「NPBというのが最大の目標」。こう言い切るのは、慶応高出身の根岸辰昇(ねぎし・たつのり)内野手。アメリカの大学を3校渡り歩いたという異色の経歴を持つ24歳は、24日に行われる今年のドラフトでのNPB入りを目指している。

根岸は慶応高校3年時、夏の甲子園で2戦連続適時打を放って注目を浴びたこともあり、周囲からは慶応大学に進み六大学野球でプレーすることを期待されていた。しかし幼いころから憧れてきたメジャーリーグのドラフトにかかることを目指して複数のアメリカの大学に動画を送り、興味を示してきたオレンジコーストカレッジ(カリフォルニア州)に2019年に進学した。

根岸が渡米して初めて入学したのは短大だったため、上のレベルでプレーを続けるためには他の大学に進学する必要があった。言語の壁を感じながらも必死でプレーを続け、全米300全校に毎週、自分の動画をメールで送ってアピールし、全米ディビジョン1のミドルテネシー州立大学に2021年に編入した。

ノースカロライナA&T州立大学時代の2023年には大学構内にて発砲事件に遭遇。根岸本人からは「銃口がこっちを向いているのが見えた」ほど緊迫した状況だったが、全力で走って逃げて事なきを得た。親からは「もう帰ってきなさい」と説得されたが夢を諦められず、帰国せずに野球を続けた。こうしたアメリカでの生活を通して精神的にも成長。今季は同じくディビジョン1のノースカロライナA&T州立大学で一塁手としてプレーし、51試合に出場して打率3割7分1厘、8本塁打、37打点という結果を残した。

さらに、7月には人種に関わらず多様な学生が通う大学群”HBCU”の有望選手がオールスターゲーム「HBCUスイングマン・クラシック」に選抜され、「4番・一塁」で先発出場し、2打数1安打1四球と存在感を示した。そのオールスターではメジャーリーグで4度の本塁打王に輝き、イチローも尊敬するケン・グリフィーJr.(元マリナーズなど)に指導を受ける機会があったといい「自分のスタイル的にもすごく合ってると思う」と根岸。小さい頃から憧れた選手の指導を受けられたことも、渡米生活の大きな収穫になった。

異国で過ごした大学生活について根岸は「アメリカでしかできない経験は絶対にあります。日本とどっちが良いとかではないんですけど、自分なりに全力でやってきたんで全く後悔はないです」と言い切る。

日本には今年の7月下旬に帰国した。コロナ禍以降メジャーリーグのドラフトは指名選手が大幅に減ったこともあり、現在は「ご縁があるチームに行ったときに、自分の力を発揮してしっかり貢献できるよう頑張っていきたい」と日本のプロ野球に進むことを目標に定めている。根岸に吉報は届くかー。運命の1日は刻一刻と迫っている。

■根岸辰昇(ねぎし・たつのり)
2000年9月20日生。左投左打。東京都出身。180cm100kg。ポジションは一塁、外野。慶応中等部では軟式野球部に所属。慶応高3年時にチームは春夏連続で甲子園出場。春はベンチ外。夏は外野手のレギュラー。19年8月にオレンジコースト大へ進学。21年8月からミドルテネシー州立大でプレー。24年はノースカロライナA&T州立大で一塁手のレギュラー。外野手も兼任。憧れの選手はダリル・ストロベリー(元メッツなど)。

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