沖縄本島でマイカーやレンタカーを使わずに移動するとなれば、路線バスに自然と手が伸びる。しかしこの沖縄の路線バス、うまく使うには他の地域とお作法がだいぶ異なるらしい。

文・写真:中山修一
(沖縄のバス利用にまつわる写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)

■沖縄本島を走る路線バス

沖縄の公共交通の主役が路線バス

 観光目的で訪れて、首里城や国際通りといった有名観光スポットが集まる那覇市街地の周辺なら、空港から直結している沖縄都市モノレール(ゆいレール)で、大抵は間に合ってしまうかもしれない。

 しかし那覇から出て、遠くの方まで足を延ばそうと思った場合、地上を走る公共交通機関はタクシーを除いてバスしかないため、半ば自動的に路線バスや高速バスがいる方向を見る運びになる。

 沖縄本島には11の乗合バス事業者がある。この中で、まず那覇周辺を歩いていて頻繁に目にするのが、沖縄バス、東陽バス、那覇バス、琉球バスの車だ。

虹色が目印の琉球バス

 これらは沖縄本島での主要4社と呼ばれ、とりわけ本島内の広い範囲をカバーしているバス事業者と言える。

 4社ともバスの車体は白地。とはいえトレードカラーがそれぞれ異なる。各社の、いわゆる現行カラーを見てみると……

●沖縄バス:青と薄紫色の斜めストライプ
●東陽バス:赤・緑・青の横ストライプ
●那覇バス:淡い青色の2本線
●琉球バス:虹色のライン

……のような感じで、パッと見てどれがどのバス事業者かは(細かいところまで突き詰めれば例外はいくらでもあるけど)大体区別がつくハズ。

沖縄バスの新しめの車両は斜めストライプ

■一風変わった乗り降り

 ドアが2カ所ある車なら、後ろのドアから乗って前ドアから降りる、運賃後払いの整理券方式が、大都会を除いた地域での平均的なバスの乗り方というイメージが強い。

 沖縄にも、「後乗り・前降り」の後払い方式や、大都会のバスによくある、「前乗り・後降り」の運賃先払い方式を採っている路線もあるにはあるが、ごく少数派らしい。

3色のラインを配した東陽バス

 バスに乗ってみて、決して沖縄だけ!! というわけではないものの、かなり独自色が強いと感じたのが、バス事業者を問わず大抵の路線が「前乗り・前降り」の運賃後払い、整理券方式に統一している点だ。

 バス車両のドアが2扉でも3扉でも、前以外のドアは締切扱いにして、バリアフリー対応する時を除き開閉しないのが基本。

 沖縄を走るバスには、前1カ所にしかドアが付いていない、いわゆるトップドア車もあり、2扉車に混じって使われている。

 バス車両の仕様ごとに乗り降りの方法を変えると、利用者/運用者どちらも困ってしまうので、そこは扉数の少ないトップドア車に合わせている、と考えられる。

シンプルながら手堅い配色の那覇バス

■あのカードは使えません

 2024年11月に離脱する地域が出て話題になったものの、それでもバスや鉄道の運賃を支払う際に、Suicaをはじめ全国交通系ICカードが使える所が増えて、便利になったものだとハイテクに感謝する機会もそれなりに多い。

 ところがこの沖縄において、それが常識だと思って行くと大変な目に遭ってしまうかも!? 沖縄の殆どの路線バスでは、Suica/PASMOの類は使えないので、多少の注意と足りるだけの小銭が必須になる。

運賃支払い方法の注意書きがバス停に貼られていた

 ただ、バスの出入口を見るとICカードリーダーが付いている。じゃあどのICカードが対応しているの? と確認してみれば、使えるのは「OKICA(オキカ)」という名前の沖縄独自のICカードのみ。扱い方はSuica/PASMO等と大体同じだ。

沖縄のICカードといえばこれ

 持っていればバスの乗り降りがより素早く手短に済むのと、ご当地系交通ICカードは旅の記念にもなるので割と一度で二度美味しく、ついでに購入しておくのがオススメ。モノレールの券売機で無記名タイプのOKICAが買える。

■それが「普通」らしいです

 沖縄本島の各地をうろついていた際、現地在住の方と話をする機会を何度か得て、そういった話の中で、おおむね共通していたバスの特性があった。「遅れる」という点だ。

 ちょっと、とか、たまに、ではなく、“必ず”遅れるのがミソ。これには避けようのない事情が付いて回るようで、まず挙げられるのが道路事情だ。

どこまでも続いていそうなクルマの列…

 沖縄はクルマ社会であり、街中を走る自動車の数も半端ない。那覇周辺の交通量に至っては、首都圏の大都会と全く変わらないというか、それ以上のボリュームを感じる時すらある。

 交差点という交差点で自然渋滞がボコボコ発生するのは日常茶飯事。そんなコンディションの下で大型バスを走らせようとなれば、そう簡単に進めないのは何となく察せる。

 さらに、バスの乗降方法も遅れに起因している様子。前乗り・前降り方式は、中でも特に時間のかかるシステムだ。

 しかも、多くの利用者が降りる途中停留所で、全員が現金払いかつ両替を希望していたとすれば、それだけで相当なロスになってしまう。

自分が乗りたいバスにコイツが出るとショック?

 乗車中にしょっちゅう見たのが、停留所に立っていた人がバスの運転手さんに「このバス〇〇まで行きますか?」という質問を投げかける光景。インバウンド系の方が多かったので、言語の壁から説明も大変そうだった。

 バスにとっては超不利な道路事情に加え、乗客の運賃収受と乗り降り、質問対応が何度も続けば、イレギュラーな停車時間がどんどん積み重なっていき、結構な遅れができあがる、という仕組みらしい。

 先日バスで移動していた際も、途中で乗り換える行程を組んでいて「猶予20分あれば足りるべ」と思っていたところ、自然とガンガン遅れて、気づけば乗り継ぎ猶予が2分にまで減っていた。

 しかも、乗り換えるバスが出るのが、同じ名前の停留所ながらも降りた場所ではなく、大きな交差点を挟んで150mほど離れた対向車線側にあるほうのバス停だった。

 あ、これ信号待ちにハマったら詰むわ、と、気分はサスペンスドラマ終盤の断崖絶壁。

 ところが蓋を開けてみれば、乗り換える側のバスも盛大に遅れていて、成り行きで乗り継ぎができてしまい、大きな問題には発展せず。

 必ず遅れるとはそういうことか……しかしまあ、そのバスを逃すと次まで1時間半バスが来なかったので、遅延自体は精神衛生上プラスに働く代物でないのは確かだけど、ねぇ。

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