パリオリンピック™で注目されている競技の1つが、ヨットを操るセーリングです。なかでもパリ五輪からの種目「男女混合470級」には、昨年の世界選手権で優勝した「岡田・吉岡ペア」が出場しています。見どころを日本セーリング連盟に聞きました。
船上では怒号も…ヨットに乗ってみて体感した激しさ
皆さんは、ヨットと聞くとどのような印象をもつでしょうか?「写真映え」「デッキでお昼寝」「お酒片手にクルージング」・・・筆者は、沖合に浮かんでいるヨットを見て「優雅でおしゃれだな」と思っていました。
ところが、「人手が足りないので乗ってみないか」とセーリングが趣味の知人に誘われ、実際にヨットに乗ってみると、想像していたものとは違った景色が広がっていました。船上では怒号が飛び、乗員たちは常に動き続けています。陸に戻ってくると、膝が痣まみれの人、気をぬいて帆を支えるパイプに頭をぶつけ、脳震盪を起こす人も・・・。風の流れを読み、ヨットを進めるというのは大変な作業なのだと痛感しました。
外から見る優雅さとギャップがあるセーリング競技。1人乗りのものから2人乗りのもの、はたまた大きな凧のようなカイトを使うものなど、様々な種類がありますが、「岡田・吉岡ペア」が挑む「男女混合ディンギー種目 470級」とはどういった競技なのでしょうか。
日本セーリング連盟担当者 西朝子さん
「全長470cm(=4.7m)の2人乗りヨットでレースを行います。海上に設置されたマーク(ブイ)を周りながらゴールを目指す競技で、予選レースのコースの形はトラピゾイド、つまり台形型になっています」
「ここでポイントなのが、風上(風が吹いてくる方)にも進まないといけないということです。ヨットは風の力を借りて進むので、風下に進むのはイメージしやすいと思うのですが、実は風上に向かっても進むことが出来ます。といっても、風上に対して直進は出来ませんので、45度ほど角度をつけてジグザグに進みます。そうすることで、向かい風でもヨットは進むことが出来るのです」
良い風を捉え、最短コースで進むため、何度も舵を切って風上に進んで行きますが、進行方向を変えるタイミングでは速度が落ちてしまいます。他のヨットとのポジション取りもあり、船上では常に考え続けることが求められるといいます。
駆け引きはスタート前から レースの見どころは
――風の影響をかなり受けるスポーツですよね。突然風向きが変わったりして、影響はないのでしょうか?
「風向きが変わったら、やはりコースの向きを変えないといけません。というのも『スタートラインから第1マーク』『第2マークから第3マーク』は風向きに対して平行にコース設計を行うことになっています。なので、マークの位置を打ち直すためにスタートの時間が遅れることもあります。
ただ、最近のマークにはGPSが入っているものもあり、マークの位置を細かく設定することが出来ます。自動で位置も調整してくれるので、重りを打ち直す必要が無くなり、時間の短縮と良いコースでのレース運用が可能になりつつあります」
日本セーリング連盟の方によると、選手たちの駆け引きはスタート前から始まっているんだそう。
スタートラインをジャストタイミングで切るには、風をしっかり受けることが重要。スタートのカウントダウンが始まる5分前から、どの艇もブランケ(他の船のせいで無風状態になること)にならないように、最適なポジションを取ります。
――ずばり、“レースの見どころ”はどこですか?
「スタートしたら『右の海面に行くか』『左の海面に行くか』など、選手たちは、風の揺らぎや強さを見極めて選択をし続けています。他のヨットの裏に入ると、風がすでに使われてしまっていて、無風になってしまいます。強い風を使うために、どのペアが良いポジションを取れるのか。風の些細な違いを読みきるポジション取りの駆け引きが見どころです」
「セーリング 混合470級」はフランス・マルセイユで8月2日から予選1レース目が始まっています。スタート前から始まる駆け引きや、風をとらえる技量などに着目しながら、熱い戦いを応援するのはいかがでしょうか。
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