日産自動車に激震が走っている。ホンダとの合弁会社設立など非常に厳しい展開になってきた。しかし日産にとって実は大きな財産がまだある。それがメカニックを目指す日産自動車大学校の学生だ。今回はモータースポーツに参加する学生にインタビューした。
文/写真:ベストカーWeb編集部
■日産の明るい未来はメカニックにあり
日産が激震に揺れている。ホンダと合弁会社を設立して、その傘下にホンダと日産が入るという報道が流れた。もちろん予期できた動きではあるが、いざこの手の報道が流れると非常に寂しい気もするし、あの頃にワクワクさせてくれた日産がどうなるのか。
本当に不安だし、このどうにもならない思いをどこにぶつければいいのか……。でも日産にはちょっとした希望もある。それが次世代の整備士や日産のエンジニアリングを担う、日産自動車大学校の学生たちだ。
日産の根底を支えてきたのはアツいファン、そしてそれ以上にアツいエンジニアや販売店の整備士たちだ。そんな日産の「ベース」を支えるエンジニア、メカニックの卵がいるのが日産自動車大学校。今回は日産京都自動車大学校のモータースポーツ活動に迫ってみたぞ。
■ラリーでしか学べないものがある
まずはラリー活動。国内ラリー選手権の地区戦に出場している日産京都自動車大学校。K13マーチで参戦しているが、ラリージャパンでもメカニックとしての帯同をしているほど。
今回案内してくれた学生はコ・ドライバーとしてナビゲーターを務めるとともに、年間王者にも輝いた実績も持つほど。しかし日産自動車大学校はスーパーGTのKONDOレーシングと進める「日産メカニックチャレンジ」にも参加している。
いったいどこが違うのだろう? これは前から気になっていたことで聞いてみた。
「もちろんサーキットのレースは気高くて、最高峰モータースポーツとして尊敬します。だけれど、やっぱり孤独というか、ライバル意識がとても強いようにも感じます。一方でラリーってどこかエントラント全体が仲間なんです」。
ラリーの現場に行けばわかるが、やっぱりアットホームな雰囲気が強い。困ったことがあれば工具も貸してくれるような、「ご近所感」をひしひしと感じる。
そんなラリーはメカニックにとっても見せ場は多い。
「突貫で修理をすることもありますし、パーツが足りなければとにかく集めるという作業もあります。互換性のあるパーツを探したりとか、その”応用性”みたいなことは勉強になります」。
パーツや工具が揃わないから、試行錯誤して整備をしようという販売店はないだろう。しかしながらその経験をしている、していないでは大きな差が出るのも事実。ラリーはそんな経験も請け負っている。
■ガチな先進技術を競う「学生フォーミュラ」
近年、大きな話題を呼んでいる学生フォーミュラ。BEVを自作し、耐久性などを競う競技だ。日産といえばリーフやアリアなどBEVではかなり先行したイメージがあるのだが、学生フォーミュラではまだまだ新参者だという。
「2019年からの参戦になります。日産といえばEVというイメージを持っている人も多いので、私たちも看板を背負っている感じはあります」と学生は語る。
いくら整備学校の学生とはいえ、整備ではなく「クルマ作り」をするノウハウは学んでいない。メーカー直系校として、しかも「電気の日産」として負けるわけにはいかないという自負もあるだろう。
「今は初代リーフのモーターを使っています。本当はサクラのモーターユニットが欲しいのですが、日産の規定もありいまは使えないんです。それでも制約のあるなかで工夫するのが学生フォーミュラですし、そこが楽しいんです」。
バッテリーボックスに空冷用ファンを取り付けたり、フレーム溶接での強度確保、バッテリーの直列並びの工夫……。その苦労はかなりのもの。文系の編集部員からすればチンプンカンプンな配線図を睨めっこしながら作業をする学生たちの顔が凛々しかった。
日産はたしかに大変な事態に陥ってしまった。けれど、必ずしや復活する。90年にわたり日本の自動車業界に燦然と輝いてきた日産の歴史は消えないけれど、確実に継承していく人間が必要だ。
「技術的なこともそうですが、やっぱり人を見ることをたくさん学んだ。誰が、どこで迷っていて、どんな風に背中を押せばいいのか。何を今言うべきなのか。そんな経験が学生フォーミュラで一番学んだことなのです。」
いい日もあれば悪い日もある。きっと上の言葉は日産で名だたる名車を作ってきたエンジニアたちも同じことを回想しただろう。人を見るクルマ作り。日産が大切にしてきたメソッドは自然発生的に受け継がれている。
日産自動車大学校の学生たちがもしかしたら伝統を継承し、それを昇華して、新たな日産の時代を築いてくれる日が来るだろう。そう期待せざるを得ないほど、学生たちの真剣な眼差しが光っていた。
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