話題の提供や基準を作る際にうってつけな要素である「最も○○〜」。乗り物に関する趣味のトピックでも、あれこれと頂点を競い合う、最も系なテーマが色々考えられる。

文・写真:中山修一
(低いところを走る公共交通にまつわる写真つき記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)

■高さがあるなら低さもアリ?

低さに注目するならトンネルに自ずと関心が向く!?

 バスや電車などの公共交通機関で、最も長い距離を走るもの、最も速度が速いもの、最も高いところを走るもの、といった枠組みでのランク付けはおなじみ。

 そんな中、高いところに焦点を当てる話題があるなら、その反対の低いところに注目しても良さそうだ。

 殊に、全国各地にネットワークが広がる路線バスや高速バスで、最も低い(深い)場所を通るものは、どこにあるのか。

 高いところは過去にバスマガジンWeb上で紹介したことがあり、それと背中合わせにする形で、軽くリサーチしてみることにした。

■低い場所といえばアレ

 低さがテーマとなれば、海面+-何mかを基準にするのが簡単なハズ。特に低そうな場所を通っている道を探して、そこに乗合バスが運行しているかどうかをチェックしていく算段だ。

 まず地上に注目すると、埋立地などの臨海エリアをはじめとする、いわゆる海抜ゼロメートル地帯が全国各地に数多く見られる。

海面スレスレの場所を通るバスなら全国にたくさんありそう

 そういった場所を通るバスがあるかどうか……恐らく調べたらキリがない。他に漁港の岸壁近くを通るバス路線まで含めれば、海面0mクラスは無数に存在していて、これといった答えを出せない気がする。

 それなら自ずと目線の先を地下に移すことになる。深い場所にある道の類といったら、やはり海底トンネルを物差しにするのが丁度よさそうだ。

■日本一深い海底トンネル

 最も深いところを通っている日本の海底トンネルはどこにあるのか。青森県と北海道を隔てる津軽海峡の海底の下に作られた青函トンネルだ。

長さ・深さの世界的な記録ホルダーでもある青函トンネル

 全長54km、最も深い地点で海面-240mに達する青函トンネルは、海底トンネルとしては世界一の長さ・深さを誇る。ただし青函トンネルは鉄道専用のため、自動車が走れるインフラは一切想定されていない。

在来線時代の青函トンネル最深部を通過中の様子。青い蛍光灯が目印になっていた

 鉄道で言うなら、日本で最も低いところを走るのは、北海道新幹線「はやぶさ/はやて」及び本州〜北海道間の直通貨物列車、ということになる。

■日本一低所な道路トンネルって?

 青函トンネルはともかく、自動車用の道路が敷かれた海底トンネルのうち、日本で最も低いのはどれだろうか。

 この条件に当てはまるのが、神奈川県の端と千葉県の間を、東京湾の下をくぐってショートカットする、高速道路ナンバリング「CA」の東京湾アクアラインだ。

日本で最も“低い”高速道路・東京湾アクアライン

 最深部で海面-60mほどに達するそうで、2024年現在のところ、アクアラインよりも低い位置を通る自動車用の道はないとのこと。

 そんなアクアラインを通るバスがあるか否か。ショートカットルートだけにちゃんと路線が設定されていて、新宿・川崎・横浜ほか〜木更津方面を結ぶ高速バスが何路線か出ている。

アクアラインの「海ほたる」には高速バスのバス停が置かれている

 上記を踏まえると、日本で最も低いところを走るバスは、東京湾アクアライン経由の高速バス各路線、で決まりだ。

■資料の少なさが泣き所

 続いてバスのジャンルを変えて、高速道路を通らない一般路線バスで最も低いのはどれかを掘り下げてみよう。

 しかし、よくよく調べ始めてみると、最高地点にまつわる情報はたくさん出てくるのだが、低いほうはあまり注目されないようで、一般道の海底トンネルこそ各地に存在していても、深さまで分かるものが極めて少ない印象。

関門トンネルの人道。車道と同じ国道2号線の扱いになる

 資料が限られる中、なかなか深そうな一般道トンネルに挙げられるのが、山口県〜福岡県を隔てる関門海峡の下を通る国道2号線の関門トンネルだ。

 深さは海面-56mほど。車道と歩道が別々のトンネルに分かれているのが関門トンネルの特徴で、日本では数少ない、歩いて渡れる海底トンネルの一つに数えられる。

 あとはここを通るバスの有無を調べるだけ。しかし関門トンネルは何しろ県境を跨ぐため、一般路線バスが特に避けがちな道に相当する。

関門海峡を越えるバスは関門橋を経由する高速バスのみと言えそう

 昔は関門トンネルを経由するバスが出ていたようだが、現時点でここを通る路線バスは1本もないようだ。

■再び東京湾が登場

 深さの分かるトンネルを探していて、再度出てきたのが東京湾エリア。国道357号線が通っている東京港トンネルがあり、こちらの深さが海面-22mとされる。

 気になるバス路線であるが、京急バスの「井30系統」が東京港トンネルを経由するとあった。ところがこの路線は2024年2月に廃止されてしまったため、現状同トンネルは路線バス空白ゾーンになっている模様。

 もう一つの東京湾エリアの海底トンネルに、深さ-14mの川崎港海底トンネルがある。こちらは現在も川崎市営バスの「川05・07系統」の経路に含まれており、低いところを走る一般路線バスの一つに数えられそうだ。

■最深クラスはこれか!?

 また東京湾を離れて、もう1カ所低そうな海底トンネルが見つかった。新潟県の新潟みなとトンネルがそれで、深さ海面-24m。信濃川の河口付近にあるため正確には川底らしい。

 果たしてこのトンネルをバスが通るのか!? 通っていた!! 新潟交通が運行する「C50・51系統 西堀通線」が、新潟みなとトンネルを経由する。

 現状判明している時点では新潟交通C50・51系統が、最も低いところを走る一般路線バスの栄冠を手にしそう。ただし、バスの便数が1日1往復しかないので、合わせて極レア路線の肩書きもつく。

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