「つくば」から成田空港へ。都心からに比べれば全然近そうだし、それなら羽田空港みたいに普通の路線バスだけで行けるんじゃね? そんな楽観的な期待を抱いて現地へ行ってみると……
文・写真:中山修一
(つくば→成田空港・路線バスチャレンジの写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)
■前へ前へと進みたい
その日は茨城県の「つくば」に宿を取っていた。2日後の朝に成田空港発の国際線に乗る関係で、つくば泊の翌日には空港近くまで前乗りしておく必要があった。
問題は成田空港までのアクセス手段。現地に着くまで、つくば〜成田空港なら近そうだし、TXつくば駅前のバスターミナルから路線バスでも出ていそうなイメージを何となく抱いていた。
近そうと言っても直線距離で42km離れていると気付いたのは、ずっと後になってからの話。ともあれ、つくば→成田空港くらいなら検索アプリで一発でしょ? そう楽観視しきってアプリをいじると……
……その楽観視は0.3秒で崩れ去ることになった。まずは電車を乗り継いで行く方法であるが、主要乗り換え地点が東松戸、新鎌ヶ谷、船橋ほか、都心方面に40km以上戻されてしまう。
都心の方から来たので、少々の重複区間は有っても良いけれど、さすがに40kmも逆戻りは何だかロスが酷すぎる気がしてしょうがないわけで、そうなると電車は対象外。
高速バスはどうかと言えば、こちらは確かにつくば〜成田空港間の直通便が出ている。ただし予約制なのと、出発したい時間に対してバスのダイヤが合わなかったため、どうしても他に方法がなさそうな時に切る、最後のカード役を担ってもらうことにした。
■路線バスだけで行くぞ!
残ったのは下道のみを走る一般路線バスだ。その乗り物に注目した時点で、高速バスや電車とは比べものにならないほど、ますます行ける確率が下がるのは、大雨の日に屋根全開で爆走していくオープンカーを見るよりも明らか。
案の定、つくば発で成田のほうに直で顔を向けている路線バスは全くナシ。それでもまだ可能性はゼロじゃないぜ、こうなったら俺は路線バスだけで行ってやるぞ!
宿のチェックイン〜その辺に酒を飲みに出かけるまでの2時間くらい、マップ+時刻表との睨み合いを続けた結果、ついに1本の道筋が光った。
■駅から駅へと渡り歩く
翌日、TXつくば駅前の「つくばセンター」バスターミナルで最初に利用するのは、JR常磐線の土浦駅まで行く、関東鉄道が運行する路線だ。
11時ちょっと前の便に乗車して、元京成バスの中型ロング車・2004年式の日野レインボーHRに30分くらい揺られると、土浦駅のバスターミナルに着いた。運賃は570円。
見出したルートでは、成田空港へ向かうにはこの土浦駅が重要な経由地になる。次のバスまで40分ほどの待ち時間。周辺散策でもして時間を潰したいところであったが、なにしろ9月の炎天下、待機(避難)場所を探すのにちょっと苦労した。
続いて登場するのがJRバス関東の路線。土浦から江戸崎という所まで行く「霞ヶ浦線」が通っており、これに乗車する。平日のお昼時ながら、席がまんべんなく埋まるくらいの利用があった。
車両は大型路線車のいすゞエルガ。2005年式だそうで、エルガとしては割と初期に作られた部類に入る。バスが駅前を出発すると、だんだん住宅密集地を離れて郊外感が出てくる。
路線名にあるよう霞ヶ浦の方を通ることは通るものの、湖畔からは少し離れていて、あまり湖は見えない。ちょっと距離があり、終点の江戸崎まで50分かかる。運賃は850円。
■そりゃあ直に行けないハズだわ
江戸崎に着くと、10分ほどの待ちを挟んでまた別のバスに乗り換える。ここから利用するのは桜東バスの「江戸崎・佐原線」。路線名の通り、JR成田線の佐原駅まで行ってくれる。
佐原までコマを進めると成田を通り越してしまうため、かなり大回りしていることになる。それもそのはず、単純ながらも超重要な“あの存在”を忘れていた。
つくばがあるのは茨城県で、成田空港は千葉県。その間を隔てるのが利根川。距離が近そうに思えても県境という見えない壁が聳え立つ限り、直で行く路線バスが全然無くたって不思議じゃない。
その中で江戸崎・佐原線はそのまま利根川を渡ってくれる希少で頼もしい存在。当日は元川崎鶴見臨港バスの中型路線車、いすゞエルガミオ(2004〜07年のタイプ)が充当されていた。
■最後に意外な落とし穴
佐原駅までの所要時間は約1時間で、運賃は560円。成田線の駅ということで、ここから電車に乗り換えればゴールできる。とはいえせっかくバスで来たのだし、最後までバスで行きたい。
そんなヨコシマな考えを汲み取っているかの如く、佐原→京成成田駅行きというミラクルな「吉岡線」を千葉交通が運行している。しかも20分くらいの待ち時間と、ずいぶん都合よく繋がるものだ。
中型路線車の2018年式日野レインボーに乗って1時間弱で、停留所の配置が独特な京成成田駅前に到着。運賃は590円。ここまで来ればもう余裕でしょ? そう思ったところ意外な落とし穴が。
成田駅と成田空港を直で結ぶバス……沢山ありそうで実は全然ない。さてどうするか、時間的に1つしか選択肢がなかったので、一旦イオンモール成田へのアクセスバスで終点まで行く。運賃は220円。車種は2013年式の日野レインボーIIであった。
イオンモール成田〜成田空港間にはシャトルバスの設定があり、あとはそれに乗れば、と行きたいところながら、ここにも罠が潜み、2024年9月現在シャトルバスは全便が運休しているので、頼ると最後の最後に詰んでしまう。
他には唯一、イオンモールを経由して成田空港第2ターミナルに立ち寄る、千葉交通の路線バス「横芝光号成田線」があり、本数はあまり多くないものの、見事20分くらいの待ちで繋がってくれた。
これが本当に最後のバス、やって来たのは2017年式の日野レインボー。約20分で見慣れた空港第2ターミナルのバス乗り場に滑り込んだ。運賃は270円。いや着いた着いた、なにやら凄い達成感。
こうして、つくば→成田空港・路線バスチャレンジは成功、ちゃんと来られる、という結果が出た!! まぁ高速バスより運賃が高ぇとか、所要時間とかについては考えるほうが野暮ってものかもねぇ5時間半ゴニョゴニョ……。
ぜひお試しを、楽しいぞぉ〜。
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