
現在、韓国コスメの輸入額は約960億円と、7年前から6倍以上に増加。
成長を続けるアジアコスメ市場に対し、資生堂は発信力に課題を感じています。
そんな中、今週ブラジルで、世界のトップメーカーなどが一堂に会した化粧品技術に関する研究発表会が行われました。
680を超える研究報告の中から、肌のシミに関する発表が最優秀賞を獲得しました。
資生堂は、この高い研究力と官能パネラーによって保たれる高品質な製品を、より多くの人へアピールしたい考えです。
資生堂 官能パネラー・調香師 森下薫研究員:
最後に使うのはお客さま。人間なので、機械ではないし、AIでも分からない部分は官能パネラーが一番理解できると思う。化粧品にとどまらない多様なアプローチで、イノベーションを生み出すことを目指したい。
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