新紙幣がいよいよ7月3日に発行されます。20年ぶりの新紙幣です。券売機関連のメーカーが特需に沸く一方、導入する側は重い負担に頭を悩ませ、これを機にキャッシュレス化を進める動きも出ています。


■20年ぶりの新紙幣

1万円札は「近代日本経済の父」実業家・渋沢栄一。5千円札は津田塾大学の創設者で、女性の地位向上に貢献した津田梅子。そして、千円札には細菌学者として医学の発展に力を尽くした北里柴三郎。

近代の偉人がデザインされた新紙幣がいよいよ7月3日に発行されます。新紙幣は20年ぶり。今、各地で準備が大詰めを迎えています。


■“特需”「紙幣整理機」注文相次ぐ

瞬時に仕分けられていく紙幣。

その名も「高速紙幣整理機」です。


マースウインテック 営業部・堀越康二さん:
「混在した紙幣を機械にセットすると、各金種に仕分けをして計数する機械です」

バラバラに混ざった紙幣はもちろん、上下や表裏の向きもそろえてくれます。


こちらは坂城町のシステム機器メーカー「マースウインテック」。

新紙幣発行の恩恵を受けている企業のひとつです。


マースウインテック 営業部・堀越康二さん:
「今は『特需』というんですかね。なかなか生産が追い付いていないという状況で、会社としてもこの機会を逃さずにお客さまに供給していきたい」


売り上げを伸ばしているのが先ほど紹介した「紙幣整理機」。新紙幣にも対応済みで画像を識別するセンサーにより新旧の紙幣を一瞬で仕分けられます。

規模の大きなスーパーなどから注文が相次いでいるそうです。

さらにー。

マースウインテック 営業部・堀越康二さん:
「こちらが券売機で、この黒い機械が紙幣を識別するユニットになっている。こちらの機械を新紙幣に対応することで新しい紙幣を読み取れるような形になる。こちらのほうが非常に多くの引き合いをもらっている」


■「20年に一度のビックな機会」

最も好調なのがこちらの「紙幣識別機」。券売機などの紙幣投入口に組み込まれる機械です。

年が明けてから券売機のメーカーから注文が殺到。販売台数は前の年の約5倍で、今は3カ月待ちの状況です。

前回、新紙幣が発行されたのは2004年。この20年で省人化・無人化が進み、ニーズは前回以上ということです。

マースウインテック 営業部・堀越康二さん:
「20年に一度というビッグな機会ですので、しっかり会社で対応して、良い製品を提供したい」


■買い替え必要…出費は大きな痛手

特需に沸く企業がある一方、対応に頭を悩ませているのが券売機を使う飲食店です。

こちらは、長野市の長野ターミナル会館にあるそば店「信州そば 真田丸」。

ランチ営業のみですがリーズナブルで、おいしいそばが味わえると、連日、サラリーマンや学生でにぎわっています。

客:
「おいしいのは当たり前ですけど、値段も安くて。600~700円くらいで食べられるので通いやすい」


今、店を悩ませているのがー。

信州そば 真田丸・河野賢史代表:
「券売機、このままじゃ使えないので、替えるしかないんですよ。ただ、その費用が莫大な費用なので、個人店にとって大きすぎる。痛すぎるというか。(『新紙幣使えます』と書いてありますが?)これ、昔(2004年)のこと。7月の新札も当然対応できないので」


河野さんとスタッフの2人で1時間に80人ほどの客に対応する店。

券売機が不可欠です。


■当面の間、交換用の旧札を用意して…

新紙幣に対応にするには買い替えが必要ですが、購入を検討しているキャッシュレス決済対応の新しい券売機は約200万円。物価高が続く中、出費となれば大きな痛手です。

信州そば 真田丸・河野賢史代表:
「(負担は)大きい大きい!元を取るのに何年かかるのか。(7月には間に合う?)間に合わないです。注文しても半年ぐらいかかると。その間は、このまま普通の(券売機で)。全員が新紙幣に替えるわけではないでしょうから、古い紙幣でやらせてもらおうかなと」

店では、当面の間、交換用の旧札を用意して、しのぐことにしています。


■キャッシュレスと新紙幣への対応

多くの客が押し寄せる時間帯がある駅ではー。

長野電鉄長野駅には埋め込み式と置き型の2種類の切符の販売機があります。


(記者リポート)
「こちらの古い券売機は新紙幣に対応していないということですが、新しい券売機は新紙幣に対応しているということです」

置き型の販売機は新紙幣だけでなくキャッシュレス決済にも対応しています。3月から設置を進め、24駅中16駅で導入済みです。


長野電鉄 長野駅・北村亨駅長:
「ひとつは、まずキャッシュレス化。今までは現金でしか買えないお客さまに対して、利便性を図りたいというのがひとつ。それと今、言われている新紙幣の対応についても、一緒に考えながらの導入となった」


沿線に地獄谷野猿公苑や小布施などの観光地がある長野電鉄。外国人客の増加も踏まえて、課題となっていたキャッシュレスと新紙幣への対応を一気に解消させるための導入です。


利用客はー。

キャッシュレス決済を利用:
「やり方さえわかれば、最初は操作を戸惑ったけど、時代の流れに乗っていかないと、こういうのが増えてくると思うので」

既に利用客の半数以上はキャッシュレス決済になっており順次、設置する駅を増やすことにしています。


新紙幣への対応で明暗が分かれる現場。

その一方で新紙幣の登場が紙幣を使わない対応=キャッシュレスを促すという状況も作り出しています。

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