令和5年度(2023年4月~2024年3月)における普通トラック(積載量3t~12t超クラス)の新車販売台数は6万8531台で、前年度比22.7%増と大きく伸びたことがわかった。コロナ禍前の実績に対しては、2~3割も少ないレベルだが、供給の正常化で市場は回復に向かっているものとみられる。

文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部

半導体不足解消と日野大型の販売再開

トラック新車販売は上向くもコロナ禍前のレベルには回復していない(写真は本文と関係ありません)

 日本自動車販売協会連合会(自販連)の新車販売台数統計から、本誌が積載系トラックを抽出・集計した。6万8531台のうち、積載量12t超車とトラクタ(トレーラ牽引用)を合わせた大型クラスは3万3848台(前年度比38.9%増)、中型クラスの量販ゾーンとなる「積載量3~4t」は1万8038台(同10.3%増)だった。

 大型クラスで4割近い増加となっているのは、半導体不足の解消によってメーカー各社の生産状況が回復したことと、年度上期から日野の大型トラック・プロフィアの出荷が再開したことが理由とみられる。ただし出荷しているのは排気量8.9リッター車のみで、トラクタ車型の主力となる13リッター車は、供給停止が続いている。その点からも、分母となる前年度実績の小ささがわかるが、正常な状態へ戻りつつあるのは確かだ。

 大型クラスの実績値そのものは、依然としてコロナ禍前を10~15%ほど下回るレベルで、市場が本復したとはいいがたい。シェアはいすゞが35%、三菱ふそうが24%、UDトラックスが23%、日野が17%。残る3%は輸入車だが、日本自動車輸入組合の統計によるとボルボ、スカニアとも前年度実績を上回っており、特にスカニアは日本導入以来の過去最高(412台)を記録した。

コロナ禍前に対して実績は半減中

 積載量3~4t車も対前年度でプラスとなっているものの、こちらの実績値は、コロナ禍前に対してほぼ半減となっている。俗に「4トン車」と呼ばれるボリュームゾーンの一つだけに、トラック全需への影響も大きい。シェアはいすゞが63%、日野が29%、UDトラックスが5%、三菱ふそうが3%。

 この市場はもともと、いすゞと日野の二強体制である。そして、ここでも日野の中型トラック・レンジャーの半数超を占めてきた低馬力モデルの出荷停止が続いており、需要に対して供給不足となっている可能性がある。ただ、日野だけでいえば、このクラスの減少幅は2割弱に留まっているので、出荷可能な高馬力モデルがかなりカバーしてきた様子もうかがえる。

 なお、積載量3~4t車では最下位の三菱ふそうだが、積載量7~8tの中型増トン車(運転に大型免許が必要となる中型トラック)では圧倒的なシェアをもっており、積載量3~8tまで範囲を広げた場合はシェア19%で3位となる。

小型クラスは微増

 大型・中型とは別に集計される小型クラス(自販連統計から本誌が積載系ブランドを集計)は、9万562台(同0.4%増)で微増にとどまった。コロナ禍前は12~13万台ほどのボリュームだったので、まだ2~3割も少ないといえる。

 シェアはいすゞ(エルフ)が36%、日野(デュトロ)が23%、三菱ふそう(キャンター)が22%、トヨタ(ダイナ)が17%、残りがその他となる。令和5年度では、いすゞエルフと三菱ふそうキャンターがそれぞれシェアアップしている。

期待される正常化はいつ?

 2021年から2023年にかけての新車トラック市場は、コロナ禍(による半導体不足)と認証不正問題に伴って、トラックメーカー各社からの新車供給が滞る異常事態に陥った。その結果、フリートなどの大口トラックユーザーでは、保有車の代替計画や新規導入計画に大きな狂いが生じている。そのため需要者側では当面、車両調達の修正と、導入・代替計画の正常化を進めていくとみられる。

 しかし、ウクライナや中東での戦禍によるエネルギー資源と物価の高騰、さらに円安が続く為替相場といった状況が、国内の各産業と個人消費に少なからず影響を及ぼしているのも事実で、これが将来のトラック需要に連鎖する懸念もある。

 したがって、今後の新車需要には予断の許せないところもあるのだが、本来であれば堅調かつ大きな新車代替需要が存在しているはずで、新車需要がコロナ禍前のレベルまで挽回し、さらに弾みがつくことを期待したい。

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