モリゾウチャレンジカップ第2戦が4月12~14日に全日本ラリー選手権「ツール・ド・九州2024in唐津」で開催され、山田啓介選手が連勝を飾った。20歳から30歳までの若武者が未来の勝田貴元選手を目指してしのぎを削るモリゾウチャレンジカップ。いつの日かWRCの舞台へ! 彼らの熱い思いに耳を傾けてみた。

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■いきなり全日本でドライバー参戦もOKがモリゾウチャレンジカップ

勝田貴元選手に憧れるWRC戦士を目指す若武者たちの戦いだ

 モリゾウチャレンジカップの大きな特徴は、成績優秀者にWRCトヨタチームの本拠地があるフィンランドに渡ってトレーニングを受ける権利が与えられること。つまり、WRCドライバーになるための最初のステップが用意されるのだ。

 これまでモータースポーツの育成は、どちらかと言えばオープンではなかった。近親者にモータースポーツの理解者がいなければ、たとえ「ダイヤモンドの原石」であっても磨かれることなく、世に出ることもなかった。

 モリゾウチャレンジカップは、GRヤリスのワンメイクとし、参戦コストを抑えるために改造範囲を狭めた独自のレギュレーションで行われる。全日本ラリー選手権のJN2クラスのサブカテゴリーとすることで、トップドライバーたちから刺激を受け、技術を習得することが可能だ。

 開幕時原則25歳以下(一定の条件を満たした場合は29歳まで受け入れ)であれば、誰でも参加可能だ。つまり「我こそはWRCにドライバーにならん!」という若武者たちの戦いなのだ。

 そんなドライバーのひとりに稲葉摩人選手がいる。静岡県出身の20歳で、ラリーチャレンジでのコ・ドラの経験はあるが、ドライバーとして参戦するのは唐津が初めてという猛者だ。いきなりGRヤリスで全日本ラリー選手権に出場することができるところがモリゾウチャレンジカップの魅力だ。

「ラリーに集中したくて、大学を1年間休学することにしました。夢中になれることが見つかったというか、とにかくラリーが楽しくて、ずっと走っていたいです」と明るく話す稲葉選手。チーム監督はトップカテゴリーのJN1をシュコダ・ファビアR5で優勝した新井大輝選手だ。

「大学は卒業しろよと大輝さんから言われています」と話しながら、新井大輝選手のペースノートとレッキ時の映像を見比べながら、イメージを頭に叩き込んでいく。初日はコ・ドライバーからタイムを教えず、運転に集中しろという新井監督の指示もよかったのか、初戦は8台出場中6位で見事完走。

「クルマやタイヤのことが、少しわかってますます楽しくなってきました」と目を輝かせていた。

■初日のリードを保ち、山田啓介選手が開幕から2連勝

初日のリードを守り切り、結果にこだわるクレバーな走りを見せた山田啓介選手(左)とコ・ドラの藤井俊樹選手(右)

 優勝は山田啓介選手で開幕から2連勝だ。30歳になる山田選手はモリゾウチャレンジカップをWRCのドライバーになる最後のチャンスととらえ、「勝ちにこだわっていきたい」と話す。

「地方戦から始め、全日本ラリーに出場することが夢でしたが、2022年ここ唐津を86(JN3)で走り優勝してから、上を目指したいという気持ちが強くなりました」と語る。

「初日のリードがあり、勝つことができましたが、周りがどんどん速くなっているのですごく刺激を受けています。自分もまだまだ伸びていけるような気持にしてくれます」とモリゾウチャレンジカップの意義を語ってくれた。

 どんどん速くなっているドライバーのひとりが2023フォーミュラ・ドリフト・ジャパンのチャンピオンKANTA選手。「勝田範彦選手の車載映像をひたすら見まくりました」と準備してきたことを教えてくれた。その効果もあって見るからに速くなっていた。

「初戦よりも内容はいいと思いますが、苔のあるステージでタイムを落としてしまったので、いろいろな路面に適応できるようになることが、これからの課題です。でも少し自信になりましたし、ラリーが楽しくなってきました」と手応えをつかんだようだ。

現在8チームが参戦するモリゾウチャレンジカップ。第4戦のモントレー(群馬)からは新たに1チーム加わるなど予想以上に盛り上がってきた

 そして、モリゾウチャレンジカップの優勝候補筆頭に挙げられていた大竹直生選手は2日目追い上げたが2位まで。WRCチャレンジプログラム2期生として、フィンランドでトレーニングを受けてきた大竹選手にとって、モリゾウチャレンジカップはリベンジの戦い。

 勝って当たり前のプレッシャーは、やはりあるのだろう。初日のフィーリングが悪く、山田選手の逃げ切りを許してしまったが、「次戦は必ず勝ちます!」と力強く宣言して見せた。

 第2戦を終わってポイントランキングは1位山田啓介選手(49ポイント)2位貝原聖也選手(29ポイント)3位KANTA選手(25ポイント)3位大竹直生選手(25ポイント)となった。

 第3戦は4月26~28日、高速コーナーが特徴の久万高原ラリー(愛媛県)だ。大竹選手の逆襲なるか? 山田選手が突き放すか? KANTA選手ほか急激な伸びを見せるヤングドライバーの台頭はあるのか? 未来のWRCドライバーを目指す、若武者たちの戦いから目が離せない。

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