クルマと道路は切っても切り離せないもの。交通ジャーナリストの清水草一が、毎回、道路についてわかりやすく解説する当コーナー。今回は、慢性的な渋滞に悩まされる東名高速神奈川区間の新たな展開と課題について考察する!
文:清水草一/写真:フォッケウルフ/出典:NEXCO東日本
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■付加車線のさらなる追加で解消を目指す東名渋滞
東名高速道路・横浜町田―海老名JCT間の渋滞の悪化(上下線とも)は、利用者なら誰でも感じているはずだ。
主な原因は、圏央道沿道の物流施設の増加や、首都高横浜北西線の開通によって、東名の交通量が増加していることにある。
東名・横浜町田―海老名JCT間の交通量は、コロナ前は12万台強/日程度だったが、現在は14万台/日になっている。横浜北西線の開通(2020年3月)後、並行する保土ヶ谷バイパスの渋滞は減少しているので、「保土ヶ谷バイパスの渋滞が東名に移った」とも言える。
2021年7月、大和トンネル付近の付加車線が一部運用を開始したが、上り線の渋滞は、先頭が綾瀬スマートインター付近に移動しただけで、わずかな効果しか見られなかった(下り線は効果ほぼゼロ)。
こういった状況に対して国交省は、今年3月の会合でようやく「上り線の綾瀬スマートインター付近で顕在化している渋滞を解消するために、綾瀬スマートインター付近と大和トンネルを含む西側の運用開始区間の間に付加車線(約1.3km)の設置が必要」と結論付けた。
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■工事の効果はいかほどか?
それに対して当コラムでは、「8年前の拡幅決定時点で予想がついたはずの結末であり、これまでいったい何をやってきたのか」と批判したが、今からでも追加の拡幅を実施したほうがいいことは言うまでもない。
この1.3kmの追加区間は、8年前から工事中(未完成)の区間とともに、2024年11月9日から2029年3月下旬までの約4年半で工事を行うことが発表された。現場を走ると、すでにその準備工事が始まっているのが確認できる。
近年、人手不足や資材の高騰により、あらゆる建設工事が予定より遅延するのが当たり前になっている。順調に行ってもまだ4年半先だが、予定通りに行くことはまずないので、最低1~2年は遅れると考えておいたほうがいいだろう。
では、これが完成すれば、東名上り線の渋滞は解消されるのか?
私の予想では、完成後は、渋滞の先頭が、現在の綾瀬スマートインター付近から、大和トンネルの約1.5km先(東京寄り)の車線減少ポイントに移動する。渋滞量は現在より減少(3割程度?)するものの、かなりの規模で残るだろう。
下り線に関しては、ひどい渋滞の先頭は従来の大和トンネル付近ではなく、横浜町田インターの合流地点に移動しているので、大和トンネル付近が広がっても、大きな効果は望めない。
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■進む一極集中に対して光明は見えたのか?
「冗談じゃない! いったいいつまで渋滞させとくんだ!」
利用者なら誰でもそう叫びたくなるが、完全解消は極めて難しい。
付加車線がさらに増設され、横浜町田―海老名JCT間が完全8車線化されれば、下り線の渋滞は大幅に緩和されるが、上り線の渋滞は、先頭が港北PA付近のサグに移動して残る。すでに毎朝、ここを先頭にした渋滞が数km発生しているが、今度は「港北PA付近」が東名上り渋滞のメッカになる。まさにいたちごっこである。
渋滞の根本原因は、東名の交通量が多すぎることなので、それを減らすか、時間帯による交通量の片寄りを劇的に平準化するしかないが、減らすのは不可能。平準化も、トラックドライバーの過重労働問題があり、これ以上深夜に移行させるのは難しい。
日本は人口が減少しているが、東京都は微増傾向が続いていて、ますます一極集中が進んでいる。渋滞の一極集中も進むのが自然なのである。
唯一の希望は、圏央道南側区間(藤沢-釜利谷JCT間)の開通だ。ここが開通すれば、首都高湾岸線へ抜ける東名のバイパスになりうるが、シールドトンネル工事の難航により、2年前に「2025年度の開通目標実現は困難」と発表され、その後開通目標時期は示されていない。おそらくだが、早くても6~7年後だろう。
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