2024年12月23日17時、ホンダと日産の経営統合に向けた検討に関する基本合意書が締結され、2025年6月の最終契約書合意、2026年8月の共同持ち株会社東証プライム市場上場に向けて、ホンダ・日産の統合によってどのような変化が起きるのか? 統合に参加するかどうか否かの判断を2025年1月末までに判断する三菱自動車という現況だ。スピード感を持って急がなければいけない課題はホンダが持つハイブリッドを軸にしたシナジー効果だろう。そこで国内市場でシナジー効果が見込まれそうなコンパクトカーの統合の可能性について考察していきたい。
文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部、ホンダ、日産
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■ホンダの弁慶の泣き所は、販売好調とはいえないフィット、ステップワゴンをどうするか?
国内市場において日産の稼ぎ頭となっているノートとセレナ。2024年4月~2024年9月の新車販売台数(自販連)を見ると、日産は4万8339台でノートが4位、セレナが3万9367台で7位とベスト10内に2台はランクイン。
いっぽう、フィットは3万1556台で14位、ステップワゴンは2万6050台で18位と低迷している。いずれにしてもホンダ、日産車は、7万3052台で2位のヤリス、3万5143台で10位のヴォクシー、3万4240台で11位のノアというトヨタのライバル車には大きく水を開けられている状況だ。
日産がノートとセレナの販売が好調なのはe-POWERのおかげといっていいだろう。e-POWERのハイブリッドシステムは、エンジンは発電に特化し、発電した電力を小型バッテリーに充電、その電力で駆動用モーターを回して走行するシリーズ式だ。日産はこのe-POWER=電動化にこだわるあまり、日本市場以外の北米、中国では競争力を落としてきた(EVの販売不振が最も大きいが)。
e-POWERのメリットは低回転から強いトルクを発揮するモーターで常時走行するため、発進時から力強い加速感が得られることで、発電もエンジンの燃焼効率の高い条件で運転できるので、燃費に有利とされ、街中や市街地といった走行シーンでは、ガソリン車とは違ったワンペダルドライブによる爽快なドライブフィーリングを味わうことができる。
しかし、デメリットは、高速走行中の燃費低下。高速走行時にはモーターが多くの電力を消費するため、常時発電が必要となり、エンジンがかかりっぱなしとなることで、燃費が著しく低下する。
そのほか、エンジンが主役でモーターがアシストする「パラレル方式」、そして、トヨタのTHSIIが採用するエンジンとモーターの両方で走る「シリーズ・パラレル方式」がある。
フィットに採用されている1.5L e:HEVは、モーターが得意とする低・中速ではシリーズ方式と同様にモーターで走り、エンジンが得意とする高速クルージング時はパラレル方式と同様、シンプルにタイヤに直結したエンジンで主に走行。シリーズ方式とパラレル方式、それぞれのよさを活かした方式だ。
シリーズ・パラレル方式は、エンジンとモーターが駆動する割合を走行状況に応じて切り替えるが、e:HEVは、日常のほとんどを効率の良いモーターで走行。モーター走行にはEVモードとハイブリッドモードがあるが、いずれも複雑な動力分配機構を持たず、シンプルな構造にすることで、モーターによる上質な走りと効率を両立している。
WLTCモード燃費比較では、ヤリス1.5Lハイブリッドの35.4~36.0km/L、35.8~33.6km/Lのアクアに対し、ノートe-POWERは28.4km/L、フィットe:HEVは29.0~30.2km/Lと燃費のうえでは両車ともにヤリスに1割以上もの差を付けられている。
トヨタの開発者に言わせれば、エンジンパワーをすべて電気に変換してモーターを回すことは効率を考えてもありえないというのがe-POWERの評価。ただ運転する楽しさという観点からすれば、日産e-POWERもホンダe:HEVにしても、トヨタとは違う独自色を出しているのはいいのだが……。
■2026年から生産されるホンダの次世代1.5L e:HEVが軸
おそらくこの先15年くらいはBEVへの移行期で、それまではハイブリッドやプラグインハイブリッドが主流になっていくのがもっぱらの噂。
日産、ホンダの経営統合が始まると、プラットフォームの共有化は急にはできないが、ハイブリッドシステムの共有は、ホンダが主導して早急に行っていかないと日産が持たない。そんな悠長なことはいってられないほど追い詰められているからだ。
ホンダと日産の経営統合の話がまだ上がっていなかった2024年12月16日、ホンダは次世代1.5L e:HEVと次世代2L e:HEVを発表した。EVへ急速にシフトしていると思っていたら、実はハイブリッドも2年前から開発しており、それが今回お披露目されたのだ。
発表されたハイブリッド事業に関する資料を見ると、2023年に比べ収益性を2倍にし、ハイブリッドの販売台数の大幅な拡大、具体的には2023年の65万台から2030年には5倍の130万台を目指している。
コスト低減についても2026年モデルのハイブリッドは2023年モデルに対し、30%のコスト削減。さらに次世代1.5L e:HEVユニットはエンジン高効率領域を40%拡大し、燃費は10%以上(2L e:HEVも同様)向上するとしている。
車体軽量化に関しても完成車重量-90㎏とし、車体コスト-10%を目指す。新開発の次世代e:HEVシステムに軽量プラットフォームを組み合わせ、さらには切味鋭いシフトフィールが味わえるS+Shiftや電動AWDを組み合わせるという、抜け目のないハイブリッドシステムである。
2L e:HEVは2025年中に新型プレリュードから投入され、1.5Le:HEVは2026年から投入する予定。ホンダ・日産の経営統合が締結されるのは2025年6月とされていることから、充分間に合う。会見ではホンダ三部社長はプラットフォームの共用化などシナジー効果が出てくるのは2030年頃になりそうだと発言。
ホンダの次世代小型車用1.5L e:HEVは、ホンダ車、日産車、三菱車のコンパクトカーやコンパクトSUV、ミドルサイズミニバン、つまりフィットやノート、ヴェゼルやフリード、シビック、ステップワゴン、セレナなどに搭載される可能性が高い。ホンダにとっては台数増によるコスト削減効果は絶大で、日産にとっても、走りも楽しめるe:HEVが手に入るのだから願ったり叶ったりではないか。
ただし、ホンダ、日産、三菱のブランドは共に存続するので、デザインについては各社が独自色を出していくことになる。VWポロとアウディA3のような兄弟車(しかも3兄弟)が生まれるのが現実となりそうだ。
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