(ブルームバーグ):かつて飛ぶ鳥を落とす勢いで株価が上昇していたトランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ。特別買収目的会社(SPAC)との合併合意に基づくロックアップ解除を目前に、株価が急落している。

トランプ前大統領のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」を運営するトランプ・メディアは、5月中旬には100億ドル(約1兆4400億円)近い時価総額があった。それが今では34億ドルを割り込んでおり、ピークから69%縮小した。売りが加速したのはこの1カ月。27営業日のうち22日で下げ、1カ月での下落率は45%を超えた。ロックアップは今月19日にも解除される見通し。内部関係者が持ち株を放出できるようになるため、株価への圧力は強まる一方だ。

転落が始まった背景には、長年自分のソーシャルメディアを使ってきたトランプ氏が「X(旧ツイッター)」に戻ってきたことに対するリテール投資家の困惑がある。米大統領選で対抗馬のハリス副大統領が世論調査で頭角を現し始めている事も影響している。

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株価急落はトランプ氏から37億ドル余りの含み益を奪った。SPAC合併以降の含み益は一時、58億ドル近くまで膨れ上がっていた。同時に7月15日の高値から空売りを仕掛けた投資家には、2億ドル余りの含み益をもたらすと、S3パートナーズが分析した。

ボストン・カレッジのブライアン・クイン法学教授は、「今の株価が会社の本質的な価値と一切無関係であることは一目瞭然だ」と指摘する。「この株価はつい最近まで、トランプ氏のスローガンであるMAGA(米国を再び偉大に)への忠誠心を示す金融指標でしかなかった」と述べた。

ウォール街はトランプ・メディアに売りを浴びせた後もなお、企業価値は過大評価されていると考えている。4-6月(第2四半期)の決算では1600万ドル余りの損失を出し、売上高は100万ドルに満たなかった。トランプ・メディアはユーザーベース確立に苦戦している。トランプ氏自身が別のソーシャルメディア、Xに復帰したことは、トランプ・メディア強気論を唱えていた一部投資家の野望を打ち砕いた。

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今月はロックアップ解除を迎えるため、トランプ・メディア株は7週間連続安になると見込まれている。この潜在的な圧力は、直近の下落幅を拡大させる可能性があるが、トランプ氏が数十億を現金化するのは容易ではないという意見で業界ウオッチャーは一致している。

ボストン・カレッジのクイン氏は「トランプ氏が持ち株を処分するのは非常に難しいだろう」と話す。売却ペースに制約があるほか、規制当局への適切な届け出が必要とされる点などを挙げた。

トランプ・メディア株は7月上旬、ペンシルベニア州の集会でトランプ氏暗殺未遂があった直後に直近の高値を付けた。そこからの下落は、11月の大統領選挙に向けて同氏勝利の予想確率と似た動きになっている。

トランプ氏勝利の予想確率

米国のスポーツベッティング業者は米国内の選挙を賭けの対象にすることを法律で禁じられている。しかし国外のギャンブルサイトはそれが可能なため、11月の選挙結果を巡っては世界中で賭けが活発に行われている。プレディクトイットのデータによれば、トランプ氏勝利の予想確率は48%と、8月12日の43%から上昇したものの、暗殺未遂直後の7月15日に付けたピークの69%から大きく下げている。一方のハリス氏勝利の予想確率は53%と、7月15日の13%から急上昇した。

原題:Trump Media’s 69% Plunge Wipes Out Billions Before Lockups End(抜粋)

--取材協力:Elena Popina.

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