(1996年9月1日、山梨・富士桜CC、6409ヤード、パー72)
前日首位に立った岡本綾子が通算6アンダーで、1994年9月の広済堂アサヒゴルフカップ以来2年ぶりの優勝を果たし、賞金1080万円を獲得するとともに、通算60勝(海外18勝)を達成した。これは、樋口久子の72勝に次ぐ史上2番目の勝利数。
岡本は、4バーディー、3ボギー。一時は中盤で大城あかね、橋本愛子らに並ばれたが、11、12番の連続バーディーで再び抜け出した。18番、岡本はグリーンをはずしてボギーとしたが、追い上げた大城を1打差で振り切った。
2位は大城。1打差の3位にはマーニー・マクガイヤ(ニュージーランド)。橋本と野呂奈津子が4位に入った。
順位 | スコア | 選手 | 計 | 1R | 2R | 3R |
---|---|---|---|---|---|---|
優勝 |
-6 |
岡本綾子 |
210 |
72 |
67 |
71 |
2 |
-5 |
大城あかね |
211 |
70 |
71 |
70 |
3 |
-4 |
M.マクガイヤ |
212 |
71 |
69 |
72 |
45歳、22年目の万感「夢みたい」
この2年間勝てそうで勝てない。59勝もしている岡本綾子でも、〝あと1勝〟が永遠のかなたのように思われた日があったことだろう。
45歳。日ごろは忘れている年齢をプレーのたびに思い知らされたことも多かったはずだ。だが、岡本綾子はよみがえった。
379ヤードの18番。2位大城あかねとは2打差あったが、岡本は第2打をグリーン右にはずした。1メートルちょっとに寄せる。大城の第2打は、ピンから約6メートルに乗っていた。
大城が入れて、岡本がはずせばプレーオフだったが、大城のパットはカップをかすめ、岡本は2パットのボギーで1打差の逃げ切り。
なにもかもが胸にこみあげてきて「ついこの間優勝したような気がして…」「子供っぽいかもしれませんが、夢みたいです」と、しばらく目を赤くしていた。
この勝利で樋口久子の72勝に次ぐ60勝。ソフトボールの左腕エース兼4番打者からゴルフに転向して22年目の、大きな区切りだ。
1打差の優勝争いが続き、本来なら、もっともっと緊迫したものが伝わってくるはずだが、不思議と静かな進行だった。
岡本も、女性らしい表現でいった。「朝から、自分の献立通りに行くような気がしてました。いくらおいしい献立を作っても、相手がそれ以上においしく作ることもありますけど、きょうは相手が眼中になかったというか、優雅にゴルフができました。こんな気持ちでやれて、ぜいたくですね」。若いころ、くじけやすくて〝フニャ〟といわれた。13年前、米国に渡ったばかりのころは寂しさに耐えかねて、酒でまぎらわせたこともあったという。
好きな道とはいえ、ゴルフで身を刻むような人生の途中で得た60勝。ここらで「ぜいたく」がいくらあってもいい。(高橋幸雄)
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