パリオリンピックの開会式に先立って行われた、サッカー日本代表の初戦。南米王者のパラグアイと対戦し、快勝しました。サッカー元日本代表の槙野智章さんに詳しく伺います。
■「若い選手たちだけで、どうすればいいのかを考えてプレーできた」
上村彩子キャスター:
日本はパラグアイに対して5対0と快勝。1試合で5得点というのは、日本男子オリンピック代表史上最多です。
さらには初戦に勝利すると、決勝トーナメント進出の確率は100%(※日本代表2000年シドニー大会以降)ということで、幸先のいいスタートとなりました。
南米王者に完勝となったわけですが、起点となったのは日本が先制したあとの前半25分、相手選手が平河悠選手の足を踏み、レッドカード一発退場となったこと。これにより数的優位に立てたことも、そのあとの爆発につながったのでしょうか?
サッカー元日本代表 槙野智章さん:
ゲームの入りも非常によかったのですが、確かに前半25分のレッドカードで相手が1人少なくなったところから日本らしいサッカーが増えましたし、選手交代も含めてゴールのバリエーションも増えました。
井上貴博キャスター:
南米を勝ち上がったパラグアイ以上に、日本の個人技が圧倒した気がします。こんなことってあるんだなというか、個人技ではなかなか、日本は難しいかなと思っていたのですが…。
サッカー元日本代表 槙野智章さん:
個人としてのレベルなどは、確かに南米やヨーロッパの選手に比べると劣るかもしれません。しかしこのチームのよさというのは、レベルアップもそうですが、チームとしてどう戦うかという戦術面を含めたクオリティがかなり高いと思います。
やはりアジア予選を戦ったときよりも、数か月経って、かなりレベルは上がってきているのかなと思います。
ホラン千秋キャスター:
試合の映像を見て、槙野さんは「この歳で海外に行っているのがすごいよね」とお話をしていましたが、どのような部分が具体的にすごいのでしょうか?
サッカー元日本代表 槙野智章さん:
もちろん、各自Jリーグの所属クラブでポジションを取って活躍して、そこが評価されて海外に行ったという選手もいますが、自ら海外に練習参加をして拠点を変え、厳しい環境に身を置く選手というのは、この数か月でかなりガラッと変わりました。そこが非常によかったかなと思います。
井上キャスター:
数か月で変わっているんですか?
サッカー元日本代表 槙野智章さん:
変わっていますね。個人としての能力もかなり上がっていますが、チームとしての団結力。オーバーエイジを今回は呼んでいませんが、若い選手たちだけでどうすればいいのかを考えてプレーできたのはいいかなと思います。
歴史・時代小説家 今村翔吾さん:
日本、めちゃくちゃ強いんですよね。「ですよね」と疑いたくなるというか、このような点数になるとは思っていなかったので、前評判との差にすごく驚いています。
実際、パラグアイは強いんですよね?
サッカー元日本代表 槙野智章さん:
めちゃくちゃ強いです、パラグアイも南米では1位で上がってきていますので。
日本が今回入ったグループDは“死のグループ”と言われており、各大陸で上位に上がってきたチームが同じになっているので、最初はグループステージを突破するのは難しいと言われていましたが、パラグアイ戦の結果は、かなりいろいろな国に対して衝撃を与えたと思います。
ホランキャスター:
厳しいなかで、オーバーエイジ枠で選手を招集しないという判断はどうなのでしょうか?
サッカー元日本代表 槙野智章さん:
今回のオリンピックに関しては「オーバーエイジを招集したかった」というのが本音で、招集したかったのに各クラブから「ノー」と言われてしまったということです。
ただ、呼べなかったからマイナスなのではなく、呼べないなら、いる選手でしっかりと。チーム力もそうですし、やりたいことというものがはっきりします。
オーバーエイジで新しい選手が来たら、新しい戦術に馴染むまで時間がかかるので、それだけのリスクもあります。だからこそ、オーバーエイジがいないならいないで、予選を戦ったメンバーで、団結を含めて監督のやりたいサッカーをしっかり理解しているから、こういうサッカーができるわけです。
■2得点の活躍をした三戸選手と藤尾選手の強みとは?
上村キャスター:
日本はそもそも、アジア最終予選を1位で通過しており、アジア王座として今回のパリオリンピックに臨んでいます。
今回のパラグアイ戦で2得点の活躍を見せたのが、三戸舜介選手(MF)と藤尾翔太選手(FW)の2人です。
三戸選手はオランダのスパルタ・ロッテルダムに所属しており、身長164センチと小柄ではありますが、2023年のJリーグベストヤングプレーヤー賞を受賞しています。
藤尾選手はFC町田ゼルビアに所属しており、2023年に加入した町田ゼルビアではJ2優勝に貢献しました。
槙野さんは三戸選手に対して「ドリブル、パス、シュート含めて全てを高いレベルでこなせる」と評価しています。
そして藤尾選手に対しては「真ん中だけでなくサイドも出来るユーティリティプレイヤー」という評価です。
サッカー元日本代表 槙野智章さん:
なかなかいないですよ、こうやっていろいろなことができる選手というのは。点も取れ、パスもドリブルもできる選手はなかなかいないので、日本にとっては大きな武器だと思います。
上村キャスター:
圧勝のポイントとして槙野さんが挙げているのが前半19分、三戸選手の1点目で、「先制点を早い時間に、流れの中から冷静に取れたのが大きい」とのことでした。
■予選リーグ突破がかかる次回のマリ戦、槙野さんの予想は…
上村キャスター:
そして気になる次の試合ですが、アフリカ予選3位のマリ代表と戦います。
2024年3月に行われた国際親善試合で、日本は1対3でマリに逆転負けしてしまっています。マリ戦に勝利すれば予選リーグ突破が決まりますが、56年ぶり悲願のメダルへ、このまま勝ち進めるのでしょうか?
槙野さんは「3月の敗戦から日本代表は大きく進化した。大会中のさらなる成長も期待できるので、メダルも狙えます!」と答えています。マリ戦の予想は、2対0で日本勝利ということでよろしいでしょうか?
サッカー元日本代表 槙野智章さん:
これは間違いないと思います。むしろ、マリが3月の敗戦のイメージで来てくれると助かります。日本はそこからかなり成長しているので、もうギャフンと言わせましょう。
井上キャスター:
あえて不安要素を挙げるとすると何でしょうか?
サッカー元日本代表 槙野智章さん:
大勝したあとというのは気が緩みがちなので、もう1回初心に戻ることです。自分たちはこれで浮かれてはいけないというメンタリティを持つことが大事だと思うので、1回リセットしたほうがいいです。
ホランキャスター:
槙野さんは割と浮かれるタイプ?
サッカー元日本代表 槙野智章さん:
僕は浮かれるタイプなので、周りからストップをかけられるのですが、このチームは賢い選手たちが多いので、そのあたりは問題ないと思います。
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<プロフィール>
槙野智章さん
2018年ワールドカップロシア大会 日本代表DF
サンフレッチェ広島・FCケルン・浦和レッズなどでプレー
今村翔吾さん
「塞王の楯」で第166回直木賞 受賞
歴史・時代小説家
30歳までダンス講師
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