日本を代表するトップサーファー五十嵐カノアが今月20日に行ったキッズサーフィンアカデミー。強風というあいにくの天候でも、ビーチクリーンやサーフィンに関する座学で子供たちと楽しい時間を過ごした。実はこの参加者の中に、五十嵐の他にもう1人、日本を代表する選手がいた。

「事故を未然に防ぐというのをものすごく大切に活動しています」こう話すのはライフセーバーとして活躍する三井結里花(32、館山サーフライフセービングクラブ)。”ライフセーバー”と聞くと、溺れている人を助ける海の監視員、というイメージが強いが、世界ではスポーツ競技として認知されている。

三井自身も、海での事故を防ぐとともに、競技者として世界に挑戦している。競技に特化したレスキューボードを使い漕ぐ速さを競う種目「パドルボード」の世界選手権では2022年、23年と大会連覇。24年には同種目のリレーで金メダルを獲得している。また、2024年8月に行われたSERC種目(4人1チームで救助者を迅速に的確に救護できるかを競う)で金メダルを獲得。

三井は、「監視活動に繋がっていると信じてスポーツにも取り組んでいる」と競技をする理由を語り、「トレーニングをして単純にパドルをするスピードが上がれば、救助者に向かうスピードも早くなる。また目的の場所に行くのに、パドルする速さだけじゃなくて、風や海の流れを読んだりなど、どう速くたどり着けるかをトレーニングをしている」と、常に”人命救助”を年頭においてトレーニングを行っていると話した。

沖まで何キロも自分の手で漕ぎ人の命を助ける。決して楽ではないことを続ける三井。そのウラには自分の確固たる目標と2歳になる愛娘・梨里衣(りりい)ちゃんの存在があった。「妊娠中がコロナ禍で、競技を続けるかどうかを特に決めていたわけではないが、実際に産んでみたら可愛い過ぎて競技どころじゃないなんて思った」と、本音を告白。

子育てをしながらアスリートを続けるのは容易なことではない。それでも、「子育てで忙しいけど、自分のやりたいことはやっぱり目標に向かって突き進むことだった。そういう自分を自分で認めてあげた上で、自分らしい自分で母親でいたいなという気持ちがすごく湧いてきた。中途半端な気持ちではなく、子育てもアスリートとしても活動しています」と、強い信念を持って競技を続けていることを話した。

世界大会の遠征にも、梨里衣ちゃんを連れていく。家族など周りの支えを借りながら活動している三井の次なる目標は、2032年のブリスベン五輪出場だ。「まだ五輪種目に決まってはないけど、(開催地の)オーストラリアはライフセービングの本場なのですごく可能性があると思っている」と力を入れて招致活動を行っていると話した。

五輪に出場する上で、「ライフセーバーとして事故を未然に防ぐということが(自分の)大きな目的。オリンピックは世界中の人に影響があると感じていて、ライフセービングを知らない人に知ってもらい、自分が海で遊ぶ時に自分の身を自分で守れるような術を身に着けてほしいという特別な思いがある。そういう思いを世界中の人に届けたいと思っています」と、強い思いを伝えた。

三井結里花(みつい・ゆりか)

東京都出身。1992年3月7日 161㎝
元は競泳をしていたが、大学のサークルでライフセービングに出会い競技だけでなく人命救助の活動があると知り入部。自分が好きでやっていたことが、気づいたら誰かのためになっているというのを感じ次第にはまっていった。2012年から現在まで日本代表として世界大会に出場。世界選手権には50数か国が出場し、個人で大会2連覇、リレーでも優勝という結果を残す。現在、館山や湘南を拠点に活動中。

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