開催中のパリオリンピック、柔道の男子66キロ級では、神戸市出身の阿部一二三選手が見事に連覇を果たしました。
一方で同じく連覇を目指した、妹の女子52キロ級・詩選手は2回戦で衝撃的な敗戦を喫しました。
2人の戦いについて、リオデジャネイロ大会と東京大会の柔道男子73キロ級で連覇を果たした、大野将平さんに話を聞きました。
■試合前から現地でも注目されていた阿部一二三選手・詩選手きょうだい
28日、パリ市内の柔道の試合会場。
音楽がかかる中、大勢のファンたちが観客席を埋め尽くしていました。
【橋本和花子キャスター】「試合前なんですけどこの盛り上がり!両手を左右に振って会場が揺れています」
実は、フランスの柔道人口は、日本のおよそ3倍という”柔道大国”。
現地の人に話を聞くと…
【フランスの柔道ファン】(Q.期待の選手は?)「アベ!アベ!」
【フランスの柔道ファン】「彼(阿部一二三選手)はチャンスをものにできる柔道家だと思う」
目の肥えたフランスのファンにも阿部きょうだいは注目されていました。
しかし、妹の詩選手は2回戦でウズベキスタンのケルディヨロワ選手にまさかの一本負けを喫しました。
■詩選手敗退に 大野さん「一瞬の隙狙って内股をしっかり返した。相手称えるべき」
阿部詩選手は衝撃的な2回戦敗退となりました。
オリンピックを連覇した大野将平さんは、この試合を次のように評しました。
【大野将平さん】「あの試合は相手選手を褒めるべきです。技ありを取られて心折れることなく、一瞬の隙を狙って、阿部詩選手の内股をしっかり返した。阿部詩選手が何か悪かったとかというよりかは相手を称えるべきじゃないかという印象でした」
その相手、ウズベキスタンのケルディヨロワ選手は、その後も勝ち進み金メダルを獲得しました。
大野さんは阿部選手に勝った瞬間の彼女の表情を見て、金メダルを予感したと話します。
【大野さん】「勝っても表情一つ崩さずに、本来であれば世界的なスターの阿部詩選手に勝ったら、ガッツポーズしたり飛び跳ねたりしていいところ、『ここで満足してないんだな』、『金メダル取る準備ができているんだな』、そういう印象を受けました。28日は彼女(ケルディヨロワ)の日だったんじゃないかと思います」
■「詩選手のカムバックに期待したいです」
敗戦後は泣き崩れ動けなくなった阿部詩選手。
大野さんは、詩選手の今後の復活劇に期待を寄せました。
【大野さん】「彼女にとって非常にショッキングな出来事だと思いますが、今まで彼女が残してきたもの、功績がなくなるわけじゃないので、まだまだ年齢的にも若い(24歳)ですし、阿部詩選手のカムバックに期待したいです」
■一二三選手は「危ない場面ほとんどなかった」
一方の兄・阿部一二三選手、「妹が負けて、僕自身も苦しい1日になったけど、妹の分まで兄が頑張らないとというう気持ち」だったと語り、決勝まで圧倒的な強さを見せて連覇を達成しました。
(Q.詩選手の無念を晴らした一二三選手については、どうご覧になりましたか?)
【大野さん】「東京五輪の時と比べて安定感が増したなと。ですので、1日通して危ない場面はほとんどなかったですね」
詩選手とは対照的に、危なげなく連覇を達成した阿部一二三選手。
その強さについて大野さんはこう評します。
【大野さん】「阿部選手の代名詞というのは攻撃の面だと思うんですけど、私が注目したいのは防御。受けの部分ですね。やはり、彼は危ない場面になる前に、危険察知をしてしっかりと回避する能力は非常に長けているなと」
■大野さん「3連覇を実現できるのは彼しかいない。勝ち続けて」とエール
大野さんと同じオリンピック連覇を成し遂げた、一二三選手。
4年後のロサンゼルス大会では、更なる高みを目指します。
【大野さん】「今後3連覇に向けてやるというふうに聞いていますので、それを実現できるのは彼しかいないので、出場した全ての選手が阿部(一二三)選手をリスペクトして、阿部選手を倒そうと今後もやってくるわけですから、それを乗り越えて勝ち続けてほしい」
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