パリオリンピック™で連日メダルラッシュの日本柔道。五輪開催国のフランスもいまや“柔道大国”として知られています。なぜフランスで柔道が広まったのでしょうか。バルセロナ五輪銀メダリストの溝口紀子さんとともに解説します。

■連日メダルラッシュ!舟久保遥香選手&橋本壮市選手が銅メダル獲得

南波俊雅キャスター:
柔道女子57キロ級で初出場ながら舟久保遥香選手が銅メダルを獲得。日本柔道通算100個目のメダル獲得となりました。

舟久保選手は「絶対に心を折ってはいけないと思っていたので、最後まで我慢して戦いました」と振り返っています。

そして表彰台を見てみると、金メダルがカナダの出口クリスタ選手、銀メダルが韓国のフ・ミミ選手ですが、2人とも母親が日本人だそうです。

バルセロナ五輪銀メダリスト 溝口紀子さん:
日本選手が「日本の環境が強い」というのを逆に表してくれたと思います。57キロ級は日本柔道の選手層が厚い階級だと思います。

南波キャスター:
男子73キロ級は初出場かつ、史上最年長のメダリストになりました、橋本壮市選手(32)です。準々決勝ではフランスのJ.ギャバ選手に指導3回で反則負けとなりました。

先ほどご紹介した舟久保選手も準々決勝でフランスのS.シジク選手に一本負けしました。フランスというのは「柔道大国」で強豪の選手もたくさんいるそうです。

■競技人口は日本の4倍 “柔道大国”フランス

フランスの柔道を見てみましょう。競技人口で比較すると、日本は約12万人、フランスは約53万人と、フランスの方がかなり多いです。さらに、小学校では柔道が必修科目の学校も非常に多いそうです。

さらに、「イッポン(一本)」という名前のワインがあったり、「ヤワラ(柔)」というタトゥーを彫っている人もいたりします。また、ウォーミングアップのことを「タイソウ(体操)」と呼ぶなどフランスの生活の一部に根付いています。

溝口紀子さん:
私もフランス代表のコーチでしたので、柔道をやっていると身元が保証されるというか「柔道家で、黒帯持っています」と言うと、「じゃあ、カフェもう一杯」とか。それからカフェのマスターが柔道をやっていると、すごく尊敬してくれます。

サッカーのジダン選手やNBAのフーニエ選手なども、子どもの頃に柔道をやり、体の強さや転び方などを覚えて、専門の種目に移る、というのがフランスのスポーツ強化の一つのあり方でもあります。

いま、フランスで柔道の競技人口が約53万人いますが、このうち約75%が10歳から12歳以下の子どもなんです。

■日本とフランスの柔道の違いは?

井上貴博キャスター:
日本の柔道とフランスの柔道の違いや、進化しているとか感じるところはありますか。

溝口紀子さん:
日本は逆に教育的なところがなくなりつつあります。総括されて選手やオリンピックなど、競技の方に注目されています。フランスの柔道は、そういうことよりも“子どものしつけ”、道徳の一つとして始めることが主流です。

例えば、自制心や尊敬、礼節、自分自身をコントロールするという、日本の武士道精神とフランスの騎士道精神がうまく調和されていると思います。

ホラン千秋キャスター:
何がきっかけで柔道がフランスで広まったのでしょうか。

溝口紀子さん:
歴史的には1930年ごろから、日本との文化史の交流が始まっていて、その先陣で川石酒造之助という日本人が日本の柔道を教えるために、例えば「大外刈り」や、「背負い投げ」など技がわからないので、「背負い投げを1番」「大外刈りを2番」というふうに技に番号をつけて覚えさせたり、級も色帯にして白帯、黄色帯から黒帯まで昇段できるようなシステムにしたり。

井上キャスター:
それまで色帯というのはなかったんですか。

溝口紀子さん:
ビリヤードの球の色からアイディアが浮かんだ、など諸説ありますが、川石酒造之助さんが始めたのではないかという説があります。

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<プロフィール>
溝口紀子さん

バルセロナ五輪柔道女子銀メダリスト
元女子柔道フランス代表コーチ
スポーツ社会学者(大学教員)
前静岡県教育委員長

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