京都市でバトントワリングチームの10代の男子選手にわいせつな行為をした疑いで元指導者の男が逮捕された事件。関係者が取材に応じ、他にも被害者がいる疑いがあると証言しました。
【記者リポート】「1日午前9時過ぎです。小城容疑者の身柄が検察に送られます」
関西を中心に活動し世界的にも有名なバトントワリングチームの元指導者、小城桂馬容疑者(40)。小城容疑者は去年2月、当時住んでいた京都市内の自宅で、教え子だった高校3年生の男子選手(当時18)の下半身を触るなどのわいせつな行為をした疑いが持たれています。
男子選手を数年間指導していたという小城容疑者。LINEで「泊まりに来い」などと自宅に来るよう複数回連絡していて、男子選手は当初は断ったものの、しつこく誘われたため自宅に行ったところ被害に遭ったということです。
■容疑者は「“神様的”な扱い。だから何も言えない」
関西テレビは、小城容疑者を知る関係者に話を聞くことができました。
【小城容疑者を知る関係者】「(小城容疑者は)世界でも有名な選手で、指導や振付をした団体は全国でも優秀な成績。どこか“神様的”な扱い。だから何も言えないし、被害者の子も断れないのはリンクしてくる」
関西テレビが入手した「日本バトン協会」が設置した外部調査委員会の報告書によると、小城容疑者は去年2月から3月にかけて指導者としての優越的地位に乗じて、重大なセクシュアルハラスメントを3回行ったと認定されました。
また報告書では、認定に至るまでに、被害者をさらに傷付けた協会の対応も明らかにしています。前理事長は当初、男子選手から聞き取りをせず、小城容疑者と男子選手との「同意の上での事案だった」などとして、協会内で情報共有を行なっていませんでした。
協会の新しい理事長は…
【日本バトン協会 内田圭子理事長】「(前理事長が)独断で本件に対応し、最後まで協会全体の問題とせず、もみ消しを図ったと言われてもいたし方ない行動があった。今回の事案は初動が伴っていなかった。被害者様を本当に傷つけてしまった」
さらに関係者によると、小城容疑者が他にも複数の男子選手にわいせつな行為をしたとみられることが分かりました。
【小城容疑者を知る関係者】「『僕もやられそうになった』とか、そういう話は聞こえてくる。でも、チームの責任者が、圧をかける感じで誰も口に出せない。被害者の子には復帰してもらいたいので、バトン協会も責任を取ってほしい」
日本バトン協会は、小城容疑者を永久追放にするとし、前理事長とチームの責任者を会員資格停止の処分とし、「再発防止に努める」としています。
■日本バトン協会の“ずさんな対応”
今回の問題について外部調査委員会の報告書では、日本バトン協会の対応も問題視されています。
まずチームの責任者について、
・協会の理事にも関わらず事案の申告を怠る
・調査に非協力的な態度
・被害者への対応が不十分
そして当時の協会理事長は、
・他の理事に相談することなく情報の共有を怠る
・加害者側だけの話を聞き「痴情のもつれ」と決めつけていた
・加害者の代理人のような振る舞いをしていたとも言われている
■「被害者は何重にも傷付けられた」
日本バトン協会の対応について、「newsランナー」コメンテーターで前尼崎市長の稲村和美さんは「被害者は何重にも傷付けられた」と話しました。
【稲村和美さん】「声を上げること自体すごく勇気がいることだったと思います。それだけつらい状況に置かれていたのだと思うんです。そういったことを上部に訴えた時にこのような対応をされると、本当に何重にも傷付けられてしまうことになると思います。新しい理事長が初動についての問題意識を述べていましたけれども、二度とこういうことがあってはならない、ずさんな対応だったと思います」
被害の訴えを受けて『痴情のもつれ』と決めつけた、組織としてのガバナンスはどうなのでしょうか。
【稲村和美さん】「スポーツの世界では体罰であったり、性的被害だけに限らないと思いますが、やっぱり指導者の立場の強さがある。そして指導を受ける人が競技者としての指導者への憧れや尊敬があったり、指導を受けたいという強い思いを持って、関係性が結ばれていると思うんです。その中でこういったことが構造的に起きることがあるという立場に立って、このような事案に対応して行くことが必要だと思います」
忘れてはならないのは被害に遭われた方やご家族は今も心に大きな傷を負っているということです。
【関西テレビ 加藤報道デスク】「被害に遭われた方は思い出すのもつらいし、誰かに話すこともつらかったと思います。意を決して誰かに相談した時に、このような対応をされたということで、二重に傷付けられたと思います。今回の事件、まず優越的な立場を利用して、被害者が被害を訴えられないであろうというところにつけ込んで行われた犯行だと思います。卑劣で、旧ジャニーズ問題の事件とも同じ要素を含んでいると感じます」
調査報告書では協会に対して、被害を訴えやすい制度を作るよう指摘しています。再発防止に向けての協会の姿勢が、これから問われていくことになります。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年5月1日放送)
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