12月22日(日)、京都で行われた全国高校駅伝で男子は佐久長聖、女子は長野東が優勝した。男女アベック優勝は県勢初の快挙だ。今年1月の都道府県対抗男子駅伝でも長野が優勝。まさに「駅伝王国」と呼ぶにふさわしい結果。なぜ、ここまで強いのだろうか。関係者などに聞くと、「練習環境」「合宿」「駅伝愛」などが理由にあげられる。
■アベック優勝 男子・佐久長聖 女子・長野東
都大路を駆ける、全国高校駅伝。
女子・長野東は1区の2年生・真柴選手が残り200メートルで抜け出し、トップでタスキを渡す。
その後も安定した走りで首位をキープした長野東。
最終5区でも田畑選手がリードを守り切り、1区から先頭を譲らず2年ぶり2回目の優勝を果たした。(1時間7分27秒 速報値)
アンカー・田畑陽菜選手(2年):
「チームのみんながここまで1位でタスキをつないできてくれた中で、しっかりと自分がゴールまで運ばなければいけないと」
一方、男子は連覇を狙う佐久長聖。
2位でタスキを受けた3区の佐々木選手が区間賞の走りで先頭に立つ。
その後は大牟田(福岡)とのデッドヒートに。
ほとんど差のないまま最終7区。
ゴールまで約1キロとなったところで、石川選手がスパート。一気にリードを広げそのままゴールした。
学校初の連覇を達成した。2年連続4回目の優勝を果たした。(2時間1分33秒 速報値)
浜口大和主将:
「期待に自分たちが応えたいという思いが日に日に強くなって、こういった結果に結びついたと思っています」
■「山国」が生む最高の練習環境
今年1月の「都道府県対抗男子駅伝」で、長野は大会新記録で3連覇。長野はまさに「強豪県」。なぜ、ここまで強いのだろうか。
駅伝やマラソンの解説でおなじみの金哲彦さん。信州のランナーの特徴について、「のびのびとしたフォームで走る選手が多い。チマチマ走るんじゃなくて。クロスカントリーのコースが身近にあるからじゃないかなと思います。当然、アップダウンが、山に住んでいる子どもは小さい時から足腰も強いでしょうから」と話す。
標高が高く、起伏に富んだ地形が多い県内。確かにトップ選手が集まる高地トレーニング施設があり、佐久長聖も長野東もクロスカントリーコースで練習している。
「山国」であることが選手を強くしていると言えそうだ。
金さんは、「県外の人たちが長野に練習環境を求めていっているわけですから、長距離には最高の環境です」という。
■合宿で育む「チームワーク」と「憧れ」
また、長野陸上競技協会の駅伝部長の丸山健志さんは「今の都道府県対抗駅伝に関しましては、直前の1月の合宿は、大学生も実業団も一緒に合宿をする。特に大学生に関しては箱根駅伝を終わって翌日に合宿に合流してもらう。チームワークがつくれるというのが一番大きいと思います。これは他所の県ではまず類がないことだと思います」と話し、胸を張る。
特徴的な強化策として挙げられるのが「合宿」。都道府県対抗駅伝の合宿は、前年の3月にスタートし、ほぼ毎月行われている。中学生から社会人まで参加してもらうことで、チームとしての一体感も育まれると言う。
特に中学生にとって「憧れの先輩」と一緒に走ることは大きな刺激になる。
今年1月、都道府県対抗男子駅伝で中学生区間を走った選手は、「先輩方の練習に向かう姿勢や日常生活などでさまざまなことを教えてもらった。合宿などがあるからいろんなことを教えてもらって、陸上の結果にもつながるし、人間としても大切なことを学べる」と話し、合宿は成長できる環境だという。
中学生の頃から刺激を受け、先輩や指導者に憧れて強豪校へ集まり、切磋琢磨する。
卒業後は合宿などを通じてこれまでの経験を次の世代に伝えていく。この憧れや経験の「循環」が強さの伝統を築いている。
金さんは、「男子は佐久長聖に集まってきて、女子は長野東に集まってきてみたいな。そういう流れはできています。高校駅伝で強いだけじゃなくて、OB・OGが活躍しているじゃないですか。日本代表に何人もなっているし、大学駅伝でも活躍しているし、世界大会でも活躍している。そういう、ロールモデルになるような、ヒーローになるような先輩たちがたくさんいるからだと思う」と分析している。
■「駅伝愛」が支える伝統と強さ
さらに県縦断駅伝や市町村対抗駅伝など歴史ある大会が多いのも長野県の特徴。幅広い年代のランナーが交流することによって、競技力の向上や競技人口の増加も期待できると言う。
大会を通じて県民の関心も高まり、熱い声援に。都道府県対抗男子駅伝でも長野県からの応援団や広島の県人会が駆け付けていた。
信州駅伝サポート会の伊藤利博さんは、「昔から県縦断駅伝とか、信毎マラソン、のちの長野マラソン、長野県には駅伝文化が育まれたと思う。それが今の結果につながっているのでは」と話す。
■「心」を大切にする県民性
強さには、やはりさまざまな理由があるようだが、そもそも駅伝に対する県民の「熱量」の高さはどこから来ているのだろうか。
丸山健志駅伝部長は、「駅伝は特に『心』を大事にする競技ですので、思いやりであったり、そういうのが長野県民は非常に好むんじゃないかなと思います」と話す。
たすきをつないで心一つにゴールに向かう。
環境や伝統だけでなく、県民の「駅伝愛」が王国を支えているとも言えそうだ。
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