サッカー日本女子代表・なでしこジャパンが26日、パリ五輪後初の国際親善試合(vs韓国女子代表@国立競技場)に臨む。
佐々木則夫監督代行(66)に、この一戦で実況を担当する横浜F・マリノスユース出身のTBS齋藤慎太郎アナウンサー(27)がインタビューした。海外組が増えた現在の状況、韓国戦で注目すべきポイントなどを聞いた。

代行は車だけにしてくれ(笑)

佐々木監督代行は、2011年女子W杯で日本を初の世界一に導いた名将。2021年12月からは日本サッカー協会の女子委員長を務めているが、今回、8年ぶりになでしこジャパンの指揮を執ることとなった。



齋藤アナ:まずは、代行という名前はつきますけれども、監督8年ぶりですが、今のお気持ちはいかがですか?

佐々木監督代行:いや、代行は車だけにしてくれって(笑)。そう思っても、最近ちょっと楽しみになってきましたよね。

齋藤アナ:女子委員長もやられていますが、監督になるっていう経緯はどういった流れだったんでしょう?

佐々木監督代行:池田(太)監督が満了して退任したんですけど、その後新たな監督招聘が、本当はこの(18日の会見の)タイミングで新たな監督が指揮するというような形をとりたかったんですけど、日本のみならず海外にも向けて準備しようかという状況で、今進めているものですから。少し時間がかかるなというところで、10月26日は間に合わないということを決断して、結果的に私が指揮を執るということになったんですけどもね。

齋藤アナ:コーチングスタッフ、監督含めて今回限りということなんですかね?

佐々木監督代行:一応、今回限りのスタッフということで形を作っておりますので。でも本当に僕以外はいい指導しているということであればね、またなでしこ(ジャパン)に関わるとかいうことももちろんあると思いますけど。

齋藤アナ:コーチに日本代表経験のある内田(篤人)さんも入りましたけど、どんな狙いを持ってといいますか、どんなことを伝えてほしいと思っていらっしゃいますか?

佐々木監督代行:僕もいろんな話を聞きたいですし、選手自体にも様々な経験値を伝えたり、そして内田さんの目線のアドバイスっていうのも絶対に効果的だと思いますし。期待するところは大です。

齋藤アナ:今回は監督代行というところで、監督探しというところもまた(女子委員長としての)仕事になってくると思うんですけど、どんな監督を探していらっしゃいますか?

佐々木監督代行:なでしこジャパンの“質”というものをしっかりと成長させてくれる、このベースであって、さらに積み上げてくれるような、そういったヘッドコーチにお願いしたいなと思いますね。

齋藤アナ:パリ五輪を終えてから初戦ということになりますけれども、今回の日韓戦をどんな位置づけで捉えていらっしゃいますか?

佐々木監督代行:本当にそういった意味合いのある、将来の女子サッカーのまずスタートだと思って、みんな一体となって一生懸命やってもらいたいし、しっかりと結果を残し、次の監督にバトンを渡せるような、いいゲームを表現していただきたいと思います。

齋藤アナ:パリ五輪はどうご覧になりましたか?

佐々木監督代行:もっともっとなでしこがプレーを表現する中で、攻撃も守備ももっともっとアグレッシブにそして勇気を持って、サッカーに試合に取り組むというところ、そういったところが少し忘れかけてたかなと。そんなところをね、何とか今回、僕自身も、どこまでできるかわかりませんけども、そういったパフォーマンスを少しアプローチして、次の監督にバトンを渡すというようないいゲームができればなと思っているところなんですけどもね。

齋藤アナ:次の試合、韓国との試合はアグレッシブに前からいくと?

佐々木監督代行:いってもらいますよ。(ボールを奪うまでの相手のパスの)本数を数えててください。

齋藤アナ:それぐらいでも前から行くということですね。

世界で戦うために必要なのはインテリジェンス


なでしこジャパンも男子同様、海外組が急増。今回招集されたメンバー23人中16人(※23日時点)が海外のクラブでプレーしている。


齋藤アナ:現在のなでしこの選手たちは本当に海外で多くプレーされています。どうご覧になってますか?

佐々木監督代行:本当に技術がしっかりしてますし、またレベルの高い、質の高いゲーム、リーグの中でやってますので、それはもう本当に質が上がってると思います。ただ、大柄な(外国人)選手の中に小柄な日本人がやるとそれは役割として非常に機能してるんですけども、それが全部集まってくるとみんな小柄なフィジカルのあまりない、そこで同じスタイルでサッカーやれるかっていったらまた違うものなので。そこはそこなりに、なでしこのカラーというものをしっかり構築していかなければ、世界で活躍している、表現している中でも役割が全体的に違うので。そのへんをしっかりとなでしこジャパンのチームカラーというものを良いものにしていかなきゃいけないと思っています。

齋藤アナ:やっぱりそういう海外で活躍してる選手たちっていうのは、小柄をある意味武器にして戦っているんでしょうか?

佐々木監督代行:本当にアジリティ、個々の細かい動き、そしてパワーのある人たちの間に入って、コネクターの役割の素晴らしい質の高さ。もちろんフィジカルの部分の中ではディフェンダーの中で南(萌華)選手や熊谷紗希選手のようにフィジカル+技術というもので巧みに戦ってるとこありますけれども、それよりもやっぱり繊細さ、判断力とか気が利くとか、サポートの質とかいうもので、やはり彼女たちはさらに生かしてくれてると思いますしね。

齋藤アナ:小柄な選手たちが集まったチームになると、海外の体格の大きい選手と戦う上で、特に必要になるところってどんなところでしょうか?

佐々木監督代行:もうそれは体と体をぶつけるとかいうことではなくて、やっぱりインテリジェンスですよね。海外で活躍している選手は、例を挙げれば長谷川(唯)選手なんかも小柄ですけども、大柄な選手とコンタクトする前にスルっと抜けるタイミングとか、相手の力を利用したターンとか、そういったことを吸収して代表でもやってくれているプレーはありますので。そういったところの質の高い選手を1人でも多く、そしてなでしこジャパンの中でしっかりと結集してそれを大きな力に、1対1じゃなくて複数になればさらにそれがパワーアップするぐらいなチーム構成をして、そして戦術的にもそういったことをなでしこジャパンのらしさの部分に落とし込むということが大事だと思いますね。

齋藤アナ:小柄とはちょっと変わるんですけれども、若手の谷川(萌々子)選手、(パリ五輪)ブラジル戦でも大活躍を見せましたけれども、今は(スウェーデン)リーグで全勝で得点王(10月18日時点)ですけれども、活躍はどうご覧なっていますか?

佐々木監督代行:FWじゃなくても、2列目のMFのポジションにおいても、非常にシュートのセンスもありますし、キックの質が高いんですよ。シュートというよりも、多分ゴールの枠にパスを正確に出すというようなイメージのシュートも多いですし。もう日々日々、若いエネルギーのもとに成長度も高いですよね。

齋藤アナ:谷川(萌々子)選手含めて本当に若い選手、それから中堅の選手、熊谷(紗希)選手のようなベテラン選手もいますけれども。

佐々木監督代行:今若手の方が多くなってるんじゃないですか?我々は。

齋藤アナ:ちょっとビックリしまして。2000年生まれがかなり多くて。

佐々木監督代行:もう明らかにそのレベルに達している選手たちが、様々な日本の女子を指導していただいている方々の、これはもう大きな力ですよね。

齋藤アナ:特に今の若手、2000年以降に生まれた選手たちに共通して言える長所ってあったりしますか?

佐々木監督代行:やはり技術力が高いです。やっぱり指導するにあたってのアプローチが以前よりもやっぱり質が高いので、非常に効果的に若い選手たちが成長してきている。そしていろんな経験をさせてくれている。ですからJFAとしても、早くそういった若手にいろんな経験をさせなきゃいけないでしょうというところも。それは我々の役割ですよね。

齋藤アナ:メンバー選考を見てもこれだけ年齢層の幅が広いと、上から下への落とし込みというのも望めるところはありそうですか?

佐々木監督代行:そうですね。やはり熊谷紗希選手を中心として、大きな世界大会経験した選手が中軸にもいますから、そういった意味でも今回若手が3分の1入ってますけれども、そういった選手たちにもしっかりと植えつけさせてもらって、そういったことを経験すれば若手は非常に伸び率高いですから期待したいところですね。


韓国戦の注目ポイント

齋藤アナ:国立競技場で行われますしオリンピックが終わってから初めてということですけれども、ディフェンスにアグレッシブというお話もありましたが、どんな試合を見せたいですか?

佐々木監督代行:もう本当に攻撃もスペクタクルに、ボールをしっかり握りながらアグレッシブにゴールを目指す、攻撃のみならず守備からもゴールを目指す。守備を3ラインで連携してね、4ラインかな、キーパーもいるからね、山下選手のボールも非常にいいですからね。そういった意味でも、常にアグレッシブにやってもらいたいと思います。

齋藤アナ:ゲームの中で、チームのここに注目してほしい注目ポイントは?

佐々木監督代行:もちろん相手のボールを(パス)10本以上は、動かさねぇぞと。そのうちに10本以内に取ると。数えてて。(相手のパス)5本以内に何回取れるかみたいな。

齋藤アナ:特に注目してほしい選手などいますか?

佐々木監督代行:10代20代の若手にぜひ注目してほしいですね。もうそこを中堅とベテランは、しっかりと支えながら若手が躍動するみたいな感じになるんじゃないかな。

齋藤アナ:出せば絶対に世界でも通用する選手たちが揃ってるような気がします。

佐々木監督代行:もちろんです。もう20歳、19歳になったばかりのあの子たちが中軸になったときには必ず優勝に手が届く、それを導くのは我々はバックヤードからとか、本当にスタッフがしっかり構築して、そして、様々なもうちょっと経験を積み、プラスして、2027年W杯、28年五輪にやっぱり皆さんの期待に沿えるようなチームに出来上がればと思ってます。

齋藤アナ:そして日韓戦についてはいかがでしょうか?

佐々木監督代行:僕ね、意外になでしこジャパンの監督やってて、優勝(2011年W杯)とか準優勝2回(2012年ロンドン五輪・2015年W杯)じゃないですか。その割にはアジアで一番成績が悪いのが韓国なんですよ。韓国と僕、監督のときに試合やった時に3勝3敗2分、(勝率)5割なんですよ。だから今度の試合で勝つか負けるかで、僕は韓国に負け越しで終わるか、勝ち越しで終わるか、カド番なんです。そのへんも注目していただけると。
齋藤アナ:アジアで苦手な韓国。佐々木監督にとっても負けられない戦いになってきますね。楽しみです。



■佐々木則夫(ささき・のりお)
1958年5月24日生まれ、66歳。2007年サッカー日本女子代表・なでしこジャパンの監督に就任。2016年まで125試合指揮し、W杯優勝1回、準優勝1回、ロンドン五輪銀メダル。監督通算80勝29敗16分。

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