地方の名産品が返礼品としてもらえるふるさと納税は、地方活性に役立つことや税制上のメリットもあり、各自治体が文字通りしのぎを削り返礼品の選定を行っている。そして、その返礼品にとうとうバスが登場したのだ。
文:古川智規(バスマガジン編集部)
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■中古バスを返礼品に!
川崎市は「ふるさと納税」の返礼品として、市バスで運行で利用していた「バス小型車」を新たに出品する。そのほかに、バス車体に付いていた行先表示機「LED方向幕」など、市バスならではの「ふるさと納税」返礼品の出品を開始する。市バスでは「返礼品を通じて魅力を発信し、市バスを応援してくれる方を増やすため、「ふるさと納税」の取組を進めてまいります」としている。
市バスの車両は一般的に市の財産だが、経年や走行距離により定期的に入れ替えなければならない。通常は中古市場に売却するか、都市部の車両は地方の事業者に譲渡してバスの供給源として機能している面もある。
そのバスを返礼品としようとするのはなかなかのアイデアだ。実際に希望する人がいるのかどうかの推移も気になるが、どんな車両なのかを見てみよう。
■日野ポンチョがもらえる?
返礼品に指定されたバス小型車をもらうための寄附金額は1300万円で、出品数2両である。つまり先着2名様限定である。公表されている車両概要は、車両年式は平成23年度、サイズは長さ6.99m、幅2.08m、高さ3.10mで、走行距離は91500㎞と100800㎞だ。
乗車人数は運転手1名+35人で、座席数12席に残りは立席定員だ。運転資格は、大型自動車第一種免許で、旅客を運送する場合は大型自動車第二種免許が必要としている。なお、返礼品がもらえるのは川崎市外に在住のもので、市民が寄付しても返礼品の提供はない。市民は川崎市から住民税として課税されているからだ。
■お得なのか?
さて、中古の日野ポンチョを1300万円でもらえるのは素晴らしい試みだが、もし本気で手に入れようとすると中古市場から探すことになる。2011年式だと仮定すると1300万円はかなり高い印象だ。しかしバスで10万キロ程度の走行車はかなりの低走行といえる。
また自家用車としての使用履歴がなく、バス事業者できちんと整備が行われてきた車両だということを考慮すればお得だと結論付けても問題はないだろう。何よりも納税(寄付行為)の返礼品なので、自治体に寄付金が残らないと意味がない。それを含めてもいい買い物だと言えよう。
■免許の問題
さて、日野ポンチョはショートボディの乗車定員によっては中型免許でも運転できるが、多くの事業者では多数の旅客を乗せるために立席定員を含めて30名を超える車両を導入している。
よって、このままの乗車定員35名ではマイクロバスの枠を超えるので大型免許が必要だ。マニアの中には座席を取り払い、着席定員を少なくして中型免許で運転できるように構造変更をする猛者もいる。
■高速道路走行には壁
ポンチョは高速道路を走ることを想定していないので、座席定員を減らして中型免許で運転できる車両に変更しても、そのままでは高速道路は走れない。座席のすべてにシートベルトを装着する等の要件を満たす変更も必要になる。
キャンピングカーや福祉車両として登録するために、ポンチョをベース車両として購入するマニアもいるにはいるが、購入後の費用もそれなりにかかる。
ここは大型免許を持つ人がオリジナルのままで走らせるのが最もお得な購入方法と言えようか。川崎市交通局のポンチョをもらって車中泊やクルージングがいかがだろうか。
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