各地区の予選を勝ち抜いた16校が参加し、8月25日から兵庫県の明石トーカロ球場とウインク球場を舞台に行われた『第69回全国高等学校軟式野球選手権大会』。8月30日、台風が近づくなか、無事に決勝戦が行われ、史上初となる2度目の3連覇を狙う中京(岐阜・東海代表)と、27年ぶりに晴れの舞台に駒を進めてきた仙台商(宮城・東東北代表)が対戦しました。
中京伝統の『たたき』が成功!ボールを大きくたたきつけて得点
時折強風が吹くも、心配された雨もなく始まった決勝戦。中京・川口拓海投手、仙台商・楠本憲新投手の両先発が好投。軟式高校野球らしい、しまった展開となります。
先にチャンスをつかんだのは中京。3回、先頭の7番・水野純也選手が、軟式特有のファウルゾーンに落ちた打球が複雑な回転でフェアゾーンに戻ってくる3塁への内野安打で出塁すると、山下賢太選手がフォアボール。続く川口拓海選手が送りバンドを決めて、1アウト2・3塁と絶好のチャンスをつくります。
ここで1番・垣内惺矢選手が、ボールを大きくたたきつけて弾む間にランナーを進める中京伝統の『たたき』で得点に結びつけます。ピッチャーゴロが大きく弾む間に3塁ランナーがホームイン。初ヒットを、鍛え上げられた攻撃で先制点に結びつけます。
さらに中京は4回、先頭の3番・西尾昇真選手がチーム2本目のヒットで出塁すると、すかさず盗塁。黒田航輝選手が送りバンドをきっちりと決めて、軟式高校野球ではスコアリングポジションとされる1アウト3塁のチャンスをつくります。
3回に1点を許している楠本投手が「(ここも)『たたき』を狙ってくるのはわかっていたので、力を入れて防ぎにいったが、相手の方が一枚上手だった」と言うように、ここでも5番・田口天照選手が鮮やかに『たたき』を決めて、ファーストゴロの間に3塁ランナーがホームイン。貴重な2点目を奪います。
中京・川口拓海投手「監督に『一緒に日本一を目指そう』と誘われて硬式から転向」
一方、強力打線を携えて決勝まで勝ち上がってきた仙台商は、2点をリードされた5回表、ようやく打線がつながります。連続ヒットで2人が出塁すると、すかさず送りバンドを決めて、1アウト2・3塁とこの試合初めてのチャンスをつくります。
ここで仙台商ベンチの選択はスクイズ。しかし、ストライクゾーンの幅と緩急を上手く使う川口投手の頭脳的な投球の前に、バンドを決めきることができません。あっという間に追い込まれて、最後はファーストゴロ。続くバッターも川口投手の渾身の投球の前に打ち取られ、絶好のチャンスを逃してしまいます。
それでも差は2点。仙台商は6回途中からエースでキャプテンの佐々木大輔投手をマウンドに送り込んで、中京の攻撃を断ち切ると、自慢の打線が積極的なバッティングを見せて反撃を試みます。
しかし、仙台商の楠本選手が「今までの試合なら抜けていた当たりや落ちていた打球がヒットにならなかった」と振り返ったように、投球ごとに守備位置を微妙に調整しながらヒット性の当たりをアウトにしていく中京内外野の固い守備が、仙台商の反撃を許しませんでした。9回、中京に初めてとも言えるミスが出て、2アウト1・3塁のピンチを招きますが、落ち着いた投球で川口投手が切り抜けてゲームセット。
平中亮太監督が「昨年は打ち勝つ野球だったが、今年は、中京の原点である守り勝つ野球を掲げて、徹底的に鍛え上げてきた」と語った中京が、2対0で仙台商を下し、見事、大会史上初となる2度目の3連覇を果たしました。エースの川口投手は「中学の時、平中監督に『一緒に日本一を目指そう』と誘われて、硬式から転向して中京を選んだ。無事に3連覇を果たして、(4連覇を目指す)後輩たちにつなげることができてよかった」と語りました。
敗れた仙台商の西山康徳監督は「日本一にかける思いが、うちとの差。(われわれの)選手たち、とくに少ない部員から始まった3年生は、本当によく頑張ったと思う。この舞台まで導いてくれたことに感謝したい。ただ中京の日本一にかける思いがすごかった」とコメント。
常に日本一を意識して、高いレベルでの鍛錬を続けてきた中京が伝統の底力を見せ、栄冠を手にしました。
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