インディーゲームの展示会「東京ゲームダンジョン5」が,2024年5月4日に都立産業貿易センター浜松町館で開催された。


 インディーゲーム好きにはすっかりおなじみになった本イベントは,個人や小規模チームが制作したデジタルゲームを,来場者に気軽に遊んでもらうための催しだ。
 回を重ねるごとに出展者と参加者は増え続けており,今回は都立産業貿易センター浜松町館の3階と4階の2フロアを使用しての開催となった。
 このペースで拡大を続けていけば,ゲームダンジョン10あたりでは館内の4つの展示場をすべて使用している可能性もあるかも?

都立産業貿易センター浜松町館

 と,少し冗談めかしてお伝えしたが,本イベントは出展内容に対する審査が存在せず,運営体制も堅実かつ安定的であるそうだ。もし出展を希望する個人やチームがこのまま増えていくようなら,全館を借り切ってのイベント開催もありえない話ではない。
 今回も数多くの印象的な作品に出会えたので,記事を前後編に分けて紹介していこう。

数々のピンチを越えていく懐かしいタイプのアクションゲーム「ピンチ50連発!!」(ゲームスタジオ)。「ピットフォール」のオマージュだろうか

大行列ができていた「Buzz or Die」のブース(サークル無関心)。内容は,タイトルの通り「配信で視聴率を稼いだ者だけが生き残るデスゲーム」とのこと。時間の都合で試遊はできなかったが,今後の動向をフォローしてみたいと感じた作品だ


●Clock Rogue
出展者:MONO ENTERTAINMENT


 ハリネズミの体内が舞台のアクションゲーム。プレイヤーはそこで活動する「ハリ細胞」となってウイルスと戦うのだが,その方法がなかなか変わっている。
 コマンドの「スラッシュ」「ブロック」「必殺技」が時計の盤面のようなものに配置されており,時計の秒針が盤面を一周する間にタイミングよくボタンを押すことで,針が指しているコマンドを2つまで選べるのだ。

たとえばこの盤面なら,3秒付近に攻撃と必殺技,6秒付近に攻撃とブロック,11秒付近に攻撃と強力なブロックが配置されている。間のブランクで押してしまうと何もできない

 ただ実際の操作中は,この秒針やコマンドは見えなくなってしまうので,プレイヤーは自分で1,2,3……と秒数をカウントしながら目当てのコマンドあたりでボタンを押すことになる。ルーレットやリールの目押しを「心眼」で行うような感覚が新鮮だ。


 心が落ち着いていて,秒数を正確にカウントできているうちは攻撃も防御もしっかりこなせる。しかしピンチに陥ったときなど,冷静なカウントが難しくなると如実に失敗が増えていく。
 いかに平常心を保ちつつ秒数をカウントできるかが,プレイのポイントとなりそうだ。戦闘に勝つと時計の盤面を強化するアイテムを選ぶことができ,戦力をアップできる。


 作者のmono氏(@mono2568)によると,「ローグライトやデッキを構築していくゲームの面白さに加えて,自分のテクニックで技を出している感覚を出したかった」ため,このような仕組みを考えたそうだ。




●Virtual.Noah CardGame
出展者:RTG-Studio


 高校生2人のチーム,RTG-Studio(@RTGstudio_indie)が開発する作品だ。スキルを駆使して戦う対戦型カードゲームに将棋を組み合わせたような,距離や移動の概念が加わったバトルを楽しめる。


 勝利条件は,敵軍のリーダーユニットを倒すこと。ドット絵風のかわいいキャラクターが描かれた各カードには,「周囲のカードのダメージを軽減する」「2回移動できる」「移動は2ターンにつき1回だが高ダメージ」など,さまざまなスキルが設定されている。
 これらがうまく組み合わさるように布陣し,相手のフォーメーションを崩すべくアプローチしていくのが遊び方のポイントだ。

カードの種類やスキル

 またカードが持っている武器を変更したり,トラップを仕掛けたりと,さまざまな戦いの選択肢があるらしい。それもあって,カードの性能やシステムをしっかりと把握し,時間をかけて遊んでみたいと感じさせる奥深さも持っていた。
 出展されていたバージョンは対人戦のみだったが,シングルプレイの実装も予定しているとのこと。



●くるくり
出展者:みかんラビリンス


 床を自走するタイプのクリーナーを操作し,さまざまなものを「掃除」していくステージクリア型のアクションゲーム。クリーナーには全12種類の掃除用具をくっつけることができ,それらはクリーナーの回転する動きに合わせてくるくる動く。それがクリーナー側の操作感にも影響する。


 洗剤を噴射してスピードアップしたり,スプレーでシューティングゲームのように弾を撃ったり,果てはチェーンソーやショベルカーを「振り回して」周囲のものを破壊し尽くしたりと,クリーナーのかわいさとやれることのギャップがけっこうすごい。
 ステージは,周囲を探索するものやレースゲームのようにコースを進むもの,地上と上空の二層に分かれているものなど,プレイヤーを飽きさせないアイデアが盛り込まれていて,次はどんなステージが待っているのかワクワクしてしまう。


 さまざまな「役」を成立させて高得点を狙うスコアシステムも備えおり,完成が楽しみになった作品だ。






●酔っぱライジング
出展者:宮澤卓宏


 本作の作者である宮澤卓宏氏と言えば,昨年の3月に発売したJoy-Conとトイレットペーパーを組み合わせて遊ぶSwitch向けアクションゲーム「紙がない!」で注目を集めた。
 「酔っぱライジング」は,Joy-Con(R)に搭載されたモーションIRカメラの前で,酔っぱらっている人のようにフラフラ動くと,ゲーム内の主人公が“酔っぱライジング”に変身! この状態になるとほぼほぼ無敵になり,敵の攻撃や電気に触れてもまったく平気になる。


 ただし酔っぱらいならではの弱点も。階段を登れなくなり,座り心地のよいソファーなどに触れてしまうとそのまま寝てしまいミスとなる。なんということだ!


 冗談から生まれたようなゲームだが,IRカメラの前で上体を前後左右にフラフラさせる動きはしっかりインナーマッスルを刺激してくれるし,軽い運動にもなる。プレイを続けることで姿勢の改善にもつながりそうだ。



●マイクカート(仮称)
出展者:六方


 一見すると,普通のハンドル型コントローラを使ったレースゲームに思えるが,マイクに音声を入力することで車が加速するという,ぶっ飛んだ発想のゲームがこちら。
 試遊時にどんな音声・言葉をマイクに吹き込もうか思案したものの,結局思い浮かんだのはエンジン音やドリフト音だった。筆者はあまり面白みのない人間である……。


 とはいえ,「フォオオオオン」(エンジン音)や「ドキャキャキャキャ」(ドリフト音)など,車の音マネをマイクに吹き込むことで自車が加速したり減速したりする体験は,ちょっと恥ずかしくもあるが童心に返ったような楽しさがあった。
 ライブ配信などで遊んでもらうことを意識しているそうで,もしかしたら「スイカゲーム」などのように流行するかもしれない。またSteam Deckのマイクでも音声を認識してくれるので,電車内や出先などでも遊べるそうだ。同機をお持ちの人は,発売後にぜひ試していただきたい。


 ちなみに,隠しコマンド(音声)を入れれば逆走できるそうだが,なかなか反応してくれず,忘れかけていた恥ずかしさが再度こみあげてきた。

こちらが筆者のクリアタイム。暫定1位でした


●StreamStratos
出展者:RERISE GAMES


 パラメータの振り分けでショットの性能が多彩な変化を見せる,アクションシューター「ITERAZERS」を手がけたROHI氏(@Rohi_indiedev)の新作だ。
 今作は「弾を撃たないTPS」といった感じで,プレイヤーは主人公の高速移動や回避アクションの制御に専念する。攻撃は主人公の横に浮かんでいる小型機に任せることになるが,有利な位置取りやスペシャル攻撃の発動タイミングなどを考える必要があり,完全に任せきりというわけでもない。


 敵の攻撃のうち,緑色の弾はシールドで吸収でき,パワーアップのリソースとして利用できる。シールドの回数には限りがあるので,いつ防御に使い,いつ吸収するかの判断も重要になりそうだ。


 コンセプトは,プレイヤーの操作の負担を減らしつつ,アクションを制御する面白さ,パワーアップによる操作感覚の変化を味わってもらうこと。もちろん,今回もパラメータの振り分けの要素があるので,これらがしっかり実装されたあとの手触りが楽しみである。



●おっくりオーバーフロー
黒猫のゲーム屋さん


 解説動画などでおなじみの「ゆっくり」と同じような,顔だけの「おっくりさん」に追われる3Dアクションゲームだ。
 舞台は群馬県。ステージの地形やアイテムもすべて群馬に関するもので,かなりの地元愛が感じられた。制作にはRoblox Studioを使用しており,無料公開中とのこと。
 主人公を追ってくるおっくりさんに,名物「焼きまんじゅう」や「群馬県県庁」(!)を食べさせると,おっくりさんはどんどん増殖する。おっくりさんの数がステージごとのノルマに到達するとクリアとなる。


 なおプレイを始めて少し経ってから気がついたのだが,このゲーム,おっくりさんに触れても死なないし,ゲームオーバーにもならない(笑)。
 作者のくろにゃんこ氏(@blackcat_0106)に話を聞いてみたところ,ゲームを作りながらお子さんとお話したり,実際にプレイしてもらったりしているうちに,今の形が出来上がっていったのだそうだ。親子でゲーム制作を楽しんでいる光景が思い浮かんでしまう。

お子さんの肉声で「おっくりさん♪おっくりさん♪」と歌うBGMがちょっとクセになる。きっと「ゆっくり」とお母さんが大好きなのだろう


●超増税大国
出展者:ソラマメ工房


 歴史的な円安と物価高,そしてたび重なる増税……。これらが国民生活に確実に影響を及ぼしている昨今,タイトルを見て思わず「うっ」とうめき声が出た人も多いかもしれない。


 遊び方はシンプルで,ターンごとにひとつ,3択の中から街に置く施設を選び,あとはどれだけ利益が出るか見守るというもの。この国の税金は,ノルマ性というか事業者の利益に関係なく設定されるので,納税達成のハードルはどんどん上がっていく。

ゲームショップは「効果なし」。なかなか皮肉が効いている

 登場する施設は100種類以上になるそうで,街に置いた施設の組み合わせでシナジーが得られ,より収益がアップするらしい。筆者がプレイしたときは,競馬場やカジノなどギャンブル系の施設を多めに引いてしまい,ラスベガスのような娯楽の街を目指すこととなった。もちろんもっとマジメな街も作れるようだ。




 前編は遊びのアイデアや,雰囲気のユニークさなどが目に止まったタイトルを集めてみた。後編はキャラクターや物語の魅力が立った作品と,よりディープな世界を描いたものをお届けしよう。

次回紹介予定の作品をチラ見せ

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