「どうやってもバレるのでは?」と思わざるを得ない犯罪行為。あまりに幼稚なため思わず笑ってしまうことも多いが、アメリカでまたひとつ笑いを誘う愉快な事件が発生した。クマの被害に見せかけた保険金詐欺、その詳細を皆様にも楽しんで頂きたい。
文:古賀貴司(自動車王国) 写真:ベストカー編集部
■野生のクマが突如高級車を連続で襲撃
アメリカでも犯罪発生件数が少ないことで知られるカリフォルニア州ロサンゼルス郊外のグレンデールで事件が発生した。
被害車両はロールスロイス・ゴーストを筆頭に、メルセデス・ベンツG63 AMG、そしてメルセデス・ベンツE350というラインナップ。事件発覚のきっかけは、容疑者たちの稚拙な演出と無計画性にあった。
2024年1月28日の夜、防犯カメラは「クマによる車両損壊」の決定的瞬間を捉えていた、はずだった。
しかし、暗闇に浮かび上がった“クマ”の動きがあまりに不自然だったため、保険調査員の目にひっかかることとなったわけだ。驚くべきことに、容疑者たちは同じ夜に3台もの高級車を立て続けに“被害”に遭わせている。
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■決定的な証拠(?)になったのは爪の数
まず午後9時44分、ロールスロイス・ゴーストが”クマ”に襲われ、その13分後の9時57分には同じ場所でG63 AMGが餌食になった。さらにEクラス(タイムスタンプが削られていた)まで同じ手口で狙われたという大胆不敵ぶりだ。
カリフォルニア州保険局(CDI)が動画共有サイトVimeoの公式チャンネルにて監視カメラ動画を公開しているが…、これがかなり笑える。保険調査員を決定的に動かしたのは、車内に残された「爪痕」の不自然さだった。
高級レザーに刻まれた傷跡は工具で付けられたかのように均一。そして決定打となったのが、シートに残された6本の爪痕だ。野生のクマの爪は人間と同じ5本である。この初歩的なミスが、14万ドル(約2100万円)規模の保険金詐欺計画の致命傷となった。
「クマは凶暴だが、決して几帳面ではない」、捜査に関わった調査員は、そう語って苦笑いを浮かべたという。
カリフォルニア州保険局(CDI)が「オペレーション・ベアクロー(熊の爪作戦)」と名付けたこの捜査で、26歳から39歳までの4人の容疑者が逮捕された。
容疑者宅からは証拠となるクマの着ぐるみと、車両損壊に用いられた特製爪道具が押収されている。
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■クマが高級車を狙って襲う訳はなく…
容疑者の一人は自動車ディーラーでの勤務経験があり、その知識を悪用し保険金詐取を企てたとみられる。
グレンデールの街では、実際にブラックベアの出没が珍しくない。そのため、一見すると巧妙に見えた今回の手口だが、高級車に精通する保険調査員の目は誤魔化せなかった。
専門家によると、グレンデールでは本物のクマによる車両被害は年間数十件報告されている。その多くは車内に放置された食べ物の匂いに誘われたもので、爪痕は不規則で深い。
また、当たり前だがクマは匂いに誘われるので高級車ばかりを狙うわけではない。
今回の事件のように、高級車ばかりを狙う”クマ”がいたとすれば、それは明らかに不自然だったというわけだ。
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