夏の甲子園に2度出場。米・ハワイ大学に進学し、異例のルートでメジャー挑戦を目指す武元一輝(20)が、米サマーリーグの最高峰・ケープコッドリーグで最優秀投手に輝いた。大勢のメジャースカウトも視察にくる注目の舞台。米大学でまだ1年生の武元が活躍できた理由とは?

招待選手は全員がドラフト候補 初挑戦の大舞台で残した最高の結果

 多くのメジャーリーガーが輩出してきた同リーグ。招待される選手は全選手がメジャーのドラフト候補。そのリーグが今年も6月から8月中旬にかけて行われ、招待選手として武元も参加した。9試合に登板し、3勝1敗で防御率0.71。25回1/3で23個の三振を奪う大活躍をみせ、リーグ最優秀投手に選ばれた。来年夏に迫るドラフトへ良いアピールとなった。

 「いろんな人の支えがあって、自分が日本にいた時に想像していたよりもはるか上の舞台でプレーすることができました。メジャーのスカウトも数多くいる中で、米大学1年時に最高峰のリーグで結果を出せたのは自信になりました」
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 高校時代の最速は151キロだったが、渡米してから約1年半で球速は3キロアップの154キロに成長。平均球速も約148キロだったが、今は約150キロに上がったという。さらに、現在と高校時代の映像を見比べるとコントロールも格段に良くなっていて、同リーグで三振の山を築いた。着実にレベルアップしている武元だが、その裏には渡米後のある意識の変化があった。

「今に集中すること。自分に必要なことは何かを常に考えること」

 アメリカに移住して1年半。英語や文化などを学び、オフはサーフィンや乗馬をするなど充実した日々を過ごしている武元。野球でも「毎日刺激を受けながら成長できている」と語るが、アメリカ人と一緒に野球をする中で実力の差を感じることも多々あったという。

 「アメリカ人とウエイトトレーニングを一緒にやると、すごくフィジカルが強いので力の差を感じます。毎日を普通に過ごせば差は開くばかり。その差を埋めようと考えた時、いかに効率良く自分に必要なことをやるかが大事だと思いました。そう感じた日から日記をつけて、自分の取り組みを文字化して整理するようにしています。また、野球は道具を動かす速さが必要なスポーツ。どうしたら体が早く動かせるかを意識して、瞬発系の種目を多くやっています。高校時代は何も考えてなかったので、精神面でも進化しているかもしれないです(笑)」
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 武元は今年5月から元プロアメフト選手の栗原嵩(36)の個別トレーニング指導を受けている。現在ハワイ在住の栗原は、アメフト選手に軸を置きながらも2020年にはボブスレー日本代表に選出されるなど、高い身体能力を武器に活躍してきた万能アスリート。その豊富な経験と知識から早稲田大学ラグビー部や明治大学野球部など、競技の垣根を越えて数々の名門を指導してきた実績を持つ。そんな栗原に指導を仰ぎ、189センチ・95キロの恵まれた体を自分が思うようにコントロールし、パフォーマンスに生かすことを目指してきた。

 「トレーニングで体が少しずつ強くなり、イメージ通りに動かすことができるようになってきました。そして、投球ではファーストストライクとキープアタッキング(常に積極的に攻めていく)を意識して今回は良い結果が出ました。これからも常に自分に何が必要かを考えて、まずは来年7月のドラフトに向けて、“今”自分がやるべきことにフォーカスして毎日を過ごしていきたいです」

 異例のルートで目指す米メジャー挑戦。足元を見つめながら、大きな夢へ着実に歩みを進めている。
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