【ヤクルト-阪神】試合に敗れ、一人で引き揚げる阪神の岡田彰布監督=7日、神宮(渡辺大樹撮影)

球団史上初の連覇を目指す阪神に〝さざ波〟が起きている。「そらそうよ」「お~ん」「ハッキリ言うて」…などなど独特の表現で野球ファンを楽しませてきた岡田彰布監督(66)が、5日を境に報道陣の囲み取材から背を向け、取材拒否を続けている。

「想定内」と「想定外」

事の発端は「想定内」と「想定外」の違い。開幕カードの巨人3連戦(東京D)で1勝2敗と負け越し、続くDeNA3連戦(京セラ)にも1勝2敗と負け越した4日の試合後、岡田監督は各社虎番の囲み取材で「いやいや、まあちょっと想定外やな。ちょっとやな。別にまだ2カードやから。まだ当たってない3球団あるから。そこまでやな。ちょっと分からん部分が多いし。今年の戦い方というかな」と話した。

ところが、岡田監督は翌日に掲載されたスポーツ各紙の「想定外や」の大見出しに驚き、「ウソを書かれた」と激高。もうしゃべらん!となった。

開幕前にも記事に激怒

オープン戦は3勝14敗1分けと低調。主力選手の体調面も考えると、開幕時にチーム状態が万全になるとは考えにくく、シーズン前の見立ても「試合を重ねるうちに徐々にチーム状態を上げていき、シーズンの最後に頂点に立っていればいい」。なので開幕2カード連続の負け越しも、名将の頭の中では想定内だったのだ。

【阪神-ヤクルト】左翼席を埋めたファンの声援を受け、球場から引き揚げる阪神の岡田彰布監督(中央)=5日、神宮(松永渉平撮影)

ただ、客観的な状況を考えるなら「想定外」との発言は違和感なく受け止められる。岡田監督にとってはオリックス監督時代を含めて指揮官10年目で初の開幕2カード連続負け越し。いくら名将でも計算外だったのか?と受け取られても不思議ではない。さらに今の虎番は監督取材の際にスマートフォンなどで発言を録音する。「想定外」という言葉は〝証拠〟として残っていて、取材拒否を通達された側も「言ったことを正確に書いただけ」となる。

岡田監督は昨年6月にも、横浜スタジアムの試合前やイニング間のイベントが長いことを虎番に話し、そのまま書かれたことに激怒。しばらく取材を拒否した。今年のオープン戦でも佐藤輝をスタメンから外した際、『開幕スタメンに暗雲』などと書かれたことに激怒し、再び取材拒否している。

ボタンの掛け違い

阪神監督と虎番との〝ボタンの掛け違い〟は過去にもある。あれは37年前の1987年。開幕から泥沼の不振が続いた6月頃、吉田義男監督の休養説が流れた。そんな状況下、雨で試合が中止になった甲子園球場。ロッカールームから出てきた指揮官は待ち構えた各社カメラマンがフラッシュをたき始めると、手に持った傘に目を落とし「傘さしたろか!」と言った。監督の言葉の意図は「傘を開いて(さして)カメラを遮るぞ」ということだったが、報道陣は「傘で刺したろか! と言った」となり、両者の険悪ムードは最高潮に達した。

【ヤクルト-阪神】試合に敗れ、球場から引き揚げる阪神の岡田彰布監督=7日、神宮(渡辺大樹撮影)

阪神はその年、41勝83敗6分けの最下位に沈み、2年前の85年に21年ぶりのリーグ優勝、球団創設以来初の日本一にチームを導いた吉田監督は解任された。マスコミとの険悪な関係も解任の理由だった。

冷戦から得るものなし

今回の「想定内」と「想定外」は、言葉の意味自体は人間関係に波及するほどの険悪さもなく、言ってみれば監督自身は認めたくはないだろうが「言い間違い」の部類に入る。監督の肩を持つならば、日頃から取材している担当記者ならば、それぐらいは前後の脈絡で理解しろよ…といういらだちでは?

いずれにせよ、マスコミの後ろには多くのファンがいる。けんかをしても両者とも得することは一つもない。ウイットに富んだ「岡田語録」が一刻も早く読める日を、野球ファンは首を長くして待っている。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て特別客員記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

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