「ゲームをうたう」は,詩人がゲームからインスピレーションを受けて詩を作る企画です。詩人の言語によって,あなたの知っているゲームはより新鮮に,あなたの知らないゲームはより好奇心を誘う姿へと,新たに再構築されるでしょう。

 第4回は,詩人の草間小鳥子さんが,「魔導物語A・R・S」をイメージした現代詩を書き下ろします。あの頃の冒険を思い浮かべながら,詩編を味わってみてください。

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オワニモ
草間小鳥子

ひらきかけた花の
青くかおる幼年
向日葵のさざめきはあかるく
(ぼくは(ぼくたちは
迷いの森で
木々が呼ぶ方位へ
火と水の言葉にしたがって
ささやきに痛む腕を踏み越えた
南十字星〈サザンクロス〉
深々と昏い鏡の底から
咲きこぼれる薔薇に
ねむれる息さえむせかえり
手放すことで手に入れた
あるいは奪うことで
だから風 てのひらの象
消えてしまうということは
さびしいことではないよ

 uyenimo〈オワニモ〉

忘失にはみじかい時をこえ
(ぼくは(ぼくたちは
fiend empireにふたたび耳すます
「扉を開けるためのイシが足りない」
あたたかく闇に迎えられ
傷つき
傷つける道を
辿るしかない
(ぼくは(ぼくたちは
崩折れるまま
他愛ない呪いで
すこしだけ回復する
火と水の言葉にしたがって
木々が呼ぶ方位へ
小さなものたちがさざめく
あかるい迷宮〈リアル〉で
(ぼくは(ぼくたちは
青くかおる幼年
ひらきかけた花や
ほほえむ闇の

■草間小鳥子

詩人。近著に「源流のある町」(七月堂)、「あの日、水の森で」(土曜美術社出版販売)。2024年秋、新詩集「ハルシネーション」刊行予定。
公式X:https://twitter.com/eureka1328

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