世の中には、言おうと思えば誰しも「かくあるべきだ!」と言えちゃうことって、たくさんあるように思います。

 ただ、上から目線でそう言っても、「でも、それって無理じゃね?」とか「本人たちが一番よくわかっているんじゃないの?」といった反論もあり、結局は「仕方ない」ということで世間の暗黙の了承を得ている事柄も数多くあると思います。

 ちょっとまどろっこしい言い方をしてしまいましたが、引越し作業のための路上駐車なんかがまさにそれですね。確かに邪魔は邪魔。だけど……。元引越し運送のドライバーのDKさん話を聞きました。

文/中堅トラックドライバーDKさん、写真/写真AC、フルロード編集部
*2024年9月発行トラックマガジン「フルロード」第54号より

引越し作業中の駐車問題

一般の住宅で積み降ろしを行なう引越しのトラック。作業時間も長く駐車場所に苦労することが多い

 トラックの駐車で苦労している件ですが、私はちょっと昔の話になりますが、引越し屋時代の話をします。

 大型トラックで苦労するのは待機、休憩のときの話だろうと思いますが、引越し屋の場合、使用するトラックはほとんどが2t車クラス。わずかに4t車がある程度ですが、ほかの悩みがあります。

 一般の住宅において積み降ろしを行なうため、作業中の駐車場所に苦労するのです。

 郊外の戸建て住宅街で、玄関前に駐車してもほかの交通の妨げにならないならば、さほど問題ありません。都内でも、大規模かつ新しいマンションには荷捌き用の駐車スペースが確保されている場合もあります。

 しかし、乗用車の対向さえ困難な道路に面した戸建てやアパートはいくらでもあるし、私有地内に駐車できるアパートや団地においても他の住民の通行を妨げざるを得ない事例もたくさんあります。

 商店街や幹線道路脇に駐車して、背中に白い目を感じつつ作業することもしばしばです。

やむにやまれない事情があります

 引越しの場合、一般住宅での荷物の積み降ろしになりますが、宅配便などに比べて圧倒的に時間がかかります。

 本来このような荷物の積み降ろしを公道上で行なう場合、警察署に届けて道路使用許可を得る必要があるはずです。しかし現状、そんな届けを出すことは1%もありません。

 それにはやはりコストがかかりますし、手間もかかります。カラーコーンの準備やガードマンの立哨が必要になる場合もあります。

 手前勝手ながら、トラックを玄関などの搬入口に1mでも近づけたいという欲もあります。わずか一歩の距離でも、そこを重たい荷物を持って100往復以上するのですから、仮に10m離れたら1kmも余計に歩かなくてはいけません。

 一点ものの家具の配送のように、近隣のコインパーキングなどから台車で運ぶなんて考えられません。 

ときにはクレームを入れられ、駐車監視員から切符を切られることも……

 特に都内は駐車監視員に泣かされることが多々あります。青山通り沿いの10階建てのマンションで、作業員が2人。駐車禁止を気にして、ひとりは常にトラックが見える位置にいましたが、冷蔵庫を搬入するときだけ手を借りたら、そのわずかな時間におフダを頂戴したこともあります。

 前述したとおりトラックは比較的小さいですから、休憩、待機の際には停めやすいと思われるかもしれません。しかしそれもそうとは言えません。

 だいたい引越し屋というのは看板車がほとんどです。一般の方々の認知を上げるためにコマーシャルをバンバン打っているし、トラックは派手なデザインが多く、ご丁寧にフリーダイヤルも書いてあります。

 小さいトラックでも一般車の横に停めたりすれば、すぐにクレームを頂戴します。

 そのような事情で、引越し車両の駐車、あるいは引越し作業においては、周囲の皆々様のご理解ご協力があって初めて成り立つものです。

 ご迷惑は重々承知ですが、今後も近所で引越し作業を見かけました際は、何とぞ暖かく見守って頂きたく伏してお願い申し上げます。

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