千葉の架装メーカー・ウイングが国内初となる小型スワップボディ車のプロトタイプを開発。その特徴と、運用方法をレポートした。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
※2024年9月発売「フルロード」VOL54より
スワップボディ車ってどんなクルマ?
スワップボディ車は、トラックのシャシー部分と荷台部分を分離することができる特殊なトラックである。
分離した荷台部分には自立機能が備わり、セミトレーラのように事前に荷役作業を行なうことができることから、ドライバーの待機時間削減や車両の稼働率アップに寄与。けん引免許がなくても運転できるのも魅力で、ドライバー不足や労働時間問題が深刻化する中、大きな注目を集めている。
ただ、運転業務と荷役業務を分離するためには荷役作業専門のスタッフが不可欠。また、脱着には全長の約2倍のスペースが必要で、脱着作業にも高度なスキルが必要となるなど、本格的な普及に向けては、まだまだ課題も多い。
ちなみに現在普及しているスワップボディ車は大型総輪エアサスシャシーベースが主流。これは脱着時にエアサスの車高調整機能を使うためだが、エアサスを持たない中小型トラックベースのスワップボディ車にもニーズがあり、ウイングでは長年開発を続けてきたという。
今回開発した小型トラックベースのスワップボディ車のプロトタイプは、数年前に開発した中型トラックベースのスワップボディ車の技術を応用したもの。小型トラックをベースとするスワップボディ車は国内初とのことだ。
ウイングが開発した国内初の小型スワップボディ車プロトタイプ
日野デュトロの車両総重量6.5トン級ワイドシングルキャブ全低床ロングボディ車型(XZU710M-TQFRY)をベースとするプロトタイプは、シャシーフレームの上に新開発の脱着機構を擁するサブフレームを搭載。脱着は、前後2対の油圧シリンダーでサブフレームごと荷台を持ち上げ、シャシーを前進または後退させて行なう。
小型トラックの荷台は大型車、中型車に比べて重心がシビアなことから、重心が偏っているとバランスを崩しやすいそうで、開発では「いかに荷台を水平に持ち上げるか」という点に苦労したという。
とはいえ、どうしても偏荷重や路面の凸凹などが避けられない場合もある。そこで今回は、シャシーに安定性をアップするためのアウトリガーを搭載。空車時はアウトリガーなしでも持ち上げられるが、積載時は安全のため、アウトリガーを展開した状態で脱着を行なうよう、ユーザーにお願いしているという。
荷台は3方開アルミブロック製アオリを備える平ボディで、底部に自立用の支持脚を2対搭載。最大積載量は登録上は3500kgだが、スワップボディ車は荷台を積載物として扱うため、荷台重量約500kgを差し引いたものが正味の積載量になるそうだ。
なお、シャシーと荷台を固定するロック装置は、ボディ側ブラケットの穴に、シャシー側のピンを挿して固定する方式。完成当初、ピンの抜き差しは手作業で行なう方式だったが、ユーザーの要望を受けて、キャブ内のスイッチで操作する自動式に変更されている。
小型スワップボディ車を導入するマックス運輸の狙い
ウイングに小型スワップボディ車の開発を依頼したのが千葉のマックス運輸だ。同社は関東一円で大手ハウスメーカーの住宅資材の輸送を行なう運送会社で、合計80台のトラックを保有。小型トラックは倉庫から現場までの資材輸送を担当している。
小型スワップボディ車の導入背景には2024年問題があるそうで、輸送業務と荷役業務を分離できるスワップボディ車の導入により、積み込み時の待ち時間をなくし、稼働率アップを図る。オーダー台数は6台で、しばらくテストを行なったのち、増車を検討していく予定だ。
荷台仕様はもともと使っている小型トラック(平ボディ)と同等とし、シャシー1台に対し荷台2個を用意。片方が輸送している間にもう片方の荷役を行なうことで、待機時間削減や車両稼働率アップを図る。
脱着機構は「女性や高齢者など、誰でも簡単に操作できること」を重視したそうで、ロック装置を手動式から自動式に変更したのもそのため。今後のさらなる改良も検討しているという。
なお、同社が現在建設中の新しい物流センターは、小型スワップボディ車の荷台を交換やしたり、荷台を置いておくためのスペースが最初から設けられた「スワップボディ車を前提とする物流施設」になるそうだ。
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