ネーションズリーグ(5月16日~)を前にバレーボール女子日本代表の古賀紗理那(27)、石川真佑(23)、関菜々巳(24)、宮部藍梨(25)、山田二千華(24)、小島満菜美(29)が集結。元日本代表で2012年ロンドン五輪銅メダリストの木村沙織(37)との座談会で、パリ五輪の出場権を獲得するための秘策“マッハとジェット”についてや、選手の意外な素顔について語りあった。

高速バックアタック「マッハ」と「ジェット」

石井大裕TBSアナウンサー:ネーションズリーグはパリ五輪出場をかけた最後の戦いです。そのパリへの切符をつかむためのキーワードがあるんですよね、木村さん。

木村沙織:はい。「マッハ」と「ジェット」です。

「マッハ」と「ジェット」とは、トスから1秒以内にスパイクを打つ高速バックアタックのこと。「マッハ」はセッターから見て、前方にトスを上げるバックアタックで、「ジェット」はセッターが後ろにトスを上げるバックアタックのこと。トスからスパイクまでの時間はなんと0秒70で、中国の1秒05と比べるとその差は約0.35秒だ。このわずかな差を生むスピードがパリへの秘策となる。

古賀紗理那:他の国に比べて速いテンポで打つのが強み。バックアタックでしっかり得点を取れるっていうのが、今、日本の生命線かなと思ってます。

石井:石川選手も代表で「マッハ」と「ジェット」をずっとやられてきて、世界に通用してるなという手応えを感じられていますか?

石川真佑:やっぱり試合の中で使っていくことで、相手のブロックもどこに飛ぼうかというふうに迷いも出てくると思います。今年はミドルとのコンビでしっかり使うっていうのも課題としてあるので、そこをやっていくことで、相手のブロックもしっかり振れて、前衛のサイドも楽に決めることはできるんじゃないかなと、(スパイクを)打っていて思います。

古賀:去年は速さを特に意識した「マッハ」と「ジェット」だったんですけど、今年は速さだけじゃなくて、しっかり高さも出して、スパイカーがコースを切れるようにしていこうという話をしています。

石井:宮部さん、手応えはどうですか?

宮部藍梨:私達ミドルとしてはBパスの時に自分達がクイックに入って、できるだけ多いスパイカーの人数を相手のミドルブロッカーであったりとか、ブロッカーに見せることでバックアタックが通りやすくなるっていうのはすごく意識しながらやっている。苦しい時でもトスが上がってくる上がってこない関係なく、攻撃には参加するっていうのを意識しながらしてます。

石井:相当これはきついんじゃないですか?

宮部:きつい、きついですね。

山田二千華:「マッハ」と「ジェット」は本当に速くなってるので、まずミドルブロッカーがどこに入るかというのを先に見せないといけないですし、そこでやっぱミドルとバックアタックのセット感ができたら、相手のブロックを1枚つかせないとかそういうブロックの枚数を減らすってことができるので、そういった部分では本当に一人一人がその攻撃に対しての責任感を持って繋がった攻撃ができているのかなと思います。

石井:ミドルブロッカーもそうですし、アタックする選手みんなが同じ思いでいないとできないということですが、この全員攻撃はポイントになってくるということですよね。

古賀:そうですね。やはり日本の攻撃は速いので、その速さをしっかり統一するっていうのがすごく大切。クイックと一緒にバックも動くとか、サイドも一緒のテンポで入るとか。少しでもずれたら攻撃が成立しないことが多いので、他の国よりもさらに緻密な精度でプレーしないと苦しいんですけど、でもそれができないと日本は勝てないので、更にみんなで精度を高めてやりたいなと思ってます。

石井:このバックアタックというのが決まったら、どの世界の強豪にも勝っていける。そんな感覚はあるんですか?

石川:そうですね、自分たちがしっかり流れをつかめる試合って、バックローも結構打ってる本数が多い試合だと思うので、攻撃枚数が増えることはすごく大きいかなと思います。

石井:それもこれもセッターの関さんのプレーに影響力があるわけですもんね。

関菜々巳:その駆け引きとかいうのを楽しんでいきたいなと思ってます。

石川真佑のサーブは「ダントツ」

昨年、兄・祐希(28)も戦っているイタリア・セリエAに挑んだ石川は、世界最高峰のリーグで1年目からチーム2位の341得点をマーク。武器はサーブで代表のチームメイトからも「ダントツ」との声があがる。自身は2022年9月の世界バレーでの1本が印象に残っているといい、エースの古賀がケガで欠場する中、競合ブラジルとの試合開始直後に放ったサービスエースを回顧する。

石川:この試合で初めてスタートから入らせてもらって、すごい緊張もあった中でのサーブ1本目で。自分の武器であるサーブなので、自信を持って打とうと試合に臨んで、1本目からサービスエースを取れたというのは、すごく自分にとって印象に残っている試合でした。

木村:どの選手もサーブが武器でいいんですけど、やっぱりその中でもダントツ。石川選手はサーブを本当に武器として、点数をちゃんと取れるサーブを持っているので、ネーションズリーグも期待しています。

宮部:ここで一番点数が欲しいっていう、まず1点目のところで決め切るというのは凄いなって思いますね。

石井:関さん、セッターとして石川選手っていうのはどんな選手?

関:前のチームでも一緒にやっていたので、すごく長い間やってきて頼りにしてますし、やっぱりここ一番の時に頼めるトスを託せる選手だなと思います。

司令塔・関菜々巳のタブレットには驚きの秘密

石井:古賀さん、やはり関選手は頼りになる司令塔?

古賀:練習も早く来ますし、みんなとコミュニケーションを取っているので、そういうところで信頼関係とか頑張って作ろうとしてくれてるのがすごい頼もしいです。

石井:石川さんから見た関選手は?

石川:コミュニケーションもそうなんですけど、どういうトスが欲しいとか、自分からアタッカーに問いかけたりとか、そういった会話もすごい見られますし、私自身も自分に持ってきて欲しいトスというのもすごく要求しやすい。そういったところではセッターとしてコミュニケーションは大事なのですごくいいなって思ってます。

関:コミュニケーションはすごく大事だと思っているし、周りからもやっぱり言われるので、そこは自分自身意識してやるようにはしてます。

石井:山田さんも積極的にコミュニケーションは?

山田:やっぱりミドルブロッカーとセッターのコンビって、本当に結構繊細でコミュニケーションを密に取ってやっていかないと難しいものなので、本当に色々な情報を交換しながらいいコンビを作れているかなと思います。

石井:小島さんはどうですか?関選手との関係。

小島満菜美:相手へのトスをあげていると、全部が全部、相手のブロックが見えるわけじゃないと思うので。そういった意味で私の視点から見えるところを関選手に話したりとか、「どうなってますか?」とか聞いてくれるので、そこはすごく周りの人の意見も聞こうとして、よりいいトスワークをしようとしてくれてるんだなということを感じます。

石井:宮部選手も関選手とももちろんコミュニケーションを取りながらやるわけですが、同世代でもありますし、どのように感じられていますか?

宮部:「藍梨さん!」って来て、「なんやろ?コンビの話やろうな」って思ったら、iPadを出して一つ一つのクリップを作って、「これのここがこうで・・・」って映像まで見せてやってくれる。もうコミュニケーションもそうだし、すごい勉強してるなって、すごいなっていつも感心させられます。

関:やっぱり言葉だけじゃ伝えにくいときがあるので。そのまま映像を持って行った方が楽なので、「こういうときこうできません?とかどうですか?」とか持って行ったりするときもあります。

木村:本当に勉強熱心なので、そういうところでスパイカーがもっとカバーしようっていう気持ちにもなるし、セッターって本当にすごいんですよね。スパイカーは何人もいるけど、その中でこうやってクセ強なスパイカーがたくさんいて(笑)1本1本みんな好きなトスが違うし、入ってくるタイミングも違うし、本当にセッターは私もいつも尊敬しかないです。

宮部藍梨は“意外と読書家”

身長182センチという高さを生かしたスパイクと長いリーチを生かしたワールドクラスのブロックが持ち味のミドルブロッカー・宮部は、所属チームが同じ井上愛里沙(29)から“読書家”であると意外な素顔が明かされた。

宮部:私結構本を読む方で。多分読むタイプには見られないっていうのは私もわかります(笑)そうじゃないですか?

石井:めちゃくちゃ小島さんがうなずいてましたけど(笑)

小島:今回、合宿のときに一緒の部屋だったんですよ。部屋で本を読んでるんですよ(笑)びっくりしちゃって。いつも結構笑わせてきたりとかしてくれて明るい感じなんですけど、本は真剣に読んでて。「もう少しでこの本を読み終わるんです」とか言って話してくれたので。「あぁ本読むんだ」って思いながら。

石井:そうなんですね。石川選手から見ても、宮部さんは読書家だなと感じるシーンはあるんですか?

石川:移動の時とか読んでるところを見て、藍梨さんも結構本を読むんだなっていうのは思いました。

石井:何を読んでるんだろうとか古賀さん、ちょっと気になったりするんですか?

古賀:いや、私は本読んでるのはすみません、見たことない。あんまり気にして見てなかったです。気になる、何読んでるの?

宮部:今ちょうど読み終えたのが村上春樹さんの本。上下巻に分かれているのを読み終わって、新しいのも半分くらいまで来てますね。

木村:リラックスじゃないけど、違う本の世界に行くみたいな感じ?

宮部:一旦空き時間とか移動のときはバレーボールばかり考えるんじゃなくて、違うことで1回頭をいっぱいにして。いい意味でバレーボールから離れるっていうのが好きで、本を読んでいます。

初戦の世界ランク1位・トルコ戦へ「結局最後は日本が勝ったねっていうチームに」

石井:ネーションズリーグ初戦は世界ランク1位のトルコ。重要ですよね。

宮部:連戦が続く試合なので、どういう風に大会のまず1試合目を自分たちでスタートさせるかっていうのが、そこはすごく大切になってくると思う。全員で一気に勝ちを取りに行くぞっていう気持ちは忘れずにガッと固まって試合に臨めたらいいのかなと思っています。

古賀:トルコに勝つとトルコは世界ランク1位なので、ポイントもたくさん稼げる。今年のネーションズリーグはポイントにこだわってやっていかないと(パリ五輪の)出場権を取れないので、初戦にしっかりピーキング持って行って、ポイントを稼ぎたいなと思います。

石川:自分たちにとってすごいプレッシャーもある試合だと思うんですけど、そういった中で自分たちが去年のオリンピック予選を終えてから、それぞれが成長をしていくためにいろいろやってきていると思うので、そういったものを全員がいいものを出し合いながら。初戦でしっかり良いスタートを切ることで、また次の試合にもつながってくると思うので、本当に1試合目にまずはいい準備をしていきたいなと思います。

関:眞鍋さん(政義監督)からも、「5月16日スタートダッシュ」ということはすごく言われているので、そこにクオリティーの高いバレーをできるように、ここから先、もっと詰めていきたいなと思ってます。

山田:試合数がすごくある中で、1試合1試合、自分たちが勝って自信をつけたりだったり、自分たちのプレースタイル、どう勝っていくっていうのは、一番実現しやすい大会だと思うので、それを1戦1戦全員が自信を持って戦い抜けたらいいかなと思います。

石井:小島さんはディフェンスっていう部分では要になってくるわけですけど、どういった思いでこの試合に初戦のトルコ戦に入っていきたいと思いますか?

小島:点数は取れないポジションではあるんですけど、だからこそ点数が決まるまで粘り続けるところがすごく大事だと思います。自分たちのやるべきことの精度を上げて、自分たちのことに集中することが大事かなというふうに思っているので、それでどれだけトルコと戦えるか、勝てるのかっていうことを意識してやっていきたいなというふうに思います。

石井:木村さんはロンドン五輪でメダルを取りましたけれど、いろんなそういう壁を越えてきた木村さんから見て、選手たちにどんなことを伝えたいと思っていらっしゃいますか?

木村:もう何にもないです。いろいろこういうこともあったなとか、自分の中で用意はしていたけど、みんなの言葉とか目の強さとか、今日話を聞いて何も言うことないなって。もうただただ楽しみだなって思いました。

石井:最後にキャプテン古賀選手、強い決意表明を聞かせてもらってもいいですか?

古賀:はい。今年のネーションズリーグは、これまで以上にプレッシャーがかかると思うんですけど、みんなが言ったように1試合1試合で絶対成長できると思うので、自信を1試合1試合つけながら、結局最後は日本が勝ったねっていうチームになるように、みんなで緻密に精度高く、クオリティ高くやっていきたいなと思います。

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