トラックの新車販売が回復しつつある。日本自動車販売協会連合会(自販連)がこのほど発表した新車販売台数統計によると、2024年度上半期(4月~9月)のトラック新車販売が大中型トラック新車販売台数(輸入車含む)は前年同期比4.8%プラスの3万6479台で、2年連続の増加となった。また、統計をもとに本誌が集計したキャブオーバー型の小型トラックも同1.6%プラスの4万8512台で、同じく2年連続で増加した。日野プロフィアの倍増、いすゞエルフの独走などが今上半期にみられた特徴である。

文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/フルロード編集部、日野自動車、Stellantis

日野プロフィアが倍増

日野プロフィア。2023年2月から排気量8.9リッターのA09Cエンジン搭載車の出荷を再開した。完全復活しているわけではないが、今上半期ではクラス2位の座を占めるなど、日野車に対するユーザーの信任の厚さがうかがえた

 もっとも回復しつつあるとはいえ、台数規模そのものはコロナ禍前の2019年度上半期を大きく下回る。半導体不足によるシャシー生産不順の影響が、トラックの荷台部分を生産する車体メーカーおよび作業装置を生産する特装メーカーに残っており、新規登録車の出荷が遅れているためである。

 大中型トラックのうち、『積載量12トン超車』『トラクタ』を合算した台数は1万6993台で、同8.0%プラスとなった。これは、日野の大型トラック「プロフィア」A09Cエンジン搭載車の出荷再開が本格化(出荷自体は23年2月から)、昨年度上半期に対して倍増したことが大きい。

 台数規模はコロナ禍前には及ばないが、日野の本クラス販売シェアも前年同期の4位から2位へアップした。ユーザーがプロフィアを待ち望んでいたこともうかがえそうである。しかし、E13Cエンジン搭載車の劣化耐久試験が完了していないため、特にトラクタ市場への復帰にはまだ時間が掛かるとみられる。

 もう一つのボリュームゾーンである『積載量3~4トン車』は1万730台で、同2.5%プラスだった。やはり全体ではコロナ禍前を大きく下回るが、いすゞ単独では19年度の上半期を超える実績を達成した。

 半面、2強の一角である日野は、低馬力車(A05Cエンジン+HC-SCR搭載車)の出荷停止により半減が続いている。一部は高馬力車や競合他社モデルに代替しているとみられるが、戦列復帰を待つユーザーも少なくないだろう。日野によると、A05Cエンジン+HC-SCRについても劣化耐久試験を進めているとのことだった。

2018年~2024年の上半期(4~9月)の大中型トラック新車販売台数の推移をグラフ化。コロナ禍の半導体不足は、トラックメーカーではほぼ解消したが、生産不順の影響は上モノ(架装物)を供給する車体メーカー・特装メーカーにいまだ残っており、供給(新車登録)が遅れている状況である

コロナ禍前には届かずもエルフV字回復

いすゞエルフ。2023年3月に16年ぶりのフルモデルチェンジを実施。22年度は半導体不足で首位陥落となったが、23年度に復活、24年度上半期は順調な新車販売がみられた

 キャブオーバー小型トラックは、『積載量1~2トン普通貨物車』と『小型貨物車』から該当するブランドを、本誌が統計から拾って独自に集計した。こちらも事情は大中型トラックと同様で、その台数規模はコロナ禍前と比して少ないボリュームのままとなっている。

 特にトップメーカーのいすゞは、19年度上半期に対して、その実績値は1万台も少ない状況である。ただ、22年度を底(特殊な状況下とはいえ首位陥落も強いられた)にV字型の復活を果たしており、上半期シェアは38%という勢いだった。直近10年間では、19年度上半期の40.7%に次ぐ高シェアである。

 24年度上半期では、トヨタ(日野OEM)とマツダ(いすゞOEM)もこのセグメントで前年同期を上回っているが、日野、三菱ふそう、日産(いすゞOEM)などはマイナスとなった。

 全体的には、23年度下半期あたりから、いすゞ以外の小型貨物車(4ナンバー車。また4ナンバーシャシーベースの8ナンバー車を含む)で販売ペースが落ちている印象がある。いすゞの「エルフ」は、生産不順で納車が遅れていた従来型の登録が含まれている可能性があるのだが、昨年春に全面改良した7代目モデルの拡販キャンペーンなどの影響もあるかもしれない。

こちらはキャブオーバー小型トラックの上半期新車販売台数の推移。いすゞエルフがV字回復を達成した。もっとも19年度まで日野・トヨタ連合を単独で上回っていたものの、20年度以降は下回っており、完全復活したわけではないのも確か

大型スウェーデン車の対決と3倍増のデュカト

フィアット デュカト。サイズは全長5.4mまたは5.9m×全幅2.1m×全高2.5m。ハイエース・ワイドスーパーロングよりも大きいが、車両総重量3.5トン未満で普通免許でも運転できる、スタイリッシュなバンコン用ディーゼル・シャシーとして人気を集めている

 日本自動車輸入組合(JAIA)の統計から、24年度上半期の『輸入普通貨物車』の中から、トラック・商用車ブランドの動向をみてみると、ボルボトラックスは前年同期比0.8%増の266台と微増だったが、スカニアは同18.5%増の237台となり、ボルボとの差を29台にまで縮めた。

 ボルボ、スカニアは、ともにプレミアム大型トラックとして人気が高く、実利的な面でも高出力・大トルクのエンジンをラインナップ、国産車には設定のないセグメントをカバーしている点でも存在意義を高めている。今年度末にどのような展開をみせていくか要注目だろう。

 もう一つの気になる動きがフィアットの186台で、なんと前年同期の3倍超となっている。全量が「デュカト」というLCV(小型商用車)で、その荷室は、ユーロパレット(サイズは1200mm×800mm)をフォークリフトで積み降ろしできるよう設計されているなど、欧州流のセミボンネット型パネルバンである。

 もっとも日本でのデュカトは、商用ユースとしてではなく、バン・コンバージョン型キャンピングカーのベースシャシーとして売られており、実態としては乗用車だ。ある正規販売ディーラーによると、ディーゼル車かつ普通免許で運転可能、大きな居住空間を確保できるサイズ、そして商用車ゆずりの優れた架装性が関心を集めているという。日本では販路をなかなか掴めなかった欧州のLCVが、こういう形で注目されているのは興味深い。

 なお、インドネシアでダイハツが生産している輸入小型商用車(トヨタ タウンエース/マツダ ボンゴ/ダイハツ グランマックス)は現在、ワンボックスバンのみ販売中で、トラックモデルは出荷停止となっている。そのため、24年度上半期は3ブランド合計で3331台、同66.5%のマイナスとなった。

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