近年増加傾向にある操作系スイッチのタッチセンサー化。目新しさで歓迎される反面、「操作感に乏しい」という声も聞く。それを受けてか、欧州の車両安全評価機関ではタッチ式スイッチに規制をかける動きが出てきたようだ。

※本稿は2024年4月のものです
文:角田伸幸/写真:ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2024年5月10日号

■タッチセンサーの操作には時間がかかる?

スウェーデンの「ヴィ・ビラーガレ」は操作系による所要時間の違いを調べた(同サイトより)

 近頃のクルマはカーナビやエアコンの操作にタッチセンサーを使うことが多いが、その流れに規制がかかるかもしれない。

 欧州の車両安全評価機関であるユーロNCAPの幹部が、「2026年1月からウィンカー、ハザード、クラクション、ワイパー操作、緊急通報という5つの操作について、物理スイッチであるかどうかを評価の対象とする」という考えを表明した。

 タッチ式スイッチには、スマホのような洗練されたイメージがある反面、「操作感が薄い」とか「目的の操作がわかりにくい」といった声も聴く。

 実際にテストも行われていた。スウェーデンのクルマメディア「ヴィ・ビラーガレ」が、さまざまな操作系を持つクルマ11台を時速110kmで走らせ、その間にラジオやエアコンを操作する所要時間を計測したのだ。

マイナーチェンジしたテスラ モデル3のステアリング。ウインカーのタッチスイッチが見える

 それによれば、タッチスイッチは物理スイッチに対して総じて操作に時間がかかり、最も時間がかかるクルマ(MGマーベルRというEV)の操作時間は、最も素早かったクルマ(タッチスクリーンのないボルボV70)の4倍以上だったという。

 自動車メーカー自身も傍観しているわけではない。たとえばヒョンデは、新型コナでエアコンやオーディオに物理ボタンを残したし、フォルクスワーゲンはゴルフ8のマイナーチェンジで、上位モデルが搭載していたステアリングスポークのタッチ式スイッチを物理スイッチに戻した。

 将来、音声UIが普及すれば、触るという操作自体が減るが、それまでは運転中のなんらかの操作は不可避。とにかく安全を最優先してほしい。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。