英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のニューズレター「モラル・マネー」の8月19日号は、動植物や微生物などのバイオデータ需要が高まることで、新しいビジネスチャンスになっていることについて論じた。主な内容は以下の通り。

いま話題の肥満症薬が出る前には、アフリカ南部のカラハリ砂漠に生育するサボテンのフーディアが話題となっていた。このサボテンはこの地域のサン族の人々が飢えをしのぐために使用してきた。

旧英製薬会社フィトファームは、1996年にサボテンの有効成分の特許を取得し、減量製品の商品化を試みた。

アフリカ南部のカラハリ砂漠に生育するサボテンのフーディアは減量効果があるとして製薬会社の関心を集めた=AP

フィトファームは米製薬大手ファイザーや英日用品大手ユニリーバとライセンス契約を結んだが、サボテンの生息地に住む先住民族を搾取しているとして活動家からの怒りを買った。

人工知能(AI)の台頭でこうした植物や動物などの(成分や遺伝子などに関する)バイオデータの需要は急増すると考えられている。

AIを治療や診断などに応用できる可能性があり、そのためにはAIが世界中の動植物や微生物の膨大な量のバイオデータで訓練する必要がある。

英スタートアップ、ベースキャンプ・リサーチはバイオデータ需要の増加を好機とみて、よりオープンでグローバルなバイオデータ共有システムを作り始めている。

バイオデータのための料金を公平に支払うことで、発展途上国からの採集許可が増えることに期待している。

同社の共同創設者のグレン・ガワーズ氏は、現在あるバイオデータの世界的な取引は音楽配信大手スポティファイが出る前にあった「無料で音楽データを共有できたナップスターのようなものだ」という。

ガワーズ氏によれば、ベースキャンプは世界で最も多様な新規タンパク質のデータベースを構築した。地域社会や土地所有者などに遺伝子情報の使用料を支払うことで実現できたという。

ベースキャンプはこのほど、カメルーン政府と協定を結んだ。同国の4つのコミュニティがそれぞれの地域で遺伝子情報の採集を許可することで合意した。

カメルーンはベースキャンプが同国で採集したデータでAIモデルを訓練させれば利益を得られる。同じデータが商業的な科学研究に利用されれば、カメルーンはロイヤルティー料を受け取れる。

いまはバイオデータを集めるのは無料であっても「将来は無料ではなくなるだろう」とガワーズ氏はいう。生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)で生物の多様性を維持するために世界的な収益枠組みをつくる交渉が続いていることなどを挙げた。

研究結果がなんらかの商品となっても「(現状の枠組みでは)利益を得られないため、学術研究の要請を拒否する国々が出てきている」という。

By Lee Harris

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