「人の支えがないとここまで来れなかった。プロに入って活躍して恩返しがしたい」。こう話すのは、北東北大学野球リーグ新記録となる通算45盗塁をマークした韋駄天、富士大の麦谷祐介外野手(22)だ。

50m走は光電管計測で5秒85で、元陸上選手の朝原宣治さんが2002年に計測した5秒75にも迫る驚異的なスピードを誇る。スピードだけでなく、逆方向のスタンドにも放り込めるパワーも兼ね備え、昨年の全国大会ではいずれもドラフト1位でプロ入りした青山学院大の下村海翔(現・阪神タイガース)、常廣羽也斗(現・広島東洋カープ)両投手から本塁打を放ち、その名を全国に知らしめた。今年の秋はリーグ最多本塁打、最多打点を受賞し、走攻守揃った外野手としてプロのスカウトからも注目されている。

宮城県仙台市出身の麦谷は小学生時代、陸上に打ち込んでいたが、2013年の楽天の日本一の盛り上がりを見て「野球はかっこいい」と感じ、中学1年から東北楽天リトルシニアで本格的に野球を始めた。チームは“100人以上の入団希望者に対して合格者は約20人程度”という狭き門だったが、持ち前の身体能力で見事突破。中学3年時には全国大会に出場するなど実績を積んでいった。高校はセンバツ甲子園優勝経験のある名門、健大高崎高(群馬)に進学するも「部に合わない」と高1の冬に退部。地元である宮城県の大崎中央高校に転校し、一度は野球を辞めようとしたが、監督からの熱心な誘いもあり、再び野球の道に戻った。

高3の時、コロナ禍での開催となった夏の宮城県大会は3回戦で敗退したが、2試合で6盗塁と持ち味を存分に発揮。大学は、外崎修汰(西武)、山川穂高(ソフトバンク)など一流選手を輩出した東北の名門・富士大学に進学し、1年生からリーグ戦に出場。プロのスカウトの目に止まる選手にまで成長した。

「今となっては遠回りしたことが糧になっていますし、その時間は無駄じゃなかったと思っている」と麦谷。それは「仲間、指導者、両親など、周囲の支えがあって今がある」ことに気付くことができたからだという。

大崎中央高校野球部の同級生・鈴木光星さんへの感謝の思いは大きいという。高校時代は寮が一緒で、まさに寝食を共にした仲だった。鈴木さんは高校で野球を辞めるにも関わらず、麦谷が大学で野球を続けるために、引退後も練習に付き合ってくれたという。「あの時間があったから、大学1年で試合に出させてもらうことに繋がった」と麦谷は振り返る。今も交流は続いていて「自分のことをわかってくれている存在で信頼を置いている存在です。鈴木に良い報告がしたいです」と意気込む。運命のドラフト会議は、今月24日に行われる。

■麦谷祐介(むぎたに・ゆうすけ)
2002年07月27日生。180cm81kg。宮城県仙台市出身。右投左打。好きな言葉は「一意専心」。趣味は寝ること、ゴルフの打ちっぱなし。北東北大学野球リーグではベストナイン3回、最多盗塁5回、最多打点2回、最多本塁打1回。

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