パリオリンピック™で銅メダルの快挙を遂げた、総合馬術団体の大岩義明選手、戸本一真選手、北島隆三選手、田中利幸選手の4人の皆さんにNスタのスタジオに生出演していただきました。

“初老ジャパン”ネーミングの裏側…戸本選手は「ラインを引きたい」

井上貴博キャスター:
総合馬術競技は、人馬一体となり3種目を3日間かけて行う“馬術のトライアスロン”です。1日目が「馬場馬術」、2日目が「クロスカントリー」、3日目が「障害馬術」と分かれていました。

振り返ってみて「ここが今回のオリンピックでは良かった」というのは、何かございますか?

戸本一真 選手(41):
チームとして3種目うまくいったのでメダルという結果につながったのですが、総合馬術のメインは2日目のクロスカントリーです。ここで大きな過失を背負ってしまうことが多いところを、日本チームは最小の過失で切り抜けたので、すごく大きかったですね。

井上キャスター:
オリンピックという舞台でも、あまり緊張はなかったのでしょうか?

戸本一真 選手(41):
あまりなかったですね。やっぱり馬がアスリートのスポーツなので、馬と一緒にいられることで、馬が僕らに安心感を与えてくれることもすごくあります。割と、全員が緊張せず臨めました。

ホラン千秋キャスター:
これだけの舞台となると特別な環境で、ドキドキするのかなと思いましたが、それでもいつもどおり臨めたというのは、普段の訓練や練習の積み重ねがあってこそなのでしょうか?

大岩義明 選手(48):
そうですね。自分たちの緊張感が馬に伝わってしまわないように、馬をどういう形で入場させようか、などということを考えています。意外と頭の中を忙しくしている状態なので、緊張しないですね。

ホランキャスター:
緊張している暇がないぐらいということですね。

井上キャスター:
チームとしては、キャプテンという位置付けはないと伺っているのですが、大岩選手がリーダーということなのでしょうか?

大岩義明 選手(48):
「年長」ですね(笑)。

井上キャスター:
大きく報道された“初老ジャパン”というネーミングについて、大岩さんと皆さんでは、少し捉え方が違うそうで…。

戸本一真 選手(41):
本番直前のチーム合宿でみんなで夜ご飯を食べて、たわいもない会話をしているときに「チーム名がない」となりました。そこで監督が「じゃあ、みんな初老だし“初老ジャパン”かな」みたいな…。

ただ、僕はまだ41歳で、北島選手は38歳、田中選手は39歳です。初老ジャパンといえど、やっぱりここ(大岩選手と、それ以外の3人の間)でラインを引きたいというのはありますよね。

ホランキャスター:
SNS上でも「自称とはいえ、どうなんだ」と議論にもなっていたようですが、大岩選手は…?

大岩義明 選手(48):
僕は話題になったことがすごく良かったと、ポジティブでありがたいなと思っています。

愛馬の推しポイントは? 北島選手の相棒は「ビューティフル」

井上キャスター:
ここからは、皆さんの“愛馬自慢”を伺っていきます。まず戸本選手は、ヴィンシー(15)が相棒ということですね。

戸本一真 選手(41):
フランスの馬なのですが、すごく大舞台を得意としているというか、大舞台でこそやる気を出すタイプなので、本当に頼りになる存在です。

ホランキャスター:
そもそも皆さん、パートナーとなる馬とはどうやって出会われるものなのでしょうか?

戸本一真 選手(41):
ヨーロッパにたくさん馬がいますので、そのなかで自分に合う馬をテスト(試乗)しに行って、自分に合う・合わないを決めていきます。

井上キャスター:
合う・合わないは、どういうところにあるのでしょうか?

戸本一真 選手(41):
僕の場合は、完全なフィーリングですね。

井上キャスター:
続いて、田中選手の相棒はジェファーソン(13)。どのような特徴がある馬なのでしょうか?

田中利幸 選手(39):
ジャンプや障害がすごく得意な馬です。パートナーを組むとなり、初めてテストで乗ったときもジャンプが素晴らしかったので「やっぱりこの馬だな」と決めました。

井上キャスター:
テストでは何頭ぐらい試乗するのでしょうか?

田中利幸 選手(39):
もう数え切れません、30頭ぐらいは…。

ホランキャスター:
テストされてから大会まで、一緒に練習できるのはどれくらいの期間なのでしょうか?

田中利幸 選手(39):
コンビを組んでから1年半ですね。

井上キャスター:
続いて、北島選手の相棒はセカティンカ(17)です。

北島隆三 選手(38):
彼女は人間でたとえたら70歳近くになってしまう、経験豊富な馬なのですが、なんせ綺麗な体型と顔。そして、クロスカントリーの勇敢さが特徴です。

ホランキャスター:
それぞれの種目によって「こういう傾向の馬はこの種目に合う」みたいなタイプはあるのでしょうか?

北島隆三 選手(38):
やっぱり馬場が得意な馬、障害が得意な馬、クロスカントリーが得意な馬というのはありますね。もちろんライダーも、障害が得意などいろいろあるので、その組み合わせがすごい重要になってきます。

井上キャスター:
馬の性別でも相性は変わってくるのでしょうか?

北島隆三 選手(38):
そこも違いますね。やっぱり女の子は優しく扱いますし、せん馬(去勢された馬)は、ときには叱ることも必要になります。

井上キャスター:
続いて、大岩選手の相棒はグラフトンストリート(16)です。「全然言う事を聞いてくれない!」そうですが…。

大岩義明 選手(48):
いや、僕を背中に乗せて走ってくれているときは本当に心強いパートナーで、それこそ僕も100%信用している相棒なんです。でも、いざ競技が終わって体を洗っていると、ドロドロになったところで寝始めたり…。そういうところは、全然言う事を聞かないですね。

ホランキャスター:
構ってほしいのでしょうか?

大岩義明 選手(48):
構ってほしいのと、ちょっとイタズラな性格なんでしょうね。

井上キャスター:
お馬さんにとっては「これがオリンピックの舞台だ」などとはわからないわけですよね?

大岩義明 選手(48):
オリンピックや世界選手権というのはわかっていませんが、大舞台や、「ここで見せなきゃいけないんだ」というようなことは感じてくれていますね。

ホランキャスター:
それは、観客の多さなどから感じるのでしょうか?

大岩義明 選手(48):
多分、会場の雰囲気などから察して、日ごろとちょっと違うところを見せてくれます。

子どもたちから質問! 「パリで何を食べた?」「馬のケアは?」

井上キャスター:
乗馬クラブで練習している子どもたちからも質問が届いています。「パリで何を食べた?」という質問がありますが、田中選手はいかがですか?

田中利幸 選手(39):
フランスパンですね。できたてのパンが選手村に届けられていて、むちゃくちゃおいしかったです。

井上キャスター:
「馬のケアで意識していることは?」という質問について、戸本選手はいかがですか?

戸本一真 選手(41):
馬のお世話という言い方が正しいかどうかわかりませんが、馬のケアや準備をしてくれる「グルーム」と呼ばれるプロの方がいて、僕らのスポーツには欠かせません。

ホランキャスター:
たとえば、ブラッシングなどをしてくれるのでしょうか?

戸本一真 選手(41):
そうですね。馬がどこか疲れていたら「マッサージをしたほうがいいんじゃないか」「今夜はこういうサプリメントをあげたほうがいいんじゃないか」といったことを教えてくれるので、基本的にはプロにお任せしています。

僕らも「今日乗ったらこういう感じだったから、こういうところをケアしてほしい」と、相談しながらやっています。

井上キャスター:
そういうのは相棒の表情など、馬とのコミュニケーションでわかるものなのでしょうか?

北島隆三 選手(38):
やっぱり毎日乗っているので、馬の調子は乗ったときだけでなくても、降りているときでも感じ取りますね。「歩きたくないよ」「ちょっとしんどいね」「体痛いね」などという疲れは、常歩(なみあし)からすぐに感じます。

井上キャスター:
そして、スタジオには貴重な品々もお持ちくださっています。表彰式のとき、オリンピックのロゴ入りのリボン授与が話題になりましたが…。

大岩義明 選手(48):
賞を獲ると、馬にこういったタイプのリボンがつけてもらえますね。

井上キャスター:
馬がつけているときはそんなに大きさを感じませんでしたが、実物を見ると結構大きいですね。

また、戸本選手がクロスカントリーで実際に着用していた服もお持ちくださっていますが、これはどういうものなのでしょうか?

戸本一真 選手(41):
ケガ防止のために着用が義務づけられている防具で、これを着た状態で馬に乗ります。

井上キャスター:
あまり伝わらないようですが、馬術はケガも相当多いと伺いました。

戸本一真 選手(41):
必ずと言っていいほど1回は大きなケガをしていますが、大会ごとに必ず落ちて落馬するような、危険なスポーツではないですね。

井上キャスター:
一番大きかったのはどのようなケガでしょうか?

田中利幸 選手(39):
骨折などですかね。

ホランキャスター:
やはりどのようなスポーツも、ケガと紙一重のところで皆さん切磋琢磨されているのだと思います。

なんとなく「西洋のほうが馬術は強いのかな」というイメージを持っていた方もいると思うのですが、皆さんは今回、メダル獲得という快挙を成し遂げられました。日本ならではの馬術の強さは、どのようなところにあると思われますか?

大岩義明 選手(48):
日本ならではというのは、なかなか難しいかもしれないですね。ただ、日本も、サラブレッドに関しては生産がすごく盛んですから、まったくないわけではありません。

どうしても馬術は、生産が盛んな国がやっぱり強いんです。というのは、強い馬を自国でキープできるからです。そういうことも、日本でも少しずつ進めていけたらなとは思っています。

井上キャスター:
あとはお金や施設のバックアップや、環境を良くしていくことも重要だと思いますが、今求めていることはございますか?

大岩義明 選手(48):
やはりヨーロッパで競技を続けなければ、オリンピックに出る最低基準みたいなものもクリアできません。日本国内でいくら頑張っても、オリンピックに出るチャンスすらない状況です。

国内の整備ももちろん必要だと思いますが、我々もヨーロッパに戻ってこの競技を続ける限り、いろいろと費用がかかってきます。そういったサポートや体制をしっかり作っていかないと、続けられないと思います。

井上キャスター:
より日本が強くなるために、ということですね。もう皆さんはすぐにイギリスに戻られるということで、お忙しいなかの生出演、本当にありがとうございました。

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