2024年3月10日に10周年を迎えた『グランブルーファンタジー』(以下、『グラブル』)。多くの人に愛され続ける同作の魅力のひとつが、美麗なイラストの数々だ。そんなイラストを手掛ける『グラブル』イラストチームから、ラフ線画班、着彩班、背景班のメンバー合計4名にお話をうかがった。
イラスト制作のこだわりや制作の流れなど、どのようにして『グラブル』のイラストが作られているのか、ぜひ本インタビューでチェックしてほしい。
ラフ線画班リーダー
水属性SSレアのヨダルラーハや火属性SSレアのウィルナス(リミテッドバージョン)、光属性SSレアのル・オー(リミテッドバージョン)のキャラクターデザインを担当。
着彩班リーダー
土属性Sレアのヤイア、ニーアのキャラクター専用スキン“水辺で微笑みし濃艶なる恋人”、闇属性SSレアのユニ(クリスマスバージョン)などの着彩を担当。
着彩班スタッフ
アラナンのキャラクター専用スキン“教皇の漫歩日和”、マリア・テレサやハーゼリーラなどのEX POSE、土属性SSレアのガレヲン(上限解放前)の着彩を担当。
背景班リーダー
“グラブルフェス”に出店されたカフェミレニアの内装デザイン、シナリオイベント“元帝国軍人のおじさん(37歳)がサウナを通してととのいの世界をめぐる話”のサウナ室の背景デザインなどを担当。
情熱をもって『グラブル』らしく! 愛情たっぷりの制作現場
──まずは皆さんのチームのお仕事を教えてください。
ラフ線画班リーダー我々の作業としてはまず、プランナーからキャラクターの身長、年齢、種族、盛り込んでほしい要素などの発注内容がラフ線画班に届き、それをもって制作に進みます。この工程でオーケーをもらえたら着彩作業に移りますが、リテイクが来た場合は、ひとつ前の担当者の工程に戻ることもあります。部署の規模に関しては詳しいことは伏せますが、全体でおよそ二桁人数の部署です。
着彩班リーダー私たちはラフ線画班の方が仕上げてくれた絵を確認しながら、どういう形で進めていくのがいいのかを検討しつつ着彩をしていく部署です。着彩の段階で「やっぱりちょっとポーズを変えて……」となった場合、こちらで修正することもあります。部署の人数としては、ラフ線画班よりは少なめかもしれません。
背景班リーダー背景についてもキャラクター制作と同様に、ラフとクリーンアップのふたつの工程に分かれていますが、背景は線画と着彩を同時に進行する形になるので基本的には同じスタッフが担当していますね。部署の人数は着彩班よりももっと少ないです。
──それぞれのチームの中で“このキャラクターはこの人が得意だから割り振る”というような、チームメンバーの専門性を活かした分担作業もあるのでしょうか?
ラフ線画班リーダーうちのチームに関してはとくにありません。ただ、愛を注いで制作してくれそうな……、たとえば「このキャラクターが好きで好きでたまらないんです」と語っちゃうほど情熱に溢れている人には、そのキャラクターの作業をわたしたりもします。リーダーとしてはチーム全体の好みを把握しながら動く感じですね。
着彩班リーダー着彩班も似ていて、以前にそのキャラクターの着彩を担当した人が、引き続き作業を担当するようなケースはあります。なかには美形の男性キャラクターや渋いおじさんの作業が得意ということで、よく任せられている担当者もいます(笑)。
着彩班スタッフキャラクターの顔を見た瞬間に「あっ、これならあのメンバーに任せておけば安心だ!」と感じることはありますね! エルーン男性に強いこだわりがある人もいれば、ドラフ女性に強い思い入れがある人もいたり。
着彩班リーダー制作の途中経過をチーム全体が見られる状態で作業をすることもあるのですが、たとえばドラフ女性に熱量があるメンバーが「ドラフ女性はバランスをこうしたらもっと魅力的になります!」といった相談をしに来ることもあって。『グラブル』では種族についても細かい設定があるので、どこまでそういった意見を採用するのかというバランスはリーダーのほうで取っています。
背景班リーダー得意な人に割り振るという部分は、背景班も似ています。のんびりした雰囲気の背景だったらこの人が得意、エフェクトを効かせた抽象的な背景だったらあの人が得意というように、個性に応じて担当を決めることはあります。また、納期に余裕があるときは、その人が苦手そうな分野の背景をあえて割り振ることでスキルアップを図るケースもあります。
──ほかの班でも作業とスキルアップを兼ねた仕事の割り振りなどはあったりするのでしょうか?
着彩班スタッフラフ線画班の方に、着彩作業に参加してもらうことはありますよね。
ラフ線画班リーダーあります、あります!
着彩班スタッフスケジュールに余裕があるとき限定でやっていますね。
──そういうこともあるんですね! ちなみに皆さんが『グラブル』チームに合流されて作業をされていく中で、とくに印象深かったエピソードがあれば教えてください。
ラフ線画班リーダー私が合流してすぐ、ヨダルラーハの水属性・SSレアバージョンのデザインをさせてもらったのですが、当時は「本当にこれでいいのか」と悩みながら作業していました。最近は彼がさまざまな媒体で活躍するようになって、「ああ、あのときがんばってよかったなぁ」と感じています。
──とくにヨダルラーハの衣装でこだわったポイントは?
ラフ線画班リーダーヨダルラーハは“動けるおじいちゃん”というイメージがあったので、衣装に揺れ物をたくさん入れたいと思ってデザインを進めました。でも、男性なので布がシャラシャラとなっていたらファンシーになっちゃうと思い、カッコよく揺れる感じにどうにか落とし込もうとがんばったことを覚えています。
当時は正面しかデザインしなかったのですが、『グランブルーファンタジー リリンク』で3Dに落とし込まれた際に、背面まで作り込まれているのを見たときは感動しました。
──着彩班のおふたりはいかがですか?
着彩班リーダー私がいちばん情熱をぶつけることができたのは土属性のヤイア(Sレア)です。それまで自分はがんばって着彩をしても空振ってしまうことが多くて……。
そんななか、発注書に“妹キャラ”と入っているヤイアの着彩作業がきて、もともと趣味で女の子を描くことが多かった自分は、「いまこそ全力を発揮するときだ……!」という強い意志で臨みました。いろいろ悩むうちに『グラブル』の絵柄では見慣れない印象になってしまったときもあったのですが、ほかのグラフィッカーさんたちのフィードバックも取り入れつつ、最終的にいい仕上がりになったと自負しています。
それ以降もヤイアを担当する機会がありまして、クリスマスバージョンのヤイア・上限解放後の着彩なども担当させてもらっています。
──素晴らしいクオリティーです! これをきっかけに女の子キャラクターの着彩依頼が増えたりということは?
着彩班リーダーどうなんでしょう……。でも水着イラストのお仕事は増えた気がします!
着彩班スタッフそういうこともありますよね。私が思い出に残っているのは、バレンタインデーのチョコのお返し企画(※1)です。
もともと黒一色で返していたサイン色紙に色をつけようという話になって手探り状態でスタートしたのですが、そのときたくさんの物量をこなしたことですごく自信がつきましたし、SNSで“グラブル お返し”といったワードで検索して、ユーザーさんからのコメントを見てうれしい気持ちに浸ったことを覚えています。
※1:バレンタインデーのチョコのお返し企画……バレンタインデー&ホワイトデーの企画として毎年恒例となっている。サイゲームスの公式オンラインショップ“CyStore”からお気に入りのキャラクターにお菓子を送ることで、そのお返しとしてキャラクターからのお礼の手紙が届くというもの。
──バレンタインのお返し企画はキャラクターの人数が多いだけにたいへんですよね。
着彩班スタッフしかも、毎年平均50人ずつくらい新規のキャラクターが増えていきますし、幼少期などのバージョン違いもあるので。ちなみにバレンタインの企画に関しては、SNSなどで「さすがに外注しているのではないか」というお声を見かけたりもしますが、イラストはもちろん、文字もすべて社内で制作しています。今年も騎空士の皆様ひとりひとりを思いながら真心を込めて制作しているので、楽しみにしていただけるとうれしいです。
──『グラブル』チーム全体で協力されている企画だったのですね! 続いて背景班はいかがですか?
背景班リーダー『グラブル』チームに合流したばかりのころ、“グラブルフェス”でサンダルフォンのカフェ ミレニアの内装デザインを担当させていただいたことが印象に残っていますね。当時は未熟なところもあってチームの皆さんに助けてもらいながらデザインをしたのですが、“グラブルフェス”の会場でお客さんたちが楽しそうにドリンクを買う姿を見て感動しました。
着彩班リーダー“グラブルフェス”ってイラストチームから見ても、すごくいいイベントなんですよね……。現地で参加すると“生きている”って感じがします!
着彩班スタッフわかります!
背景班リーダー二次元で描かれていた絵が現実になっているのは、すごく感動しますよね。私はオフィシャルキャストさんを見かけるたびに「本人が来た!」と思ってしまって。
ラフ線画班リーダーうちの班としては、とくに六竜のオフィシャルキャストさんには衝撃を受けました。当時はオフィシャルキャストさんが登場すると思っていなくて、ものすごく難解な構造の衣装をデザインしてしまったのですが、見事に立体化されていて。感動とともに本当にすみませんという感じでした(苦笑)。
ふだん見られない角度からキャラクターを俯瞰できるので、お仕事の資料になると思ってオフィシャルキャストさんたちを無意識に撮影しちゃったりもしますね。「パーシヴァルの肩はこんな感じになっていたんだ……!」みたいな。
着彩班スタッフキャストさんがステージに立ったときに照明が当たるから、ライティングの参考にもなったりしますしね。
──“グラブルフェス”から逆輸入されるような要素もあるかもしれないと。
ラフ線画班リーダーそうですね。ちなみに衣装の設計に使われるキャラクターの三面図はイラストチームで作っていて、実際に人が着られることを目標に内部構造を組んだりしています。そんな感じで日々作業をしていたら、いつのまにか新たなオフィシャルキャストさんが登場していて、“グラブルフェス”にいるみたいなことにいつも驚かされます。
背景班リーダー背景に関しては、プランナーさんから欲しい背景を提案される場合もあれば、既存背景をもとに立体物が作られる場合もありますね。
ほかの背景がそうであるように、私が担当したカフェ ミレニアでも店内の装飾は登場するキャラクターに特徴を寄せた“らしさ”をにじませることを意識しています。たとえば、テーブルの模様や色合いはキャラクターの衣装をベースにアレンジしています。
ほかのチームの方も話していましたが、もともと立体化しづらいようなデザインの背景もあったりするので、“グラブルフェス”でそれをしっかりと形にしてもらっているのが本当にうれしいです!
──昨年末開催の“グラブルフェス2023”では新登場の“屋台ゐるなす”が大好評だったというイメージがありますが、いかがでしたか?
背景班リーダーあれは私も感動しました! 料理するときに立ち昇っている煙まで再現されていて本当にすごいです。ふだんは見られないような角度から背景を見ることにもなるので、画面外の描かれてないところも世界観の説得力を持たせるよう、しっかりデザインしなければいけないな……と思わされました。
時代の最先端も取り入れながら形作られるキャラクターや背景イラスト
──10年という歳月の中で、世間の絵の流行も変化してきたかと思います。各チームは流行の変化にはどのように対応されてきたのでしょうか?
ラフ線画班リーダー“今年はこういう方針でいきます”みたいなものを毎年打ち出しているわけではないのですが、ある一定の時期から大きく流れが変化したことはありました。
たとえば上限解放後のイラストは、当初は登場キャラクターとエフェクトだけだったものが、背景もつけて一枚絵として見せるようになった時期がありました。明確にそういった方針になったのは、2019年の風属性Sレアのミュオン最終上限解放イラストが最初だったと記憶しています。
──背景が足されたことでたいへんと感じることも?
ラフ線画班リーダー描くものが多くなったということはあるものの、あまりにもボリュームが大きいものは背景班のグラフィッカーさんに頼ったりしています。
背景班リーダー明らかに作業量は多くなりましたね(笑)。
着彩班スタッフでも、ちょっとずつギアが上がっていったから、いつのまにかそれがみんなのふつうになっていたような感覚です。
──『グラブル』全体の色彩も10年間で少しずつ変化している印象です。
着彩班リーダー鮮やかになったり、落ち着いたり、テクスチャ重視になったり、描き込み重視になったり、たびたび変化している気はします。
着彩班スタッフトレンドの推移みたいなのはありますよね。“あっさり”か“こってり”か、みたいな。
──背景については変化を感じる部分はありましたか?
背景班リーダー時代の流行に合わせて調整することは少ないですが、キャラクターに合わせて調整を行なっているため、間接的に変化を感じることはあります。たとえば、キャラクターの線画が薄めになった時期は背景も薄めの線に調整しました。
──キャラクターの変化に左右されるというのはおもしろいですね。
背景班リーダー全体的には歴史感や重さを重視しているんですけど、最近だとたとえばクピタンのようにカラフルなキャラクターも出てきているので、背景に乗ったときにはなるべく調和が取れるように気をつけています。
カラフルなキャラクターは、暗い背景だとどうしても浮いてしまうので、たとえば背景に彩度の高い小物を置いてつながりを出すことで違和感を軽減したりとか。
──なるほど。お話を伺っていて気になったのですが、それぞれのチームの作業のポリシーなどもあるのでしょうか?
着彩班リーダー難しいですね。“『グラブル』らしさ”から外れすぎず、重すぎず、軽すぎず、ユーザーからわかりやすいように。そういうところはつねに確認していますが……。
着彩班スタッフあとは日々模索し続けることですかね。“『グラブル』らしさ”というのは残しつつ、世間の流行りに取り残されないような塩梅でいろいろと試していきたいです。“こうしなければダメ”という決まりはないですし、そこが『グラブル』の強みだとも思うので。
着彩班リーダー確かに! 細かいマイナーチェンジがほとんどですけど、日々アンテナを張っていろいろアイデアを取り入れながらついていっている感じです。
着彩班スタッフラフ線画班も日々新しいポーズを出してくれるので、それに負けないように着彩班もこれまで使ってこなかった色を使ってみたりとかもしています。
“こうしなければダメ”という決まりはないですし、それが強みだとも思うので、何かに囚われすぎずに、つねに目で見て楽しいと思えるような仕上げを目指していくのが目標ですかね。
──自由度が高いからこそ提案ができると。そうなってくると“『グラブル』らしさ”を保つのもまた難しそうな?
着彩班スタッフそこはひとりで完結せずに、何人かでチェックし合うことで担保しています。“『グラブル』らしさ”に合うのかはわかりませんが、マントが遠くになびいているときに奥のほうの色味が薄くなったりするのは“らしさ”に入るんですかね? あとは逆光の反射光とか。
着彩班リーダーちなみにコラボ作品の着彩をするときは、まずは原作にテイストを合わせてからハッチング(※2)や、先ほど話題に出た表現などを用い、温かみのあるアナログ感をどう落とし込めば原作ファンの方にも喜んでいただけるかを考えています。キャラクターの魅力を引き出しつつ“『グラブル』らしさ”にこだわりすぎないように……と駆け引きがあったりします。
※2:ハッチング……美術の技法で、一定の面を平行な線で埋める技法。『グラブル』のイラストでよく見られる線による陰影などがこれに当たる。
着彩班スタッフイメージを統一するという点では、別のグラフィッカーさんが担当していたキャラクターの別バージョンを着彩するときは、なるべくその着彩を研究して統一感が損なわれないようには気をつけています。逆にラフ線画班の皆さんは、ポーズに既視感が出ないように考えないといけないのがたいへんそう……。
ラフ線画班リーダーそうですね。いろいろな人から意見をもらうというのがラフ線画班では重要だと考えていて、たとえばラフが上がってきた際に監修者をふたり付けることで、そのうちひとりが「このポーズ見たことある!」と指摘してくれたり。
これだけ長く続いていると、ポーズが被る可能性も高くなってしまうと思いますが、チーム内でコミュニケーションを図ることで未然に防いでいます!
あと、『グラブル』はストーリーもユーザーの皆さんから愛されているポイントですし、ストーリーをしっかり読み込むとキャラクター特有の構図やイラストが思い浮かんでくるんです。そこはチーム全体で心がけていますね。
──どのポーズがいいか、メンバーどうしで意見が分かれることはないのでしょうか?
ラフ線画班リーダー男性キャラクターで水着バージョンの上限解放後のラフの候補が複数挙がっているときに、「どれがいちばんキュンと来るか?」というアンケートが回ってくるようなケースがあります。
着彩班スタッフ確か、水着バージョンのユーステスはそれでポーズを決めましたね!
──犬と添い寝しているイラストですね。あれは確かに男性でもキュンと来ます……。
ラフ線画班リーダーそういった感想をいただけるのはありがたいです。SNSで皆さんの感想を見るのもうれしいので! 皆さんに求められているものを提供できるようには心がけていますし、そのためにもつねにアンテナを張っています。
──構図についての話に戻りますが、背景に関しても同じような構図が続かないように工夫されているのでしょうか?
背景班リーダー10年で1000枚以上の背景が描かれてきましたが、パッと見で同じ印象にならないようにチーム一丸となって制作しています。先ほど、背景に流行りは影響しないというお話をしましたが、つねに新しいものをインプットしておいて違う構図を生み出せるようにすることが大事なポイントかなと思います。
──なるほど。
背景班リーダーあと、『グラブル』は空を旅する物語なので、背景から壮大で気持ちいい空気感を感じ取ってもらえるようにするのがチームのポリシーです。具体的にどこまで続いているのかわからない、けれどもカッコいい空が当たり前のように目の前にある雰囲気を大事にしたいなと。
ほかにも“バブ・イールの塔”のようにおどろおどろしい背景も出てきます。その場合は、現実以上のインパクトとカッコよさを与えることをとくに意識していますね。
ビカラのデザインはいままでにない難産だった
──十賢者や十天衆などテーマ性を持った大人数のキャラクターの追加は、ユーザーにとってはとても魅力的な要素です。イラストチームとして、こういった追加の作業はたいへんなのではないでしょうか?
着彩班スタッフここにいるスタッフは全員『グラブル』チームに合流したタイミングではすでに十天衆が出揃っていたのですが、当時を知るスタッフによると、一時期、CyDesignationから新しいキャラクターデザインがたくさん上がってきたことがあったそうで。
このデザインはなんのキャラクターだろうと確認したところ、それがいまの“十天衆”でした。十賢者のときは「十天衆と同じように10人が登場する新しいコンテンツをやります」という話で始まったようです。
ラフ線画班リーダーチームが大所帯なので、急に大きな負担が……という感じで困るようなことはなかった記憶があります。それどころか、最初はまとまった企画として聞いていなかったので、気が付いたら“十賢者”という単語ができていて。
なので、うちのチームとしては、10人の関係性を考えるというよりも担当者がひたすら魅せたい要素を出す形で作業をしていましたね。もう、フェチを詰め込めるだけ詰め込んでください、と(笑)。
──そんなにですか(笑)。
ラフ線画班リーダー「少年系のキャラクターだったらストリート服を着せたいでしょ」という願望が詰まったのがカイムですし、「恍惚な表情を浮かべさせたい」という想いが詰まったのがロベリア。ニーアだったら「黒い涙を流させたいよね」という感じで。
グラフィックチームでは流行を求めるキャッチーさを大切にしていますが、それとは別に特定のユーザーさんに刺さる要素を入れることも大切にしています。
着彩班スタッフ狙った層だけではなくて、予想以上に反響が大きくなることもありますよね。自分が着彩を担当したキャラクターだと、アラナンの浴衣スキンの評判が思ったよりもよくて、「マイページに設定して、このスキンを買ってよかった!」というユーザーさんの声がうれしかったのを覚えています。
──でも、『グラブル』はイケてるおじさんやおじいちゃんが多い気もします。
着彩班スタッフ性別年齢問わず、どんなキャラクターも素敵に見せてくれるのが『グラブル』のいいところですね。女性キャラクターだと、ニーアの水着スキンもSNSで評判がよくて。
ラフ線画班リーダー予想以上の人気といえば、十二神将のビカラもそうでした。
着彩班スタッフ人気になりましたよね! 難産だった思い出があります。
ラフ線画班リーダーデザインが決まるまでに3~4ヵ月はかかりましたよね。
──ほかのキャラクターでもデザイン決定までにそれくらいかかることがあるんですか?
ラフ線画班リーダー十二神将は基本的にイラストチーム内でコンペを行なってデザインを決めているので、例年悩むことが多いのですが、それにしてもビカラは異例でしたね……。コンペの第一回では、干支がネズミということからハーヴィン族で出す人が多かった気がします。
着彩班リーダー自分もハーヴィンで出しました。
着彩班スタッフそうなりますよね。
──でも、蓋を開けてみたらヒューマンだったというのもおもしろいですよね。髪色や髪形についてはどれくらい候補があったんですか?
着彩班スタッフ30~40候補ぐらいはあったと思います。七色はもちろん黒色や白色もとりあえず全部試してどれがいいか選ぶみたいな形でした。
ラフ線画班リーダーとにかくみんなでずっと案を揉んでいた気がします。見た目にもいろいろ意見を出しましたけど、公開されたら性格のほうもなかなか意外性のある感じになっていて。「ぼくビッキィ!」というセリフにもびっくりしました。
──騎空士のあいだでもざわついていた気がします(笑)。今年の干支のハイラのデザインが決まるまでの過程についても教えてください。
ラフ線画班リーダー竜といえば角、角といえばドラフというイメージで、コンペに出している人が多かった気はしますね。
着彩班スタッフ今回はすんなり決まった印象がありました。
着彩班リーダー十二神将全体の種族のバランスを見るとハーヴィンが少ないので、ハイラはハーヴィンじゃないかという意見や、小さめのドラフが来るのではという予想もありました。
──私も無類のハーヴィン好きなので、巳年の来年はぜひお願いします。
ラフ線画班リーダーあっ、確かにヘビとハーヴィンは相性がよさそうですね。今年のコンペ、がんばります!(笑)
ユーザーからの反響がなによりのモチベーションに
──最近のデザインでとくに印象に残っている仕事も教えてください。
ラフ線画班リーダー私個人でいうと、六竜のウィルナスとル・オーのヒト型のデザインを担当したことですかね。いつのまにかグッズ化されていたり、オフィシャルキャストが追加されていたり。あとはユーザーさんのファンアートがいっぱいSNSにアップされていたりして、みんなから愛されているなと感じました。
ウィルナスとル・オーは専用スキンもすごく評判ですが、デザインの段階ではストーリーが完成していなかったので、まさかウィルナスがふんどしを締めるようなキャラクターになるとは思っていなかったので、新鮮な驚きでいっぱいです(笑)。
着彩班リーダー私はクリスマスバージョンのユニの着彩ですね。ラフをもらったときに上限解放後イラストの下部にユニの顔のアップが入っていたのですが、これはアニメのワンカットみたいな色味が合うだろうなと思ったんです。
それでいろいろなアニメの夜間のシーンをたくさんチェックして……。クリスマスバージョンのエウロペがアニメチックな描かれかたをしているので、それも参考にしつつ試行錯誤して仕上げました。
着彩班スタッフクリスマスバージョンのキャラクターって、シチュエーションは暗い場面だけれど、画面は明るいみたいなイメージが多いですよね。
着彩班リーダーそう! 暗すぎても見えづらいし、明るすぎても雰囲気がなくなってしまって難しいのですが、アニメではそこをうまく処理しているイメージがあったんです。
残念なことに、ゲームのマイページ画面ではユニのアップの部分は見切れてしまうのですが、フェイトエピソードの会話シーンなどでアップの部分が使用されていたり、他チームの方々がうまくゲームに取り込んでくれてうれしかったですね。
着彩班スタッフ個人としては、一昨年あたりからマリア・テレサやカイム、ハーゼリーラ、エスタリオラなど、十賢者のEX POSEを担当させていただくことが多くありました。
十賢者は生い立ちが壮絶なキャラクターばかりなのですが、上がってきたラフが楽しそうなシーンのものばかりだったので、この瞬間だけは幸せな感じでいてほしいなと思って着彩作業をしました。塗る場所が多くてやり応えがありましたね。
背景班リーダー私が最近デザインした仕事ですと、デリフォードが主役のシナリオイベントに登場したサウナ室の背景ですね。私自身、まったくサウナ文化に詳しくない人間だったので、描くときに資料を取り寄せたりして、サウナにもいろいろな種類があることをこれで知ることができました。石造りの部屋の中にヴィヒタ(白樺の葉を束ねたもの)を持ち込んだりすることもあるんだな、とか。
そこで興味を持って、気がついたら私自身もサウナ文化にすっかりハマっていました(笑)。サウナのイベントは毎回楽しいです。
ラフ線画班リーダーまさかサウナイベントに続編が出るとは!
着彩班スタッフ入浴シーンがあるイベントのたびに、いろいろなキャラクターのタオル差分の発注がドドッと届くんですよね(笑)。タオル姿のときはキャラクターごとの筋肉のつきかたに差をつけることを考えています。
ラフ線画班リーダー筋肉のつきかたの描き分けなども注目するとおもしろいですよね。たとえば『三羽烏漢唄』のマッチョ三人組(ソリッズ、オイゲン、ジン)もそれぞれ筋肉の付きかたや体格に違いがあるので、ぜひチェックしてみてほしいです。
――今後はキャラクターの筋肉にも注目してみます(笑)。日々、多くのイラストを担当されている皆さんですが、お仕事のモチベーション維持の方法を教えてください。
ラフ線画班リーダー月並みになってしまいますけど、やっぱりユーザーの皆さまからのコメントを見る瞬間ですね。かなり前に自分がデザインを担当したキャラクターのファンアートをずっとWebにあげ続けてくださっているユーザーさんもいたりして……。本当にありがたいです。
着彩班リーダーやっぱりそこになっちゃいますよね。みんなに『グラブル』の世界やキャラクターが愛されているんだなって思うと、ほっこりしながら描けます。
着彩班スタッフSNSでの新キャラ登場告知にいただくリプライや引用リポストを眺めて、ユーザーさんが喜んでくれているとすごくうれしくなるんですよね。
基本的に『グラブル』のイラスト制作はラフ、線画、着彩と分担作業なのですが、季節のお祝いイラストや特典のアートブック、フェスの寄せ書きなど、たまに1枚のイラストをひとりで全部仕上げる機会があるんです。そういう場合はいつも以上に反応が気になって、ついユーザーさんからの評判を見にいってしまいますね。
これに限らずですが、ユーザーさんが喜んでくださる生の声がいちばん活力をもらえます!
着彩班リーダー自分も同じですね!
背景班リーダー私も同じです。あとは、たとえば背景にちょっとした小ネタを仕込んだときにユーザーさんがそれに気づいてくれると、イラストを通してコミュニケーションが取れたように感じられてすごくうれしいんです。
最近だと、シナリオイベント“拝啓、大切な君へ。”では現代を舞台にしているのですが、じつは遊び心で目立たないようにビィくんを背景に紛れ込ませていて……。
ラフ線画班リーダー電柱にもビィくんを描いていませんでしたっけ?
背景班リーダーそれはチームのメンバーが描いたビィくんですね(笑)。ほかのイベント背景ではあまりないですが、このときはいろいろなところに“隠れビィくん”を紛れ込ませてみたりしていました。
ラフ線画班リーダーそれに近いところで言うと、じつはそれぞれのキャラクターの小物や装備品にもこっそりいろいろな要素を潜ませているんです。
たとえば水着バージョンのバザラガのそばに、水着バージョンのゼタのサングラスやお花の飾りを置いて、婉曲的にふたりのバディ感を示唆していたり。そういうイラストチームの小ネタにも注目してもらえるとうれしいです。
着彩班リーダーそうですね! 着彩班も、これからもイラストにたくさんの愛情を込めてお返しできればと思っています。
着彩班スタッフ着彩というところで言うと、武器の着彩と、キャラクターの表情差分もおもに着彩班が担当しているんです。
とくに表情差分は、発注書に書かれたイメージとキャラクターのセリフをもとにして「このキャラクターはこの状況でどんな顔をするかな」と考えながら表情を作っているので、そちらもぜひ見てほしいです!
背景班リーダー背景は担当者が一枚一枚、想いを込めて制作しています。喜びとか哀しみとか懐かしさとか……、そういった一枚一枚に乗せた感情が皆さんにも伝わっていたらうれしいです。そして、『グラブル』をより楽しんでもらえたらさらにうれしいです。
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