「カーボンニュートラル」の実現に向け、いま注目されているのが「水素」だ。地域産業拠点をつくろうと、洋上風力発電など再生可能エネルギーの導入が進んでいる秋田県能代市が動き出している。

能代市や宇宙航空研究開発機構(JAXA)などが連携した、国内では初めてとなる水素に関する研究・開発の拠点づくりを目指すプロジェクトチームが発足した。

能代市「水素ラボ構想」プロジェクトチームは、能代市と秋田大学、早稲田大学、それに能代市にロケット実験場があるJAXAの4者で構成されている。

4者は連携して研究やビジネスの拠点をつくり、関係人口を増やすほか、グローバルな競争に対応できるよう人材の育成につなげたいとしている。

同時に、地域企業の水素関連産業参入を進めることで、能代市を「エネルギーのまち」としてブランディングし、ほかにはない地域産業拠点を目指す。

JAXA能代ロケット実験場では、実験に使用する液体水素を貯蔵するタンクから「ボイルオフガス」という水素ガスが発生している。このガスは、これまで空気中に放出されていたが、JAXAが「何か活用できないか」と能代市に相談し、チームの発足につながった。

チームの構想では、高圧水素設備の増設と水素オフィスラボの建設を進める。

設備は、タンクから発生するガスに圧力を加えて「高圧水素」を作り出し、貯蔵・充てんするもの。能代市は、企業版ふるさと納税を活用するなどして主体となって整備を進め、早ければ2025年度に整備したいとしている。

この高圧水素を活用したい企業や大学などによる共同の研究施設・教育施設の建設を視野に入れて設けるのが「水素オフィスラボ」。水素の関係人口の創出や、専門的な人材を育成することを目的とし、関係者と調整しながら検討する方針だ。

国内にあるJAXAの実験場で産学官が連携した取り組みは初めて。

2つの大学は新エネルギー関連の研究に力を入れていて、ノウハウの提供のほか、学生が常駐して研究を強化するなど、設備を「実践の場」として活用。JAXAは技術の提供、能代市は地域産業支援など、4者のそれぞれの特徴を生かしてプロジェクトを進めていく。

 能代市・齊藤滋宣市長:
「能代ならではのまちづくりは何なのかというと、その一つが水素だろう。再生可能エネルギーを活用してCO2を出さない形で水素社会を目指すというのは、時代の流れ、時代の要請だと思っている。その中心に能代がなれたらいいと思っている」

 JAXA能代ロケット実験場・小林弘明所長:
「能代でやるのが初めてになるはず。これだけ風力発電が実験場の周りにもある。実験以外の地域貢献、農業や漁業など全然違う活用の仕方を、市役所の皆さんと一緒に考えていきたい」

市は2024年度中にニーズの把握など構想実現のための調査を進め、2025年度の予算化に向けて準備を進めることにしている。

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