家か食事かの選択に迫られるアメリカ人が増えている。その訳は? STEKLO-Shutterstock.

<米政策金利の高騰で住宅ローン負担が急増、支払いに窮して食事を抜いたり医者に行くのを先延ばしにする人が2〜3割に達している。今や余裕で家を買うには年収約11万4000ドルが必要という>

アメリカ人は今、雨風をしのぐ屋根付きの家を失わないために、休暇旅行や食事を犠牲にしていると、不動産仲介プラットフォームのレッドフィンの最近の調査結果は示している。

調査対象となった人のうち約5分の1(22%)は、家賃や住宅ローンの支払いに充てるためにお金を節約し、食事をせずに我慢した経験があると回答した。

 

さらに、全体の3分の1以上の人(34.5%)が、高騰する住宅ローンや家賃の支払いが不安で、休暇を取りやめる決断をしたと答えている。一部のアメリカ人は、副業を始めたり、医師にかかるタイミングを遅らせたり、診療回数を減らしたりすることを余儀なくされている。

もう車が買えなくなったアメリカ人──年収10万ドルの壁

レッドフィンの経済リサーチを率いるチェン・ジャオは、以下のように語っている。「アメリカでは、住宅費が家計の大きな重荷になっており、一部の家庭では、食事や医療といった、生きていく上で不可欠な支出もままならない状況が起きている。こうした家庭ではやむを得ず、大きな出費を諦めたり、時間外労働をしたり、周囲の人から借金をするなどして、月々の(住宅費の)支払いを何とかやりくりしている」

金利は高止まり

住宅ローン金利は2023年に、21世紀に入ってから最も高い8%というピークに達し、高止まりの状況が続いている。2024年に入って一時は多少下落したものの、この数週間で再び上昇し、現在は7%前後のレベルにある。レッドフィンの調査によると、金利が6.79%だった3月31日の時点で、月々の住宅ローン支払額の中央値は2700ドルで、前年と比較して9%以上上昇している。

一方で、住宅ローンのコスト上昇によって、住宅購入希望者が購入の決断を遅らせ、賃貸市場に流入するという現象も起きており、これが月々の家賃を押し上げている。2月には、貸し手側の提示する家賃が2%以上上昇し、月額2000ドルの大台に近づいた。レッドフィンでは、2023年初頭以降で最高の伸びだと指摘している。

「平均的なアメリカの家を購入できる金銭的余裕を確保するには、買い手は(年に)約11万4000ドルを稼ぐ必要がある。これは、平均的な家計の年収と比べて35%も高い金額だ。しかしこれでも、2023年10月と比べると事態は改善している。当時は、必要な年収額は史上最高の12万1000ドルに達し、家計収入の中央値と比べて51%高い金額となっていた」という。

レッドフィンでは2024年2月、調査対象の約3000人のうち、住宅費の支払いが難しいと感じている1490人以上の人々を対象に意識調査を行った。

それによると、ミレニアル世代では約13.5%が、退職後に備えて貯えていた資金を取り崩して月々の住宅費の支払いに充てる決断をしていた。また、ベビーブーム世代の人では、4分の1以上が同様の決断に踏み切っていた。

また、人口統計上のグループによっても、違いが認められた。住宅費の支払いを工面する場合、黒人層では時間外労働をする人が比較的多かったのに対し、ヒスパニック世帯では所持品を売る傾向があった。アジア・太平洋諸島系アメリカ人と白人の場合は、休暇にかける費用を減らすことを選んでいた。

レッドフィンのジャオは、住宅費高騰を緩和することを狙った政府の政策が施行され、連邦準備制度理事会(FRB)が2024年内のどこかの時点で金利を引き下げれば、こうした状況が変わる可能性があると示唆した。

「国のリーダーたちはこの問題に注目し始めている。FRBが6月にも金利を引き下げれば、住宅購入者の状況は若干改善するかもしれない。金利が下がれば、住宅ローンを借りる際のコストが下がるからだ」と、ジャオは指摘した。
(翻訳:ガリレオ)

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