高速道路で食べるうどんのダシはどのあたりから変化するのか? そんな疑問を応えるべく、東京から九州までうどんを食べ続けて、地域の違いを調べてみた。

文・写真:雪岡直樹

■東京~九州までうどんをすすりまくってみた!!

東名高速道路の港北から九州道の基山PAまで実施。トータル距離は1000㎞超え!!!

 某カップうどんメーカーが東西で味を変えているのは有名な話。2024年になり「具材も東西で分けました!」と大々的に宣伝するくらい、うどんひとつをとっても出汁、醤油、麺、具材にはそれぞれ違いがある。

 日本全国の津々浦々に張り巡らされた高速道路にあるSA/PAでも、だいたいうどんはあるが、東西の味はまったくもって異なるはずだ。

 そこで、どのあたりで東西の味に変化が生まれるのかを知るために、SUPER GT第7戦オートポリス3時間レースの取材道中の高速道路で調査を実行してみた。

 ルールとしてはなるべく、かけうどんを頼む。メニューにない場合は出汁に他の味が混ざらないような商品を選び、出汁と麺の違い感じ取る。もちろん完食はするが、スープは完飲しないことにする。

■予想外! 初っ端から関東&関西風のハイブリッドだ

足柄SA「足柄麵処」のかけうどん

 まずは東名高速道路を東京から乗って最初に登場する「港北PA」だ。神奈川県のPAということで関東風の濃いだし汁のうどんと想定していたが、すっきりとした色味の「きつねうどん」が出てきた。

 麺やおあげが乗っている状態の出汁は薄い茶色の関西風に見える。味もすっきりしており、朝7時でもぺろっと食べられる。麺も角が少し丸い感じで、喉越しで味わえる柔らかさだ。麺をすべて食したあとの出汁は少し黒目だが、すっきりとした味わいで、関東風の黒いうどんを想像していただけに、出鼻をくじかれた思いだ。

 次は同じく東名高速の「足柄SA」だ。住所的には静岡県に入ってしまうが、関東風のうどんが出てくるに違いないと思い寄ってみる。出てきた「かけうどん」は関東風の黒い出汁ではなく、少し薄い感じに見えるが、味は関東風の濃い味が楽しめる。麺も角がしっかり立った歯ごたえ十分のうどんだ。

 静岡県とはいえ神奈川の隣合わせの場所ということでがっつり関東風の味である意味安心できた。

■SA/PAは関西風の割合が高め!?

富士川SA「富士川食堂」のかけうどん

 続いて同じく東名高速の「富士川SA」だ。新東名高速は全国展開しているチェーン店が多く入っていることもあるため、昔ながらの飲食店があるだろうと想像し東名高速を進む

 電気の東日本の50hzと西日本の60hzの境目は富士川と言われており、多くの商品が富士川で東西の境目になっていることも少なくない。ということはうどんも境目になっているかもしれないと想定して寄ってみる。

 想像通り、メニュー表を見た瞬間に「薄い!」と心の声が表に出てしまった。かけうどん相当の物がなかったため、とり天うどんを食す。

 出汁は超すっきりとした透明に近い茶色だ。黒い出汁に慣れている関東人にとっては衝撃をうける薄さだが、飲んでみると昆布系の出汁の味がしっかり味わえ、出汁風味のしょっぱ味も感じられる。麺も透き通る白さだ。ここの麺は少し硬めに感じられたが、一般的に言われる関西風うどんを感じられるうどんだ。

 某カップうどんメーカーが東西で味を変えているのはこの富士川ではなく、岐阜県で東西が分かれているという。これは高速道路で検証したのではなく、東海道新幹線のこだまで全駅に下車して調べた結果だったものを参考にしている。詳細はメーカーの公式HPに載っているので、気になる方はチェックしていただきたい。

 さて富士川で東西の分かれ目を感じたため、一気に中部圏へ突入し、刈谷ハイウェイオアシスに寄ってみる。

 ここは上下線でそれぞれ飲食店やお土産屋さんがある店舗があるほかに、セントラルエリアにハイウェイオアシスという休憩施設がある。その中に、ザ・めしやという名古屋飯が食べられる食堂がある。かけうどんを見つけたので、早速食してみた。

 すると、付け合わせに天かすがついてきた。チェーン店ではあるが、サービスで天かすが付いてくるのは見たことがなかったので珍しく感じたのだった。

 肝心の出汁の見た目は関西系寄りだが、少し茶色味かかっている。味もあっさり目ではあるが少し醤油テイストで、関東と関西の中間といったところだろうか。

■地域でコンセプトがまったく違う新発見!!

宝塚北SA「めん処つる庵」のかけうどん

 次は京都・関西圏のSA/PAに寄りたいところだが、すでに4食完食しておりお腹がいっぱい。次が決めにくく悩みながら走っていると、新名神の宝塚SAに到着した。

 かけうどんを注文したらなんと衝撃! まさかのたぬきうどんが出てきた。揚げ玉が載っている場合、関東では「たぬきうどん」と呼ばれることが多いからである。

 調べてみると、たぬきうどんは関東と関西、さらに京都では定義が違う模様。関東では揚げ玉が載っているのがたぬきうどん、関西ではハイカラうどんと言うらしい。さらに京都では、油揚げを細切りにしたものをたぬきうどんと呼んでいるようだ。ちなみに油揚げが載ったきつねうどんは、どの地域でもきつねうどん共通の認識である。

 出汁は透明系かと思いきや、意外にも茶色い。関西風の出汁風味に加えて醤油の風味も感じられる。うどんの麺は柔らかく食べやすい。芯はしっかりしており、周りは少し柔らかめだった。揚げ玉の油が出汁に溶け出しており、少しコクが出てくるようにも感じられた。イメージしていた出汁風味&色薄めのうどんとかは違うのかもしれない。

 岡山県ではお腹がいっぱいすぎて食べられず、一気に広島県の宮島SAまで移動。中国地方を代表してもらうのは、宮島SAのきつねうどんだ。

 ここでは一気に薄いスープに様変わりしており、すっきり淡麗風味の色合いになった。昆布系の出汁が効いたスープである。富士川SA以来の関西風すっきりうどんに出会えた感じだ。麺は関東人からするとだいぶ柔らかく、きつねのお揚げは甘い煮付けで美味しかった。

 さて本州最後は、山口県下関の壇ノ浦PAに寄った。目の前は九州なので、西日本系なのか九州系なのかが気になるところである。

 出てきたかけうどんは出汁風味の関西系に近いものの、色味がしっかりしている。関東の濃口醤油、関西の薄口醤油とも違う味わいだ。麺は他SAのうどんと比べると少し細く丸みを帯びており、喉越しが感じられた。九州を前に、新食感のうどんに出会うことができた。

■九州でも新味に出会っちゃった!!

基山PA「つつじ庵」のかけうどん

 さて九州へ突入。選んだ場所は九州道の基山PAだ。注文したかけうどんはかなりすっきりした色合い。関東ではかつお節と濃口醤油、関西では昆布系の出汁に薄口醤油という組み合わせが定説だが、基山ではだいぶ魚を感じる味わいだ。麺は九州特有の柔らかさが前面に出ている。九州のうどんはコシがなく、ぬるぬると食べられる。これまた違った味わいが楽しめた。

 そんなわけで、港北・足柄・富士川・刈谷・宝塚北・宮島・壇ノ浦・基山の8カ所巡った。結果東西を分けたのは富士川SAで、それ以降は関西風の昆布系出汁テイストがベースになっているようだ。ぜひとも皆さんの舌で味わってほしい。

■ひと足先に九州ローカルチェーンを食す

九州のソウルフード「資さんうどん」のゴボ天うどん・ミニカツ丼セット

 おまけで、関東への進出が噂される九州うどんチェーン店の資さんうどんにも入ってみた。ここではゴボ天うどん・ミニカツ丼セット、おはぎ付きという定番メニューを頼んだが、こちらもすっきりな味わい。麺も柔らかめで、しかしゴボ天のしっかりとした歯ごたえと油で、うまく合わさっているのが分かる。

 やはり各地にある名物うどんは、素うどんにその地域特有の具材を合わせることで完成するのかもしれない。しかし1時間〜最長3時間の間隔で1食、1食しっかり食べるのはかなりシンドイ。運転だけでは消化しにくいので、無理のない範囲で食べ歩きを!!

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