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<中間管理職はまるで無理ゲー。無視したいけれど、社内での関係を考えると無下にはできない...。その「攻略法」を、オペレーション分析の第一人者が伝授する>
プロジェクトがある程度進んだ段階で、経営幹部や他部署の先輩がありがた迷惑なアドバイスをしてくる......。そんなとき、どうすればいいか?
あらゆる業界・企業で中間管理職を取り巻く「無理ゲー」なシチュエーションを見てきたオペレーション調査会社トリノ・ガーデンの代表取締役、中谷一郎氏は、言葉ではなく視覚に訴えるべきだという。
オペレーション分析の第一人者として知られる中谷氏が、こうした無理ゲーの「攻略法」を40項目にまとめた『中間管理職無理ゲー完全攻略法』(CCCメディアハウス)から一部を抜粋し、3回にわたって紹介する。本記事は第3回。
※第1回はこちら:月200時間働いても評価されない...そんな無理ゲー攻略のカギは「見るべき景色」を認識すること
※第2回はこちら:指示出しても「聞いてませんでした」...伝達ミスはコマンドの出し方を変えれば「攻略」できる
無理ゲー:的外れな口出し
自分の案件に「助言」の名目で、幹部や他部署の先輩が的外れな口出しをしてくる
プロジェクトがある程度進んでいるタイミングで、決まって外野からありがた迷惑なアドバイスが飛んでくる。言う通りにしても上手くいかない未来しか見えないが、かといって社内政治上、当然無下にするわけにもいかない。
攻略法
▶️「とりあえずやってみる」は避ける
周りからのアドバイスをすべて受け入れて言う通りに動いていたら、いくら時間があっても足りません。アドバイスしてくれるお気持ちだけいただいて、そのアドバイスを実行するべきではない理由を示す方向に舵を切りましょう。
▶️マトリクスを作り、プロジェクトの現況やアドバイスの内容を視覚的に認識させる
アドバイスをしてくる外野に対し、プロジェクトの状況や、アドバイス内容のデメリットを視覚的に捉えられるよう図や表にして伝えましょう。言葉ではなく視覚に訴えることで、より客観的な意見の交換ができるようになります。
解説
プロジェクトが進めば進むほど、周辺部署の先輩や上司など、多方面からアドバイスを受けるようになります。
ありがたい反面、厄介なのは、そのアドバイスを無視できないこと。基本、アドバイスをくれるのは上役であることが多いので、その言葉を無下にはできません。
とはいえ、すべてのアドバイスを受け入れていたのでは、やることがどんどん増えて、身動きが取れなくなってしまいます。
自分のすべきことが佳境に入ってきたタイミングだと、外からのアドバイスはただのノイズでしかありません。立てていたスケジュールに、先輩からのアドバイスという横槍が入り、予定になかった作業が割り込んでくる。
とはいえ、社内での関係やしがらみもあるので、いただいたアドバイスには「ありがとうございます」という姿勢でいなければならない。社内政治的な観点からも、不義理を働くことで評判を落とすようなことはしたくはありません。
では、どのように振る舞えばよいのでしょうか。
まず、「とりあえずやってみます」とは、絶対に答えてはいけません。外からアドバイスしてくる人は、あなたと同じ景色が見えていません。前提もわからなければ、現状もわからない。ただ「なんとなく」でアドバイスしている可能性があるのです。
もちろん、経験からくる的確なアドバイスも時にはあるでしょう。しかし、盲目的に「やってみます」と答えるのは危険です。
ここで有効になるのが、「難易度×コスト」「成果が出るまでの時間×成果の大小」といったような、ある一定の軸のマトリクスで考えること。この軸の文言は、「コスト」でも「工数」でも「心理的ハードル」でも何でも構いません。
たとえば、新規の営業先が足りなくて困っているとします。すると、隣の課の課長が「紹介をもらうためには、お客様とゴルフに行ったり、飲みに行ったり、いかに時間をともにするかが重要だよ」とアドバイスしてくれました。
しかし、あなたは今、SNSを使ったマーケティングに取り組んでいて、ゴルフや飲み会に参加している時間はありません。
ここで効いてくるのは、「成果が出るまでの時間」という評価軸です。アドバイスをもらったら、「そうですよね。それって、アクションしてからどのぐらいのスパンで変化出ますかね? このマトリクスだとどのぐらいの位置になります?」と聞いてみてください。「そりゃ、すぐにってわけにはいかないよ」と返ってくるでしょう。
そこで、「積み重ねですよね。ありがとうございます。実は今、こういう施策を考えていまして......」と切り返すのです。
その時、成果が出るまでのタイムラグや難易度、コストを軸に、マトリクスへプロットして見せてみてください。アクションの有効性を視覚的に捉えることができ、説得力が増します。
視覚的に情報を整理することで、「今、実はそんなに予算ないんですよ」「うちの部署でこんなアクションに取り組んでいて、そこに時間とお金を使っているんです」と、自分たちの状況も伝えることができます。
そして、もらったアドバイスに対しても、全体から見た位置付けを俯瞰でき、その有効性(あるいは無効性)が明確になります。
「今取り組んでいるこの施策が終わったタイミングで、もう一度相談させていただいてもいいですか?」という形で尋ねれば、その上司の顔も立てることができます。
上司や先輩からのアドバイスだからといって、すぐに手をつけなければならないわけではありません。そんなことをしていたら、すぐにパンクしてしまいます。
だからといって、「あれ、どうなった?」と尋ねられた時に、「まだ手をつけていません」ばかりではいけません。アドバイスをただ無視していると、上司はその後、さじを投げるでしょうし、あなたに有益な情報をくれることもなくなるでしょう。
現状の取り組みをマッピングし、目に見える形で状況を伝えることで、一方的なアドバイスではなく、さまざまな条件を考慮したアドバイスをもらえるようになります。
中谷一郎
大学卒業後、ベンチャー・リンク社を経て2010年にトリノ・ガーデンを設立。サービス業を中心に、建設、小売、メーカーなど幅広い業界における大企業の収益・生産性改善を、「オペレーション分析」を通じて実現してきた。その手法の特徴は、徹底的に現場の様子を「可視化し計測し記録する」こと。近著に『オペレーション科学』(柴田書店)がある。
『中間管理職無理ゲー完全攻略法』
中谷一郎[著]
CCCメディアハウス[刊]
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