(ブルームバーグ): 日本銀行が国債買い入れの減額を検討する中、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国債の重要な買い手として浮上している。

  5日発表のGPIFのデータに基づくブルームバーグの分析によると、GPIFの国債保有額は2023年度に前年度比25%増の50兆3000億円に達した。一方で国庫短期証券や非政府債、GPIFが国内債券に分類する為替ヘッジ付き外国債のシェアは減少している。

  年金基金は資産価格が下落した場合、アロケーション(割り当て)を基本ポートフォリオの水準に戻す必要がある。GPIFの国債保有額は日銀の10分の1以下だが、日銀の国債買い入れの急激な減少に対する懸念が相場の重しとなる際に、GPIFの押し目買い傾向は相場の下支えとなる。

  SMBC日興証券の奥村任シニア金利ストラテジストは、GPIFの国債保有額増加は「当然、国債相場の大きなサポートになっている」と指摘。「23年度は株から円債へのリバランスが起きたが、何兆円も社債に投資できないため、国債中心となり、結果的に比率が上昇した可能性がある」とし、今後もリバランスが発生すれば「流動性の観点から国債が買われる可能性が高い」と述べた。

  GPIFが保有する国内債(56兆5000億円相当)のうち、日本国債は89%を占め、3年前の81.3%から上昇した。この間、国庫短期証券の比率は4.5%から1%に、その他の債券は14.3%から10%に減少した。

  三菱UFJアセットマネジメント戦略運用部の加藤章夫シニアマネジャーは「社債などはスプレッドがかなりタイト化してしまっているため、積み増すという判断になりにくい」と語った。

  米国債や欧州国債など、国内債券と分類される為替ヘッジ付きの外債の保有額は21年3月の3兆4100億円から1兆3500億円に減少した。

  日本証券業協会のデータをブルームバーグが分析したところによると、年金基金の代理と見なされることが多い信託銀行の過去1年間の国債購入額は、金利リスクを調整したベースで他の投資家を上回っている。

  日銀は今月末の金融政策決定会合で国債買い入れを大幅に減らす計画を発表する見込みだ。日銀の減額方針を踏まえて、財務省は国債の発行年限を短期化することを検討している。

  ニッセイアセットマネジメント戦略運用部の三浦英一郎専門部長は「政府として国債管理政策の観点からも、生命保険があまり買わないので、GPIFの買いが期待されてもおかしくない気がする」との見方を示した。

--取材協力:山中英典、酒井大輔.

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