先週末、引退会見を行ったばかりの長谷部誠選手に独占インタビューをした。サッカーから今後活動まで、そして、その卓越した“キャプテン”シーの源流に迫った。
“キャプテン”長谷部、現役22年のほとんどはドイツに在籍
日本が誇る偉大な“キャプテン”22年の現役生活はそのほとんどをドイツ・ブンデスリーガで過ごした。
(08-13ヴォルフスブルク、13-14ニュルンベルク、14-24フランクフルトに在籍)
積み重ねた試合数はアジア人最多の384。時には“キャプテンマーク”を巻き、数々のタイトルを獲得し異国の地で大きな爪痕を残してきた。
(獲得タイトル:08-09ブンデスリーガ、17-18リーグカップ、21-22ヨーロッパリーグ)
“サプライス”元代表ザッケローニ氏よりのメッセージ
日本代表のキャプテンとして歴代最多81試合に出場した長谷部が2014年ブラジルワールドカップで日本代表を率いたアルベルト・ザッケローニ監督からのメッセージを紹介した。
アルベルト・ザッケローニ氏:
Ciao(チャオ)!キャプテン!
君が僕と代表チームにしてくれたことへの感謝を伝えるため、このメッセージを送ります。ロッカールームでは(僕に代わって)チームのためにたくさん話してくれたね。仲間をまとめ、チームに必要な意見を言ってくれていた。
出来るだけ早く直接会って、ハグをしたいよ、日本かイタリアでね。君がこれから進む未来をいつも関心を持って見ているよ
Q.「ハグしたいよ」とのラブコールに対しては
長谷部誠:
ザッケローニさんとの信頼関係というものはずっと今も続いていますし、本当に自分にとっては大きな存在なので、もうすぐドイツに戻るんですけれども、イタリアに行って、会いに行きたいなと思います。
2014年ブラジルワールドカップ グループリーグ敗退の経験
ザッケローニさんと共に臨んだ2014年ブラジルワールドカップでは“史上最強”と称され、期待も高かったがグループリーグ敗退という結果となった。キャプテンとして、選手として感じたものがあった。
長谷部:
やはりあのときは少し理想を追いすぎたかなと思う部分もあって、もう少しサッカーの世界の厳しさというか、そういうものを理解していれば、もう少し違う戦いをしていたのかなとも思いますし、それはその後の自分のサッカー人生にも大いに生きているところですね。
20代から綴っている“監督ノート”
引退会見等では今後は指導者のキャリアをスタートさせると明かした長谷部さん。実はこれまでいろんな監督の指導を受ける中、“監督ノート”を作成し細かく観察を続けてきたという。
長谷部:
20代のころから面白い練習であったりとか、後は監督のチームに掛ける言葉で自分の中に刺さった言葉とか、そういうものはずっとノートしたりしていました。その当時は(指導者になる意識は)あまりまだなかったんですけど、やはり年齢を重ねて30超えたくらいからは指導者というものを意識するようになり、そこから特に監督の言動、全てのそういう所をすごく注視するようにはなりましたね。
意識するのは「パッション、情熱を表に出せる監督」
Q.ご自身がドイツや本当にヨーロッパのトップチームの監督をやってみるという、今後に向けての実感はあるか?
長谷部:
そこは本当に、非常にまだまだ長い道のりで本当に、非常に難しい挑戦だとは思いますけど、難しいからこそやりがいもあると思いますし、ただ、こつこつとやっていきたいと思いますね。
Q.ファンからは日本代表の将来の監督像というのをどうしても長谷部さんに期待されている。今からイメージをするとして、これだけは絶対に外さないぞと、大切にしたい事はあるか?
長谷部:
監督として、もちろんこれから指導の経験を積んでいくことで自分のやり方というのは見つけていくとは思いますけど、ただ自分がこれまで見てきてすばらしい監督だなと思うのは、しっかりと<パッション、情熱を表に出せる監督>だと思いますので、それをしっかりと表に出して選手にそれを見せることでそれがショーでもいいと思うんです。やはり、それを見せることでチームに熱量なんかが伝わると思うのでそれは絶対、自分もやりたいと思います。
Q.選手としての長谷部さんは冷静に分析されている感じだったが…
長谷部:
“キャプテン”という立場ではそういう所も見せていましたけど、やはり、それぞれの立場で、監督というのはそういうもの(パッション、情熱)も見せなければいけないと思いますね。
“キャプテン”長谷部に聞きたい事
長谷部さんが16年間もドイツで戦ったという中で、街頭でのアンケートの声を紹介した。
▼どう臨機応変に監督ないしは指導者に沿って、“自分をアピールしてきたか”を学びたい
▼上に立ってリーダーシップをとってきて“人のまとめ方”“人をひきつける力”とは
▼上手くいかない事もあった中で、“どうやったら気持ちを切り替えられるか”
「キャプテンは中間管理職」
Q.やはり、“キャプテン”長谷部誠への質問が多く聞かれた…
長谷部:
僕自身も、そんなに人間的にはまだまだなんですけど、リーダーとしてというところでいえば“キャプテン”はどちらかというと組織でいったら上司と部下の間に立つような立場では、“中間管理職”なので<とにかくコミュニケーションを大事にして>どっち寄りにもつかずにということは考えていましたけどね。
Q.ドイツでも“キャプテン”をやるという信頼はどのように…
長谷部:
自分で言うのも何なんですけれども、やはり言葉よりも行動で示すというか、やはり自分はサッカーに対して、チームに対して、常に誠実に向き合ってきたつもりなのでそういうものを周りが見てそういう立場にさせてくれたと思う。なので、そこはずっとやってきた事ですね。自分はこれだけ、ちゃんと俺の背中を見てちゃんと理解してくれよという時があるのですけど、なかなか理解してくれない時もありますよね。それぞれの価値観があり、それぞれやり方があって、だから、僕はそれをもちろんみんなのそういうものを尊重しますし、だから、基本的には、1つの目標、ゴールというものが、例えば、チームであれば勝つという目標があれば、そこへのプロセスというのはみんなそれぞれあっていいと思っているのであまり一つにまとめようということはあんまり思ってなかったですね。
一番は“客観視”「自分を知ることを大事にしてそこから行動する」
Q.引退会見では『自分を常にサッカー選手として“客観視”できたから』ここまで続けられたし、後悔もないし、これは“キャプテン”としての実績にもつながっていると思うが、“客観視”するコツはあるのか
長谷部:
“客観視”という言葉でもそうだと思いますし、何でも物事を何かチャレンジするときでも何でもそうだと思いますけど、まずは己を知るという意味で自分の強み自分の弱み、そして組織であれ、チームであれば、このチームに自分が自分の長所をどう生かせるかと、そういうふうにずっと考えてきてそれで僕はこの16年間ドイツで生き残ってきたって事があるのでだから一番は、まず“客観視”。自分を知ることを大事にしてそこから行動することですね。
Q.組織のためという事を考えると自分を押し殺す、自身を後ろに控えさせるという事も必要なのか
長谷部:
僕にとってはその行動も誇りであって、自分のやりたい事を突き通すだけではなくチームのためになるのであればそこは一歩引くというのも別に自分の芯となるものを崩すわけではなく、それも自分のやり方だと思ってやりますけどね、喜んで。
子供達へ いろいろチャレンジして「自分を知る事は失敗して分かる」
Q.海外にこれから挑戦しようとするサッカー選手だけではなく、子供達にメッセージを送るとすれば…
長谷部:
子供達というのは何事もチャレンジする時というのは、自分を知る事が一番最初大事だと思うんですね。自分を知るという事はやはりチャレンジから、いろいろ失敗して分かっていく事だと思うので、いろいろチャレンジして欲しいなと子供達にはそう思いますね。
今後へ向けて「僕は本当にコツコツやっていきます」
Q.長谷部さんも日本代表監督やドイツ代表監督など、たくさんの期待が…
長谷部:
皆さん、期待して頂けるのはありがたいんですけど、僕は本当にコツコツやっていきます。
Q.休みの時に…今、したいことは?
長谷部:
子供たちと家族と一緒に旅行に行って時間を気にせずゆっくりしたいです。
長谷部誠(はせべ・まこと)
1984年1月18日、静岡県藤枝市出身。藤枝東高⇒浦和レッズ⇒ヴォルフスブルク(独)→ニュルンベルク(独)→フランクフルト(独)。2006年から2018年まで日本代表。主将としてW杯に3度出場(2010年・2014年・2018年)。主将として出場した代表での試合数は81試合で、日本代表歴代1位。国際Aマッチ 114試合 2得点。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。