公益財団法人 東京都歴史文化財団は昨日(2024年4月22日),日本橋三井タワーアトリウムにおいて,スマートフォンアプリ「ハイパー江戸博 日本橋繁昌記 江戸のお金編」(iOS / Android)の制作発表会を開催した。
 博物館が豊富な資料を基に発信するアプリ「ハイパー江戸博」シリーズの第3弾で,プレイヤーは勘当された若旦那となって江戸時代のお金事情を体験できる。

会場には試遊機も用意され,アプリを体験できた


ふんどし一丁で放り出された若旦那となり

江戸のお金事情を体験する


 江戸時代から現代までの歴史を実物資料や模型で紹介する江戸東京博物館は,2025年度をメドとした大規模改修工事で休館中だ。そうしたなか,収蔵品を新たな観賞体験として発信する「TOKYOスマート・カルチャー・プロジェク」の一環として開発されているのがスマートフォンアプリ「ハイパー江戸博」シリーズである。
 博物館の公式アプリと聞くと,観覧中心の受動的なものを連想しがち。しかし,このシリーズは「AFRIKA」などの作品を手がけたゲーム制作会社のライノスタジオが開発を担当しており,プレイヤーが自発的に探索を行うゲーム仕立てとなっている。

 2022年には隅田川の川開きを体験する「ハイパー江戸博 江戸両国編」(iOS / Android),2023年には明治元年〜40年までの移り変わりがテーマとなった「ハイパー江戸博 明治銀座編」(iOS / Android)が配信され,アメリカや台湾,イギリスなどの海外を含めて19万ダウンロードを記録しているという。4Gamerでは発表会をレポートしているので,気になる人は読んでみてほしい。

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オリジナルアプリ「ハイパー江戸博」制作発表会レポート。バーチャル空間に再現された江戸を自由に散策できる

 公益財団法人東京都歴史文化財団は,2022年4月22日に江戸東京博物館において,オリジナルアプリ「ハイパー江戸博」制作発表会を開催した。本アプリは博物館とゲーム制作会社が共同開発するもので,バーチャル空間に再現された江戸を自由に散策しつつ,収蔵品から江戸の知識を学べる。アプリの概要や今後の展開などが語られた発表会の模様をお届けする。

[2022/04/23 12:00]
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明治時代の東京をゲーム仕立てで再現。「ハイパー江戸博 明治銀座編」制作発表会レポート

 公益財団法人東京都歴史文化財団は,2023年4月26日にスマートフォン用アプリ「ハイパー江戸博 明治銀座編」の制作発表会を行った。本作は,銀座四丁目の交差点を舞台に、明治から近代への移り変わりを体験できるというもの。その制作発表会の様子をお伝えしていこう。

[2023/04/27 15:20]
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 今回の「ハイパー江戸博 日本橋繁昌記 江戸のお金編」の主人公は江戸の若旦那。若旦那は芝居に入れ込んで放蕩三昧した結果,勘当されてしまった。ふんどし一丁になった若旦那は江戸でさまざまな仕事に就き,お金を稼いでいく。そうしたなかで,プレイヤーは江戸のリアルな収入と支出といったお金事情を知ることができるという。若旦那には12種の服装があり,仕事を変えるごとに変化する。プレイ時間は8時間ほどで,東京江戸東京博物館から選ばれた100種の収蔵品を観ることができる。


若旦那には12種の服装があり,仕事を変えるごとに変化

ライノスタジオ 開発チーム プロデューサーである田口 仁氏
 江戸時代のお金事情とはなんともユニークなテーマだ。ライノスタジオ 開発チーム プロデューサーである田口 仁氏によれば,懐事情というのは面と向かっては聞きづらいが気になる話題であるのに加え,ここ数年はキャッシュレス決済の普及や円高などお金に関してさまざまな事柄が変化していることから,今回のテーマが決まったのだという。
 主人公の若旦那は落語に出てくるような典型的な世間知らずなため,勘当されての一人暮らしは驚きの連続となる。この視点は江戸時代を知らないプレイヤーと同じであり,若旦那の驚き=プレイヤーの驚きとなることから,こうした設定になったのだそうだ。


ライノスタジオ CTO/アートディレクターの谷口勝也氏
 ゲーム内では,制作発表会の会場ともなった東京・日本橋一帯1kmほどを原寸大のバーチャル空間として再現しているが,開発にあたっては町の密度を上げることが目標となったという。開発チームは前2作の経験もあることから本作の制作を楽観視していたものの,いざ作業を始めてみるとうまくいかず,江戸の建物について勉強し直すことになった……とアートディレクターの谷口勝也氏は語る。
 その理由は,意外にも「建物が整然と並びすぎていた」ことだった。実際の江戸では建物の広さや大きさにある程度の幅があったそうで,こうした部分を踏まえることで,より江戸らしい町並みを再現できたという。
 日本橋の近辺はさまざまな浮世絵でも描かれており,作中では元となった景色を訪れることもできる。浮世絵にするうえではパースなど絵画的な技法が使われており,実際の景色どおり描かれているわけではないことが分かるというから,バーチャル空間のリアルさがうかがえる。

バーチャル江戸(左)と,現在の東京(右)。高速道路は川の上に走っており,江戸時代の姿が垣間見える 実際の江戸では建物の広さや大きさにある程度の幅があったという。それも踏まえてより江戸らしい街並みを再現した

前作,前々作と同様に開発にはUnityが採用されている

 登場するキャラクターは200種以上。時間帯にもよるが,バーチャル空間内を1300人ほどが動き回っているという。モーションキャプチャを担当したのは日本舞踊家の藤間涼太朗氏。「ハイパー江戸博」と同様,よりリアルに着物を着た人の所作を再現するべく,着物姿でのモーションキャプチャが行われているそうだ。


 ゲーム内には江戸東京博物館35万点の収蔵品から厳選した100点が,3Dスキャンを用いた3Dモデルや写真の形で収録されている。通常,収蔵品のデジタル化においては表面のみをスキャンすることが多いそうだが,今回はパーツに分解してスキャンを行った品もある。成果の一つが江戸時代の弁当箱で,分解してスキャンしたことにより,ゲーム内でも当時のままに分解できるようになっている。これはスキャンの専門家チームと協力したことで得られた成果なのだそうだ。なお,収蔵品の閲覧においては後日ARへの対応が行われるとのことだ。

パーツ単位で3Dスキャンされた弁当箱。当時のままに分解でき,飲み物入れも取り外せる

3Dスキャンされた小判はさまざまな角度から観賞できる 写真で収録された収蔵品も

江戸東京博物館 学芸員の遠藤美織氏
 発表会では,江戸東京博物館 学芸員の遠藤美織氏から,学芸員の立場からの見どころが語られた。日本橋は「芝居千両」「魚河岸千両」「越後屋千両」といった,現在のお金にして1億円以上が1日で動く場所であり,江戸のお金を扱うにはもってこいということで舞台に選ばれたそうだ。
 若旦那の賃金や支出についても資料をもとに考証を行い,リアルな額となっているという。例えば,当時大八車を押す仕事の賃金は1.6kmで500文(約12000円),3.9kmで1貫48文(約25000円)と距離で決められていたという資料が残っている。また,天ぷらは4文(約100円),かけそばは16文(約400円),寿司は8文(約200円)であることが分かっており,こうした知識をゲーム内でも確認できるそうだ。
 また,ゲーム内には「椿説弓張月」「南総里見八犬伝」で知られる曲亭馬琴を始めとした有名人が登場し,若旦那と交流するとのこと。日本橋は版元としても有名な場所であり,ここから馬琴が登場することになったのだそうだ。


こちらは参勤交代のための大名行列についての資料。大名行列の中でも直属の家臣は全体の10%,陪臣は40%ほど。人材派遣業者から派遣された臨時雇いが30%以上を占めており,人件費も膨大であったという。写真は桑名藩が人材派遣業者に支払った人件費の書類で,現在のお金にして7730万円以上もかかっている

 この日はシリーズ第4段の制作も発表された。次なる舞台は大正時代の浅草で,テーマは娯楽。日本で初めて電動エレベーターを導入した凌雲閣,初の常設映画館である電気館といった施設がある浅草を通し,人々の生活や娯楽を描く新たな世界を構築していくとのことだ。


 「ハイパー江戸博 日本橋繁昌記 江戸のお金編」はすでに配信中。対応機種はiOSとAndroidで,これまでと同様に料金はかからない。江戸のお金事情に興味がある人はプレイしてみよう。

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